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自衛隊ニュース   985号 (2018年8月15日発行)
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体験飛行抽選会
初登場のC-2は当選倍率11倍!
<航空自衛隊>
 8月2日、防衛省A棟19階AB会議室において10月2日に開催される「平成30年度自衛隊記念日記念行事における体験飛行」の抽選会が厳正かつ公正に実施された。
 今年度は、三沢・芦屋・那覇の各基地で輸送機CH-47Jに120名、入間基地は2機種でCH-47Jに180名、輸送機C-2に200名が搭乗する。
 抽選方法は、まず1から順番に番号が振られ希望機種ごとに無作為に束ねられた応募はがきの束と、その束数に応じて同様に番号が振られたピンポン玉を準備。空幕総務部長・荒木哲哉空将補と空幕広報室長・渡部琢也1空佐が、基地ごとの抽選箱からピンポン玉を抽出して当選者を決定した。
 約1ヶ月の公募期間で、全体で1826通3653名の応募があった。前年度より搭乗定員が大幅に増えたため(480名→740名)当選倍率は4・94倍と比較的当選しやすくなったものの、当体験飛行では初登場のC-2(入間)は人気が高く、1124通2199名の応募があり当選倍率11・0倍の狭き門となった。
 当落通知は返信はがきの裏面に印刷し、応募者全員に返送される。

航空自衛隊の情報通信の将来像に関する官民勉強会成果発表会
<航空自衛隊航空システム通信隊>
 7月30日、航空自衛隊航空システム通信隊(隊司令・三島信彦1空佐=市ヶ谷)は「航空自衛隊の情報通信の将来像に関する官民勉強会成果発表会」を開催した。当発表会は、通信電子等職域の若手幹部自衛官の能力の進展を図ることを目的に、次世代の通信技術等に関し民間企業の若手技術者と共に、今年の5月中旬から定期的に勉強会を実施した成果を発表するもので、平成32年5月に迎える創設20周年のプレイベントとして実施された。
 本発表会では、3個班に分かれ、A班「安全・安心・効率・公平で豊かな自衛隊の次世代情報通信技術の運用」、B班「情報通信技術を活用した行政文書の管理等の改善」、C班「空自におけるサイバー防護業務のAI適用に関する一考察」をテーマとし、2ヶ月半にわたり取り組んできた成果を発表した。三島1空佐は、発表会の講評において、急速に変化する通信電子技術を活用する自由な発想及び民間企業との連携強化の重要性を説いた。
 本勉強会及び発表会は、航空システム通信隊として初の開催であり、民間企業をはじめ、航空システム通信隊の隊員など約80名が聴講し、発表内容に熱心に耳を傾けていた。民間企業の参加者からも、人材育成及び自衛隊との交流の観点から有意義な勉強会となったとの話があった。
 航空システム通信隊は、平成32年5月に向けて様々な活動を実施し創立20周年を迎えたいとしている。

目黒基地で「サマーキャンパスコンサート」
<航空自衛隊幹部学校>
 航空自衛隊幹部学校(学校長・長島純空将=目黒)は7月20日、目黒基地において、航空中央音楽隊による「サマーキャンパスコンサート」を実施した。
 コンサートは、幹部学校を初め目黒地区に所在する各機関(統合幕僚学校、陸自教育訓練研究本部、海自幹部学校等)の職員を対象としたもので約300名が来場し、航空中央音楽隊員7名による歌とアンサンブル演奏が行われた。
 前半は航空自衛隊の音楽隊で初となる女性ボーカリストの森田1空士をメインとして、トロンボーンも兼ねる西村空士長が加わり「Everything」など4曲を伸びやかで透明感のある声で歌い上げた。後半のアンサンブル演奏では金管五重奏による「宝島」など3曲を披露、リズム感のある演奏で会場を盛り上げた。
 当日は、気温34度の猛暑となったが、音楽隊の素晴らしい演奏を聴いた来場者はひと時、夏の暑さを忘れていたようであった。
 航空自衛隊幹部学校では、今後もコンサート等のイベントを通じて、職員相互の融和団結を推進し、学校に対する帰属意識の高揚を図ってゆく所存である。

ライフプランに関する部外講話
<航空支援集団・飛行点検隊>
 入間基地に所在する航空支援集団・飛行点検隊は、このほど入間イン第5会議室において部外講師による講話を実施した。
 テーマは、「国防の前線で働く自衛官の日常と将来知識のために」。2名の講師がライフプランに関する知識(法律)等についてわかりやすい講話を行った。当日は2部講成で、第1部は株式会社トラスパートナーズ代表取締役でコンサルタントの長谷川吉英氏が「お金の徳と損のお話」について解説。第2部は弁護士法人権藤・黒田・岸野法律事務所の弁護士権藤健一氏が「生きていく為に知らなければならない今の時代だから必要になる法律知識」について解説した。
 参加した飛行点検隊の隊員、入間基地所在部隊の隊員は、時にユーモアも交えた内容に聞き入っていた。ライフプランに関する知識が不足しがちな自衛官にとって、日常生活におけるお金の知識や法律について考えさせられる良い機会となった。

読史随感
<第11回>
二宮尊徳の天道と人道
神田 淳
 二宮尊徳(金次郎)(1787-1856)は江戸後期の農政家。荒廃する農村の再建救済事業に生涯をささげた。
 尊徳は36歳の時、小田原藩主大久保忠真の命を受け、大久保家の分家宇津家の所有する、荒廃はなはだしい下野国桜町領の復興事業に着手した。尊徳は、荒廃した土地の復旧、勧農、出精者の表彰などの「仕法」を進めたが、最初はうまくいかなかった。しかし、桜町の農民は次第に尊徳の仕法およびその精神をよく理解し、心から支持するようになった。
 10年後桜町領の収穫は3千俵(仕法開始前は960俵)を超え、145軒の農家は190軒に増え、荒地が開発されて用水や道路も一変し、農家収益が上がり、人心が改まって人情美しい村に変わった。
 桜町領の復興は世に広く知られた。窮迫した関東東北の諸藩が、尊徳に荒廃した農村の立て直しを依頼するようになり、尊徳は、下野国烏山藩、常陸国矢田部藩、同下館藩、陸奥国相馬藩の農村復興事業に直接、間接にかかわるようになった。
 尊徳は56歳のとき幕臣に登用された。67歳のとき日光奉行所手附となり、日光神領荒地開拓事業に取り組んだが、病を得て、70歳で没した。
 尊徳は、江戸期の日本の生んだ偉大な実践思想家である。その思想は「勤倹力行」にとどまらない。積小為大、分度、推譲、報徳、天道人道論に尊徳の思想の特色がある。
 積小為大とは、大をなそうとするなら、小さいことから始めて積み上げるしかない、ということであり、分度を守るとは、収入の範囲内で生活することである。推譲とは、分度内で生活してできた余剰を、将来に譲り、また人に譲ることである。
 報徳(徳に報いること)は尊徳の思想の帰結である。徳とはめぐみであり、恩である。人は、父母の恩、社会の恩、田畑山林の恩(祖先の恩と自然のめぐみ)に対して報いなければならないと説く。
 そして天道と人道について、尊徳は、天道は自然の行われる道であるが、人道は人為(作為)によってなされるもので、両者は別だと言う。
 東洋思想では、天道(自然の道)は絶対であって、人間社会の人道はそれに従うべきものとされる。つまり、天道と人道は一つである。しかし、尊徳は言う。田畑を作って生産し、住居を作って風雨をしのぎ、衣服を作って寒暑を防ぐのは人道であるが、手入れを怠って自然に放置すれば、すべて荒廃していく。ゆえに人はモノを作り、維持し、手入れをし、さらに教えを立て、礼法を定めるのだ。人道は怠らず努めることを尊び、自然に任せる天道とは異なる。
 尊徳の天道人道論は、近代物理学の「エントロピー増大の法則」でよく理解できる。この物理法則によると、自然は放置すると、必ずエントロピーの増大する方向、すなわち、無秩序化の方向に進み、系内の秩序を形成するには、エネルギーを投入しなければならない。尊徳の人道は、放置すれば無秩序化する自然に対して、秩序を形成する人間のエネルギーの投入に他ならない。
 人道は天道と別だと言った尊徳は、東洋におけるすばらしい独創的な思想家だと思う。
(2018年8月7日)
  
神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』など。

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