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スペーサー
自衛隊ニュース   1094号 (2023年3月1日発行)
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雪月花
 ことしは全国統一地方選挙の当たり年になる。県会議員や市町村長、市町村議員立候補予定者はすでに体制を整えているようだ。だが、共同通信が全国の地方議会議長に行ったアンケートで63%の市町村から議員のなり手不足を感じるとの回答があったという。2018年の前回調査に比べ11%増えている。地方議員が敬遠される一因として報酬の水準の低さが言われる。町村議員の報酬は全国平均月額21万円で市町村職員の平均月給30万円を下回る、さらに兼業制限が厳しいことで敬遠されているのではないかとも見られている。東日本大震災、熊本地震や30年以内に必ず起きると言われる南海トラフ大地震など危機管理面で自衛隊への依存が高くなっている今この時に、危機管理に詳しい自衛隊OBが地方議会に居たら市民は心強く感じるはずだ。現に高知県中土佐町で2期目を迎えたOB議員は議会からも町民からも期待されている。このような地方議員で集まった「武(もののふ)の会」には約160人が名前を連ねている。メンバーの方たちはやはりその地域で存在感を見せており自衛隊からも何かにつけ頼りにされている。立候補者が出ずに無投票になったり議員の定数を欠くことは民主主義の基本である選挙が無くなることになる。定年退職者や満期退職した自衛官OBは経済的には兼業しなくても議員報酬だけで十分ではないだろうか。議席に隙間の見えてきた今、故郷に帰り議員として地元に貢献すると同時に自衛官募集や広報などを応援する絶好のチャンスに見えてくる。半世紀も前のことだが防衛庁では自衛官は退職したら出身地に帰り隊で会得したものを役立たせたり自衛隊への認識を高めよう、とする帰郷運動を模索したことがあった。いつの間にか立ち消えになったが今このことを思い出した。

ASEANへの能力構築支援
HA/DR分野で

災害対処の知見を共有

 2月14日から16日、陸上自衛隊はホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)等で、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国および同事務局に対してHA/DR(人道支援・災害救援)分野における能力構築支援を行った。机上訓練や意見交換を通じて、参加者の災害対処能力を向上させ、地域的な課題への自律的かつ主体的な取組の推進に繋げることが目的だ。
 参加者はミャンマーを除く9カ国から大佐・中佐級が各2名、事務局から1名が参加、日本からは陸上総隊司令部と隷下部隊の国際活動教育隊から各1名が参加した。HA/DR分野では2016年を皮切りに5回開催しており、今回がこれまでの総括的な意味合いを持つ訓練となった。
 舞台はスーパー台風で甚大な被害を受けた東南アジアの島国A国を想定し、被災国であるA国の統合任務部隊(JTF)と、ASEANや域外諸国および国際非政府組織等からなる多国間調整所(MNCC)の運用や管理について議論を深めた。
 報道公開された15日は、発災10日目におけるMNCCの役割等について3グループに分かれて討議され、最後にそれぞれ発表の時間が設けられた。
 フィリピン国軍司令部のトレヌエヴァ大佐は「このような機会は協力関係の構築や相乗効果をもたらす。今後も経験の共有をしたい」等と述べた。また日本同様に自然災害が多く比較的対処能力を保持している点について「私たちの経験からASEANの中でもリーダー的な役割を果たせるのではないか」とも語った。
 2012年から始まった自衛隊独自の事業「能力構築支援」。16か国1機関、約6000名に対して実施されてきた。2月のトルコ・シリア地震では、以前陸自の能力構築支援を受けたフィリピンの隊員が派遣されている。またHA/DRのために提供された機材も現地で使用されているようだ。


インド太平洋海軍大学セミナー

議論を通じて相互理解深める

 海上自衛隊は2月20日から22日まで、幹部学校(学校長・江川宏海将=目黒)で「第26回インド太平洋海軍大学セミナー」を開催した。西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)での知識やノウハウを発展させるため、海自幹部学校で1998年から毎年開催されているもので、対面方式では3年ぶり、過去最多の19カ国が参加した(第1回は米・露・豪・韓の4カ国。共に日本含まず)。海自では、多国間訓練があってもその性質上人的交流は多くはないという。このように一堂に介し、懸念解決のための意見交換を通じて、意思疎通を図り信頼関係を構築することは貴重な機会だという。
 今回の研究テーマは「不確実性を増す海洋への挑戦」。気候変動やコロナ、地域紛争等による不安定な安全保障環境のなか、いかに海上交通路の安全を確保するか等、各国海軍クラスの教官や研究者、政策立案を行う海軍軍人が共通する課題解決の方策を探った。
 20日の開会式では、江川学校長が本セミナーの意義を「皆さんが活発に議論し、相互尊敬の下で相互理解を促進することが重要」等と述べ、「3つの成果を期待します。第1に『対話を通じ皆が互いに学び合えること』。第2に『その学びのプロセスによって、より良い協力ができること』。第3に『協力することが最終的に地域の安全保障に役立つこと』です」と呼びかけた。続いて国際地政学研究所の奥山真司上席研究員が「Grand Strategy and The Role of Sea Power」という題目で基調講演を行った。
 セミナーの結果は後日、幹部学校のホームページ等で公表される予定。


第396施設中隊冬季訓練検閲
<14施設群>

強い風雪の中、スキーで前進

 第14施設群(群長・河端純一1陸佐=上富良野)は、2月4日から6日までの間、然別演習場において令和4年度第396施設中隊訓練検閲を実施した。本訓練検閲は「攻撃支援に任ずる施設中隊の行動」を課目として行われ、統裁官の河端群長は「挑戦と検証の場として本検閲を活用せよ」「積み上げてきた練成訓練の成果を遺憾なく発揮せよ」「冬季衛生の徹底」の3点を要望した。
 4日、上富良野駐屯地において、中隊長吉川1尉は戦闘準備状況を確認するため、火力誘導、救急法、火器の取り扱い等、10項目の練度を点検し準備に万全を期した。5日、然別演習場において起伏が激しい約9キロに及ぶ経路を20キロ以上の装備を携行し、スキーにより前進して全員が完歩した。そして集結地に進入して同地域を占領した。
 6日、敵警戒部隊を駆逐するため、経路の解明及び障害処理を実施し、中隊の能力を最大限発揮して全ての任務を完遂した。
 今季初めてのスキーを経験した神奈川県出身の坂本猛1士(優秀隊員に選出)は「スキー機動がとても疲れました。この経験を今後に活かしていきます」と感想を述べた。
 約9キロに及ぶスキー機動と障害処理において中隊に同行し、その全てを現地指導した群長は、「風が強く厳しい寒さの中だったが、みんなの一生懸命な姿に感動した。短い期間であったが、たいへん有意義な訓練検閲であった。今後は強みを伸ばすだけでなく、団結し助け合って弱点を補い、さらなる精強化に向け、着実な前進をしてほしい」と隊員の労をねぎらい、激励した。


第3次師団訓練検閲<7師団>
積雪寒冷の厳しい環境の中、練度を確認
 第7師団(師団長・中村裕亮陸将=東千歳)は、1月25日から30日までの間、北海道大演習場における積雪寒冷の厳しい環境の中、令和4年度第3次師団訓練検閲を実施して、第11普通科連隊(連隊長・二宮1佐)、第7通信大隊(大隊長・川谷2佐)、第7音楽隊(隊長・平林1尉)の練度を評価した。
 第11普通科連隊は、師団の先遣連隊として、主動的な戦闘指導の下、厳しい気象条件を克服しつつ、対空援護及び砲迫火力に支援された、89式装甲戦闘車等による乗車攻撃、スキー機動による下車攻撃を繰り返し、敵警戒部隊を迅速に撃破して任務を完遂した。
 第7通信大隊は、師団のシステム通信を維持・運営するため、敵の航空攻撃や遊撃部隊の攻撃、通信妨害及びサイバー攻撃等による障害に的確に対応し、任務を完遂した。
 第7音楽隊は、師団指揮所の警備にあたり、冬季の特性を踏まえた偽装や常に敵を意識した警戒要領について各隊員に徹底するとともに、積雪寒冷下において野外演奏を行うなど、各種任務を完遂した。
 また、各部隊から無作為に抽出した隊員に対して小火器射撃を実施したが、訓練検閲終了後の疲労困ぱいした中でも安全確実な動作による正確な射撃ができることを確認した。
 今後も第7師団は、新領域を含む最新の戦闘様相の中で戦闘力の組織化を図り、あらゆる任務を完遂できるよう、引き続き実戦的・実際的な訓練を通して、陸上自衛隊唯一の機甲師団として進化を続けていく。

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