ゲッキー)
今日は、最近自衛隊とも交流の深い、オーストラリアについて聞きたいと思います。副大臣はオーストラリアに行ったことはありますか?
宇都)
コロナ前の2017年8月に、参議院議員として約1週間の期間、オーストラリア政府の主催する「議員交流研修プログラム」に参加しました。とても思い出に残っています。
ゲッキー)
オーストラリアの第一印象は、どんな国でしたか?
宇都)
第一に、オーストラリアは連邦国家であるという点です。連邦国家というのは、歴史的に州の誕生から成り立っていますから、連邦政府よりも州の権限がとても強いのです。日本でも道州制の議論が長らくありますが、「国の権限を地方に移管する」という考え方とは逆で、基本的に地方(州)で物事を決めていく自主性がとても強いのです。ですから国防に関しても(連邦政府の所掌ですが)、基本的に「自らの国は自らで守る」という意識が国民に浸透しているんですね。
ゲッキー)
日本と、国の制度が大きく異なる点は他にありますか?
宇都)
選挙制度がとてもユニークでした。特に国政は完全に「政党政治」で、人を選ぶのではなく党を選ぶというのが徹底しています。実は選挙において「候補者の名前を書く」形式の記名投票をしている国は先進諸国では日本くらいで、多くの国はマークシート等でのレ点記入式投票なんですよ。また、選挙に行かないと処罰される(罰金刑)というのも、民主主義をいかに大切にしているかという点で驚きでした。
ゲッキー)
防衛関係で、参考になる点はありましたか?
宇都)
首都キャンベラにある「オーストラリア戦争記念館(戦没者追悼碑)」はとても参考になりました。国立の軍事博物館なのですが、3つの目的を兼ねて運営されています。(1)戦死者(兵士)への慰霊顕彰、(2)国民に対する国防意識の啓発と歴史的価値のある戦争遺品の保存、(3)国防関連に対する知識の蓄積と研究です。日本にはこのような国が運営し、国防を総合的に啓発・研究する機関や施設がありません。私達が見学している最中にも、子供達が学校の授業の一環で見学に来ていたり、ご遺族が花束を持って、国家に立派に祀られている故人に会いに来ていたりする光景は、国家としてあるべき姿だと思いました。また更に感動したのは、この施設は大統領執務室に向かい合うように建てられていて、戦争遂行の決定権を持つ歴代の大統領は、この戦没者追悼碑を見て判断が間違っていないかを最終確認する意図が込められているのだそうです。
ゲッキー)
とても良い話ですね。自衛官の殉職者も、約2000柱を超えて市ヶ谷の敷地内に顕彰されていますが、一般の国民が普通にお参りできるような施設になればいいと思います。次に、オーストラリア軍について教えてください。
宇都)
オーストラリアは、総人口約2千500万人に対して、約5万8千人の陸海空軍を所有しています。(陸海空軍比=2‥1‥1)これは人口比で言うと、0・23%に当たります。軍の人数自体は自衛隊の約1/4と小規模ですが、米軍が人口比0・47%、自衛隊は0・19%と言うのを考えると、比較的国防に力を入れている国とも捉えることができます。自衛隊とオーストラリア軍との友好的関係は古く、これまでもさまざまな共同訓練等を行ってきましたが、近年は他国も加えた訓練・演習等が盛んに行われ、今年5月には、海上自衛隊により日米豪仏の共同訓練「ARC21」が行われています。日本と同じく太平洋に位置する島国・海洋国家ですから、色々な意味で協力できることが多いんですね。今後益々、連携を深めていきたい戦略的なパートナーです。
宇都隆史(自由民主党参議院議員、現外務副大臣、元航空自衛官)
昭和49年生まれ、鹿児島県出身。平成10年に防衛大学校卒業(第42期)、航空自衛隊入隊。平成19年に政治の道を志して退官。平成22年自民党比例区で参議院議員に初当選。 |