「自衛隊の中の警察」と言われる「警務隊」。警務隊に所属する警務官および警務官補は、刑事訴訟法で規定された「特別司法警察職員」であり、警察官ではないが、警察と同等の権限を与えられたスペシャリストだ。自衛隊内で起きた犯罪に対して、捜査・検挙を行える唯一の部隊。陸上自衛隊の秩序・規律の維持を保つために被疑者の取調べ、鑑識活動、逮捕術等の専門知識や技能を高める練成を日々行っている。そのうちのひとつ「鑑識活動」の技量を5個方面警務隊の代表者(1チームは選手5名と補欠1名で構成)で競う「令和2年度警務隊鑑識競技会」が、12月16日と17日に防衛省市ヶ谷体育館で6年ぶりに行われた。
競技は、とある部隊長室で迷彩服姿の不審者の逃走が目撃された直後に、システム防護隊からその部隊長のノートパソコンよりマルウェアのアラート検知がされたという想定でスタート。パーテーションで仕切られた5つの事件現場の中で、各チームが同時進行で2時間にわたり犯人検挙のため緻密な捜査を行った。競技項目は「現場指揮」「指紋」「足跡」「写真」「パソコン押収手続き」。採取された指紋や足跡の石膏等は警察の協力のもと、正確さ等が評価・判定された。目的は共通だが、指紋採取方法等アプローチはそれぞれ違う。各チームが実践的な方法で鑑識活動を実施した。
厳正な審査の結果、優勝は北部方面警務隊が、次いで東部方面警務隊が準優勝に輝いた。北部方面警務隊で実況見分主任を務めた横道潤2陸尉は、勝因について「これまでの実務や訓練を通じての隊員個々の識能の蓄積とチームワーク」だと喜びを語った。
競技会統裁官の警務隊長・梅田将(すすむ)陸将補は競技会後、「現場鑑識活動は、事件の解決、真相究明のため、極めて重要であり、今回の競技会に向けて切磋琢磨して向上した識能に満足することなく、現場において、さらに普及、発展させ続けることを期待する」と訓示した。 |