防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1038号 (2020年11月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第64回>

石坂泰三の気骨と教養

 石坂泰三(1886-1975)は、戦後日本経済が力強く高度成長を始める頃の1956年から12年間、経団連会長を務めた。石坂は自由主義経済を信奉し、大局観をもち、産業界、政界に歯切れよく言いにくいことも言う、存在感のある日本経済のリーダーであり、人は彼を財界総理と呼んだ。
 石坂は明治19年の東京生まれ。旧制一高、東京帝国大学法科を卒業して逓信省の官僚となった。しかし、4年後退官し、当時業界13番目くらいの小さい保険会社だった第一生命に入社した。石坂は矢野社長とともに第一生命を育て、石坂が社長になった1938年~1947年の頃には、第一生命は日本生命とならぶ、日本を代表する保険会社に成長していた。
 終戦後浪人中の石坂は、三井銀行頭取の佐藤喜一郎と東芝社長の津守豊治の強い要請を受け、1949年再建のために東芝社長に就任する。東芝は当時、大労働争議のため労使が激突し倒産の危機にあった。石坂は、真正面から組合と交渉し、6千人を人員整理、東芝再建に成功する。
 1956年70歳の石坂は第2代経団連会長に就任した。石坂は国家による経済の統制や産業保護政策に反対で、資本・技術の自由化を進め、日本経済は力強く成長した。1965年79歳のとき大阪万博の会長を引き受けた。大阪万博は史上最多の入場者と史上初の黒字を計上して閉幕した。石坂は1975年(昭和50年)89歳で死去したが、その頃日本は世界第2位の経済大国になっていた。
 石坂は気骨ある自由人だった。終戦後日本を統治したGHQは日比谷の第一生命ビルをオフィスとして使用したが、マッカーサーはここをいたく気に入り、かつてオフィスの主人だった第一生命の社長に会いたいと思うようになった。マッカーサーの意向を忖度する者より、この意向が事実上の出頭命令のように石坂に伝えられた。石坂は、「行かねえよ」、「用事があれば、こっちへくればよい」とにべもなく言い、出頭することはなかった。
 池田内閣時代の高度成長が過熱気味になったとき、日銀総裁山際正道は、企業経営者たちを集めて、設備投資の一割削減を要請する講演を行った。これが石坂の癪にさわった。石坂は、「自由経済の下では、設備投資をどうするかは、われわれ経営者が考えればいいことで、政府が決める問題ではない。ましてや、日銀総裁の仕事なんかじゃない。日銀総裁は金融政策に取り組み、公定歩合をどうするかだけ考えればいい。むしろ、コンピューター君を総裁にすればいいんだ」と言い放った。
 こうした剛直で気骨ある経済人石坂泰三は、和漢洋の深い教養をもつ人だった。子供の頃から和漢の古典を読み、一高時代からは、テニスン、カーライル、エマーソン、バイロン、スコット、シラーなどに親しんだ。石坂は外国の要人に尊敬され、信頼された国際人だった。同時通訳の村松増美は、「財界人の中で、格調高く教養がにじみ出る英語を使う点では、石坂さんがナンバーワンだった」との言葉を残している。
 石坂に最も深く信頼された第4代経団連会長土光敏夫は石坂を、まれに見るほど純真な明治生まれの人で、心が大きく、堂々として、決断力に富み、澄み切った自由の精神で戦後の日本経済を指導した、と評した。
 国力の興隆は人に依る。石坂は日本の国力が興隆する昭和の日本人の力を象徴する。令和の日本にも、石坂泰三ほどの卓越した総合力をもった経済人がいるのだろうか。
(令和2年11月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


寄付目録贈呈式
 大和ハウス工業株式会社の石橋信仁上席執行役員ら4名が10月6日、防衛省を訪れ、遺族会各部会の相談役を務める陸海空幕厚生課長にそれぞれ寄付目録を贈呈した。大和ハウス工業株式会社は、平成18年より毎年自衛隊遺族会に対して寄付を行っている。
 そのきっかけは、同社創業者で石橋信仁上席執行役員の祖父である故・石橋信夫氏が旧陸軍前橋予備士官学校出身で、同校の卒業生の御霊を慰霊するため、平成元年に陸上自衛隊相馬原駐屯地に「友魂記念館」発起人の一人として設立し、戦没者の遺影及び遺品を奉納したため。
 その後、同社は同記念館の維持運営を自衛隊が行っていることに感謝の意を表すとともに、殉職された自衛隊員の御霊を慰霊するため、寄付を行っている。贈呈式後の懇談では、和やかな雰囲気の中、様々な意見交換が行われた。

「1964東京」開会式の日に合わせて公開
オリンピックファンファーレ~君が代行進曲

<西方音楽隊>
 陸自西部方面音楽隊(隊長・志賀亨2陸佐=健軍)は、10月10日、1964年の同日に開催された1964東京オリンピックの期日に合わせ「オリンピックファンファーレ~君が代行進曲」の動画をYouTube(https://youtu.be/YJvydLrppl4)により配信した。
 東京オリンピック開催当時、全国の音楽隊から編成されたオリンピック支援隊音楽隊は、開会式、閉会式の入場行進だけでなく、各種競技の表彰式、また、オリンピック告知イベント等数多く参加した実績を持ち、西方管内からは、第4音楽隊、第8音楽隊を含む合計26名が参加した。今回配信した動画にある「君が代行進曲」は数ある音楽隊入場行進曲の一曲として演奏したもの。志賀西方音楽隊長は、「56年前と同じく、来年行われるスポーツ平和の祭典においても、西方音楽隊の持つ音楽の力を発揮したい」と夢を語った。

うちの子は自衛官
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より近い距離から自衛隊を応援したい
伊丹自衛隊家族会 田中 敏光
 私が自衛隊に関心を持ったきっかけは、3年前に駅の掲示板で目にした『千僧駐屯地創立記念行事』のポスターでした。『本物の戦車に体験乗車できる!』という文句に釘付けになった私は、その日のうちにカメラを持ち駐屯地へと向かいました。これがきっかけとなり、以降、自衛隊に関心を抱くようになり、妻と2人で全国の記念行事にお邪魔するようになりました。
 この3年間を振り返りますと、自衛隊に対する私の意識も徐々に変化していったように思います。自衛隊に特別な関心を持たなかった頃は『自衛隊は国民の生命と財産を守るのが当然の組織』という一方的な見方しかありませんでした。しかし、記念行事で隊員さんの凛とした勇姿をみるにつれ、『自衛隊の皆さんが私たちの平和と安全を守ってくださっている』という感謝へと変わり、今では『私たち国民が自衛隊員を支えていかなければならないのではないか』という信念へと変わっていったのです。
 子どもに恵まれることのなかった私たち夫婦でも、自衛隊の皆さんに対して貢献できることはないのか。そんな思いをしている時、日頃SNSでつながりのある伊丹自衛隊家族会の方から『自衛隊家族会入会』のご案内をいただきました。 『自衛隊家族会』は私たちのように子どものいない夫婦でも参加できますし、より隊員の皆様に近い距離からお役に立つことができるのではとの思いから、入会させて頂きました。
 伊丹自衛隊家族会の様々な催しに参加しながら、私の自衛隊家族会活動はまだまだスタートラインに立ったばかりですが、日本の未来を憂える国民の一人として、自衛隊の皆さんの支えに少しでもなれますよう、活動してまいりたいと存じます。

知って得するお金の話
辻 章嗣
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「自分で作る年金iDeCoとは?」(その1)
日本の公的年金制度は、国民年金と厚生(共済)年金の二階建て構造です。そして、三 階部分に相当する制度に退職等年金給付(被用者年金制度の一元化に伴い2015年10月1日 から共済年金の「職域加算」に変わる制度として導入された制度)や「個人型確定拠出年 金」、通称「iDeCo(イデコ)」があります。今回は、個人が自分自身の老後資金を準備す る手段であるiDeCoについて解説します。

1. 日本の年金制度は三階建て
日本の年金制度は、三階建て構造になっています。 すなわち、公務員や会社員などの第2号被保険者は、国民年金、厚生年金の二階建てに
加えて、三階部分に退職等年金給付(会社員には企業年金)があります。 一方、自営業などの第1号被保険者には、基本的に一階部分の国民年金しかありませ ん。ただし、付加保険料を支払い、付加年金を受給する方法や、任意で加入する国民年金
基金を利用することにより、1階部分を補うことができます。 しかしながら、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者には、二階や三階
部分に代わる制度がありません。

2. 個人型確定拠出年金iDeCoとは?
これらの年金制度に加えて、個人が自分自身の年金を作る手段として導入された制度 が、「個人型確定拠出年金」、通称「iDeCo」です。 iDeCoの特徴は、以下の3点になります。
1 自分で設定した掛け金額を拠出して積み立てます。
2 自分で選んだ運用商品(定期預金、保険商品、投資信託)で掛け金を運用し、老後の
資金を準備します。
3 受取額は、拠出した掛け金の合計額や、運用成績によって、一人ひとり異なります。
また、年金または一時金で受取ることができます。 iDeCoへの加入資格は、基本的に20歳以上60歳未満となっています。 また、掛け金の拠出限度額は、公務員等の場合は、月額12,000円、第3号被保険者は月額 23,000円となっています。

3. iDeCoの利点とは
iDeCoを利用することの利点は、次の三点になります。
1 積立金額すべて「所得控除」の対象で、所得税・住民税が節税できます。
2 運用で得た定期預金の利息や投資信託の運用益が「非課税」になります。
3 受け取るときも「公的年金等控除」又は「退職所得控除」の対象となります。

次回は、iDeCoの利用方法と利用例について解説します。
辻 章嗣
ウィングFP相談室代表 元航空自衛隊パイロット、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士


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