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1038号 (2020年11月1日発行) |
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雪月花 |
「継続は力なり」いろんな場面で使われている。日曜日の朝、どこからか軽やかなピアノの曲が流れてくる。シューベルトのピアノ曲「楽興の時」というよりもNHKの「音楽の泉」のテーマ曲だ。ラジオをつけて農作業をする祖父のおかげでこどものころから耳に残っている。解説の堀内敬三さんの話もわかりやすくクラシック音楽への親しみを持った。以来とびとびで聞いているがもう50年以上のお付き合いになる。堀内さんの後の後31年間解説を続けていた皆川達夫さんはことしの3月体調不良で降板したが翌4月に逝去された。この番組の「継続」にぎりぎりまで命をかけていたのだろう。今の奥田佳道さんで4代目になっているが基本的なものは変わっていない、いつまでも続いていくことだろう。ラジオの長寿番組にはもうひとつある、ラジオ体操だ。〜新しい〜朝がきた〜希望の朝〜、遠くからでもこの曲が流れてくると自然に手や足が動き出す、筆者だけではあるまい。1940年代に国民体操として始まったようだから80年も続いていることになる。「継続の力」は新聞でも見受けられる。日刊ゲンダイに連載している五木寛之さんの随想「流されゆく日々」。1975年10月の同紙発刊から始まり今年の10月22日号で11000回になった。国際問題から政治、身の回り、体調のことなど内容に飽きることがない。五木さんはこの間病気もできなかったのではないか。これはギネスブックに認定され日々記録を更新している。また、聖路加病院の院長をしていた日野原重明さんも朝日新聞の日曜版に「100歳が行く」(年齢は変わる)を2017年に亡くなられるまで執筆されていた。筆者の記憶では200回は超えていたはずだ。回数は五木さんに及ばないが延命治療を拒み、生命の瀬戸際まで口述筆記をしながらの姿に読者は強い感銘を受けた、享年105歳。本紙の発行にお力をいただいた先輩にも最後の最後まで書き続けていただいた方が何人もおられた。書きかけの原稿用紙には「字」にならない謎のような線だけが書かれており「もう書けないよう、だけどペンを持って最後を迎えられたことは物書きとして誇りに思う」と電話をいただいたこともあった。表現することの楽しさと人へ心を伝えることはまさに物書きの本懐かもしれない。継続することによって力が出てくるのか、力があるから継続できるのか、皆さん命がけで立ち向かっている。筆者も当欄を30年続けているが一編でも読者の記憶に残していただければ最高の喜びである。昨年は体調を崩し一年間休筆したが先輩のような最後を全うしたいと思っている。 |
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