日本に長く住む外国人が現在の日本をよく見ている。
以下、『ニッポン人はなぜ美しい習慣を捨てるのか』と題する本に載せられている在日外国人の意見をいくつか拾ってみる。
「日本は第二次世界大戦に負けて以来、自信をなくした。自信をなくした人たちが子供を育てる際、伝統を否定し、アメリカを偶像化した。その結果、日本は次第に悪くなった」、「日本人は戦後信じるものをなくして、その傷はなお癒えていない。それは日本人の多くが自分の国を卑下し、自分の政府を信用しない点に表れている」、「日本人が自分の国の良さを知らないのは、教えられていないというのが最大の理由である」、「今の日本人、特に若い人は儒教を知らない、仏教を知らない、神道を知らない、武士道を知らない、日本の古典を読んだことがない、文化面で空洞化している」、「江戸時代の日本は世界のどの国と比べても圧倒的に豊かで知的だった。そして国として自立していた。今は国も国民も自立していない」、「日本人にはもっとしっかりしてもらいたい、私は世界に日本よりいい国があると思わない」(以上ビル・トッテン、米国)。
「20年前の日本人にはエネルギーが感じられた。今の日本人はマイナス思考になっている」、「日本にはすばらしいものがいっぱいあるのに、若者のそれへの関心が失われつつあるのが残念だ。若い人たちには、自国の良さを知ってほしい」、「今の日本語の乱れ、あるいは衰亡は民族としての日本人の存亡の危機につながるのではないか。僕は今の現象を日本語のタガログ語化と言っている」(ピーター・フランクル、ハンガリー)。
「 "はしたない" が死語になって寂しい。初めて来日した頃に比べると日本はオープンになったが、マナーは悪くなった」、「かっての日本人は一生懸命仕事をしているという印象があった。今は一生懸命を嗤うような感じがある。なぜそうなったのだろうか」(ダリオ・ポスネッスィ、イタリア)。
「今の日本の若者は自国の歴史や文化を知らないし、極端に言うとそれを恥じているように思える。日本の歴史や価値観が遅れたものであるかのように思っている。ちゃんと日本の文化や歴史を正しく教えて、それが誇るに足るものであることを認識させる必要がある」、「日本には発信する内容がないわけではなく、たくさんあるのに発信する行為がない。外のものをただ受け入れるのが国際人であるかのように思っている」(郭洋春、韓国)。
「親殺し、子殺しを平気でやる日本。最近の子供は命あるものを知らない。日本は危ない方向に向かっている」、「20年前初めて来た頃の日本と今の日本は全然違う。今の日本人は動物人間になっている。美しい国で親切、勤勉な国民はどこに行ったのか」、「それでも日本は世界の中でうんと安全な国であることに変わりはなく、平等で、環境もよい理想の国である」(孔健、中国)。
こうした外国人に共通するのは、日本は立派な歴史と文化をもっているのに、教えられていないがゆえに、それを知らず、その結果自国を卑下し、美徳も自立心も失われているという認識である。しかし私は、若い世代はそのことに気づいており、日本の良さを知ろうとする者がふえているように感じている。
(2019年3月25日)
神田 淳(かんだすなお)
高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』など。 |