今、この「防衛ホーム」を手にされている自衛隊員の皆さん。昨年12月に策定されたばかりの「防衛計画の大綱」そして「中期防衛力整備計画」の下で、それぞれ任務の完遂に努めて行く歴史的な年のスタートに立っています。
ふと、かつて私が秘書官を務めた栗原祐幸(くりはら ゆうこう)防衛庁長官が、常日頃から話されていたことが浮かんで参りました。その一例を、長くなって恐縮ですが「内外ニュース懇談会」(1986年11月14日)での講演に見てみたいと思います。多くの隊員の皆さんが生まれる前の昭和の時代、今から33年も前の古い話なのですが。
〇「日本の防衛は、憲法のもとに必要最小限度のものをやっていく。・・防衛計画の大綱、それを着実にやっていく。これを着実にやるだけでも、日本国内では予算のときにそれは多いとか、多くないとか大変な議論になるのです。だけれどもせめてそれだけはクリアしないと、日本がアメリカとの関係において、あるいは西側陣営の一員としても私は評価されないと思う。評価をされないで、それでいけるならば結構でございますけれども、世界の西側陣営、自由主義陣営から孤児になったら日本は本当にもろいものです。・・ですから日本の国際化ということはどういうことかと言うと、世界の人たちに日本を理解させる、そういう努力をすることが日本の国際化だと思いますね。簡単に言ってしまうと。それを防衛の面でも、経済の面でも、文化の面でも努力を続けていかなければならないのではないかというふうに考えております」
〇「一番の問題点は何かと言うと、やはりどうしてもいい隊員を募集するか、それともそれをどう鍛えていくか。そうでないと正面装備、いろいろ兵器その他そろったけれども、魂の抜けた自衛隊ではこれはいけない」
〇「防衛というものは、しょせん国民の理解を得た上で、あるいは国民の理解とそう離れないところで、防衛政策をやっていかなければならん。国民のその水準でやるということも一つの方法でしょうが。国民の水準と少なくともあまりはなれたところで防衛をやってはいかん。そうでないと引っくり返りますね。これは非常に努力のいることではございますけれども、国民の理解を得るような、そういう努力をし、そのラインの上に立って、防衛努力をしていくということが必要ではないかと思います」
〇「日本は日本だけの道を、防衛面についても日本だけだ、日本人のエゴイズムで、おれたちはもういやだよ、これだけだよ、そういう格好で防衛はやれない。アメリカがどう考えているか。世界がどう考えているか。その考えていること、言っていることが、理不尽な場合には、それはできませんと断らなければならん。理不尽でない限りにおいては、それは、アメリカが言ったからとか、これは圧力だからといって止めるわけにはいかない。リーゾナブルなことについては、向こうが言う、言わないにもかかわらずやらなければならん。アンリーゾナブルなことについてはそれはいかん。それにはやはり日本全体が防衛哲学というものを持たなければならん。その防衛哲学の基盤は何かと言うと、やはり国民の理解である。国民の理解を高め、国民の理解の線のところでやるか、あるいは、あまり離れないところで防衛努力をしていくということが一番肝要ではないかと思います」
新しい「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」。国民の皆さんの理解と支持を得るための真摯な努力のスタートも、今です。
北原 巖男
(きたはらいわお)
元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |