「アジアっていくつの国があるの?」
外務省のホームページを開き、孫が一つ一つ数えて行きます。全部で21ヶ国。そのほか、今世界が注視する北朝鮮と台湾を加えると23ヶ国。更に地域の香港やマカオも確認。
「この中で、一番新しい国はどこだと思う?」「…」
その国は、2002年5月20日にインドネシアから独立を回復。今月16年目を迎え、人口は120万人、全国土面積は岩手県ほど。日本の南5000km、時差はありません。21世紀最初の独立国、アジアで一番新しい国。
ちなみに、独立回復式典会場を整備したのは、PKOで同国に派遣されていた自衛隊施設部隊の皆さんでした。また、独立回復直前の2002年4月、G7首脳として初めて同国を訪問した小泉純一郎首相(当時)は、現場を直接訪れ式典会場整備に汗をかいている隊員の皆さんを激励しています。小泉首相は、海外に展開している自衛隊員を激励された初めての首相です。
しかし独立を回復して以降は、この国を訪問した閣僚は1人中谷防衛相のみ。歴代首相はもちろん外相も未だ訪問したことがありません。先行き不透明な激動する国際情勢の中で、この国の重要性や我が国の国益等に鑑みるとき、看過することは出来ません。
…この国とは、東ティモール民主共和国。
今同国は、確立された平和の中で、司馬遼太郎さんの著書「坂の上の雲」の書き出し部分の記述、「まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている」が、そのまま当てはまるような、国づくりの真っ只中にあります。
また本紙が発行される5月15日には、5月12日に実施された国民議会(一院制・65議席・全比例代表制)の選挙結果も判明していることでしょう。選挙は民主的かつ整斉と実施され、6月中旬頃には、真に国民のため汗をかく安定政権の発足が期待されます。
このような東ティモールですが、私たちには馴染みが薄い国であるばかりか、今なお紛争等のネガティブなイメージを抱いている人も少なくありません。
1975年にエベレストを、1992年には世界7大陸の全最高峰を、女性として初めて登頂された登山家の田部井淳子さん。2014年9月に夫君の政伸さんや一般参加のツアーの皆さんと東ティモールの最高峰ラメラウ山(2963m)に登られました。
「東ティモールの山に行くと言ったら、えっ、危なくないの?危険だよね、ゲリラが出るかも。第一、山なんてあるの?という人がかなりいて、政情不安などと、いい話は何もなかった」「実際に行ってみると、実に穏やかで、自然が豊かで、子供たちの声がどんな山奥の村にも響いている平和な所でした」「実際に現地に行くことの大切さを実感した登山でした」「東ティモールのラメラウ山は私の71ヶ国目の最高峰になり、緑も多く、忘れえない国、山となった」。
田部井淳子さんは、出演されたNHKのラジオ番組でも「行ってみなきゃ分からない。行ってみて」と語り掛けています。
ちなみに、田部井淳子さんは生涯76ヶ国の最高峰に登頂されましたが、最高峰から日の出をご覧になったのは東ティモールのラメラウ山が初めてとのことです。東ティモールの皆さんは、自分たちの国をTIMOR LOROSA'Eとも呼びます。
現地の言葉でLOROは太陽、SA'Eは昇るを意味します。東ティモーは、日いづる国、日本と同じサンライズの国なのです。
「はるか下にたなびく雲海の果てに、金色の光が線のように見え始めた。途中、その光はグイグイと歩を進めるが如く立ち昇り、染めあげると一気に赤い円が雲海の上に立ち上がった。オォーとおもわず歓声が上がる…」田部井淳子さんの感動が伝わって参ります。
魅力満載の国、ASIA'S NEWEST COUNTRY 東ティモールは、皆さんを待っています。ご自身で、これが東ティモールを発見・体感してみませんか。ふるさと再発見・日本再発見の旅、とりわけ皆さん自身を再発見する旅になるかもしれません。
北原 巖男(きたはらいわお)中央大学。70歳。長野県伊那市高遠町出身。元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長 |