防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   977号(2018年4月15日発行)
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近間から遠間から
大旦那の敬礼
 文学賞の授賞式としては、それは極めて異例な光景だった。大勢の招待者で立錐の余地もない会場に、軍服姿が数人混じっている。米海軍の少佐、中佐と、自衛隊の1陸佐と1海尉。だが、人々の視線は目立つ彼らにではなく壇上に注がれていた。表彰状授与のため登壇した主催者と受賞者が挙手の敬礼を交わしているのだ。受賞者は米陸軍のクラスAユニフォームの両肩に大尉の階級章を付けているが、その顔は日本人だ。
 主催者の方は老人だが175センチ近い長身で、肘を張らない敬礼の手を下すと「ちょっと日本の海軍とはちゃうんですよ、敬礼の仕方が」そう言うと愉快そうに続けた。「LTちゅうのは、ルーテナントのことですな。私も海軍におりましたのでルーテナント、大尉でございます。まったくこんなんがおるから戦争に負けたんやないか思いますけれど」。
 気風のいい大阪の大旦那に会場中が沸いたが、その言葉に海軍経験の裏打ちがあることに気付いたのは自衛官をはじめ、わずかだったのではないか。
 1994年3月に丸の内の東京会館で開かれた第3回開高健賞贈賞式。開高健とは、芥川賞を取った後も書斎に閉じこもらず、ベトナム戦争の最前線で銃撃戦に巻き込まれたり、アラスカやモンゴルの大河に幻の大魚を追ったりというダイナミックな取材活動で知られた作家だ。彼の没後に創設された開高健賞の第3回で奨励賞に選ばれたのは、アラスカ大学の予備役将校訓練部隊(ROTC)を経て91年の湾岸戦争に米陸軍中尉として参戦した経験を自伝的小説「LT」で発表した加藤喬氏だった。会場に米軍人や自衛官の姿があったのは、加藤氏が日米共同指揮所演習「山桜」などを通じて双方に知己が多かったためである。
 「軍人さんが文学をやるっちゅうのも特異なことで、わが国では遠く森鴎外がおるのみ。そして日本人でアメリカ軍の本物のLTになったのも、現在は大尉でおられる加藤さんが空前やないか」。破格の褒め言葉を連発するこの長身の老人は、サントリーの総帥、佐治敬三会長だ。同社は開高健賞のスポンサーなのだ。佐治会長が終始上機嫌だった訳は、常識に囚われず勝機を見出したら全力で挑むというサントリーの社訓でもある「やってみなはれ!」精神を、外国軍の中で発揮した日本人が出たことが、うれしかったからかも知れない。
 サントリーの前身、寿屋の時代から主力商品のワインに「赤玉」と名付け、「旗日には日の丸を揚げましょう」の標語を作るなど太陽を強く意識していた同社は63年に社名をSUM(太陽)TORY(鳥居)に変更した。
 この前後に「社会から得た利益は社会に還元」の理念で文化事業への出資を始める。サントリーホールで音楽を、サントリー美術館で絵画などを、そして開高健賞で文学を通じ日本が文化的にも成熟することを期待したのだ。
 実父の創業者、鳥居信治郎(連続テレビ小説『マッサン』で堤真一氏が演じた鴨居欣次郎のモデル)が挑んだ初の国産ウイスキーを完成させた2代目社長の佐治は76年にダルマの愛称で親しまれた「オールド」で本場英国を抜きウイスキー生産量世界一を達成しているが、この偉業を活字で支えたのが開高だ。その文才に目を止めた佐治が彼に販促用の小冊子「洋酒天国」を創刊させた。後の雑誌ブームに影響を与えるほどの魅力を放ったこの冊子が、高度経済成長期にバーでウイスキーを飲むという洋酒文化が定着する一因を創ったのだ。社長と平社員、11歳の年齢差という隔たりを超えた2人の友情が、一時代を琥珀色に彩った。
 「サントリーの興廃はこの一戦にかかっています。各位一層の奮励を切に望みます」。ウイスキーの成功で満足せず、強大なライバル3社が待ち受けるビール業界へ打って出るときに、社内に張り出された佐治の檄文である。Z旗の意味として知られた言葉になぞらえたこの一文に、生涯を通して彼を支えたに違いない、海軍士官としての誇りを感じた。
  
桑沢 慧(くわさわけい)
 明治神宮武道場至誠館剣道科出身のフリーライター。これまでセキュリタリアン(防衛弘済会)、歴史群像(学研)などに執筆。

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(防衛ホーム英語教室)
レッツ ロウル
Let's Roll!
それじゃあ、始めよう!

Hi! How are you doing? 皆さん、お元気でしょうか。関東では、あっという間に桜が満開になり、本当に1週間で散ってしまいました。今年の花見は、葉桜で楽しむグループも多く見かけました。関東の大学の卒業式は、桜が満開で、とても印象的な式典になりました。入学式には、桜は散り、新緑が萌えていました。これも非常に印象的でした。卒業と就職、入学。何かが終わり、即、何かが始まる。そうやって月日を重ねていくことは、楽しいものです。日々努力し、成長する過程を楽しみながら生活を充実させていきたいですね。

 今回のフレーズは、"Let's roll!"「それじゃあ、始めよう!」です。それじゃあは、あまり意味がないのですが、今からという感覚が強調されています。このフレーズは、「さあ、いまからやるぞ!」という強い仲間同士の意思表示ができます。語源としては、2001年、アメリカの同時多発テロの際に、ユナイテッド航空に乗った乗客が、このフレーズで、テロリストに立ち向かったことで有名になりました。新年度で、新しいことを一緒に始めるときに使える表現です。一人単独でするのではなく、グループや仲間たちと、一緒に何かを始めるときに使います。そんな、団結力のある職場なら、何でもうまくいきそうですね。チームワークの力は、世界中、どこにいっても変わりません。

 スギ花粉からヒノキ花粉へと変わったという情報もあります。さまざまなアレルギー物質が飛翔しているのかもしれません。どうかご自愛され、お励みください。そして、陽気で楽しい、ストレスの少ない生活をお楽しみください。
<スワタケル>


「頑張っています」新しい職場
活躍するOBシリーズ
近畿環境サービス(株) 船崎 貞治
船崎氏は平成28年10月に補給艦「ましゅう」の運用士として2海尉で定年退職。現在55歳
 私は、平成28年10月10日に「補給艦ましゅう」を最後に38年間の勤務を終え定年退職し、近畿環境サービス株式会社に再就職させて頂きました。
 当社は昭和58年、警備・電気・施設維持管理を主な業務として設立されており、現在舞鶴地方総監部及び第23航空隊の電気及びボイラー設備保守管理業務をアウトソーシングにより受注しています。以前から電気関係に興味があり、在職中に電気関係の資格を取得していたことも当社を希望した一因であり、再就職に際しては、先輩からの紹介および援護業務課の御尽力により現在の会社に採用させて頂きました。入隊以来水測員として勤務し、若干電気の知識・経験はあったものの、高圧電気に関する知識がない私にとっては勤務に慣れるまでは若干苦労がありましたが、上司・先輩等からの御指導により今では不安に感じることも少なくなってきました。
 現在の私の業務内容は、総監部及び北吸岸壁での電気設備保守管理業務であり、北吸岸壁受電所において作業管理者として設備の稼働状況の監視、各電気室及び配電経路の日常巡視点検等に従事しています。業務には、高圧電気の知識及び法令等の理解が不可欠です。電気設備は片時の休みもなく稼働している必要があり、いつ異変が起こってもおかしくはなく、見えない電気を監視するため、日常の計測及び巡視点検が電気設備の状態を監視する上で重要となってきます。そのために常日頃からその様子を把握し五感を働かせ、艦艇勤務等で培った危険予知能力を発揮し不良個所を見逃さないよう早期発見に努め、電気設備の状態を正常に保ち安定して稼働させることが出来るように努めています。
 最後に私が再就職に際して重要と感じたことは「健康な体と事前の準備」です。身体的健康と余裕を持った準備、若い時は健康で当たり前、多少無理してもどうにかなりますが年齢を重ねると色々とガタが出てくると思われます。上手にケアして健康を保つとともに人間ドック等を利用して病気の早期発見及び早めの治療に努め、精神的な不安事項もしっかりと解消させ、できるだけ早く目標を立て、必要な資格等を計画的に取得し、万全を期して第二の人生をスタート出来るように準備を整えることが必要と思います。自衛隊で培った体力・経験は、必ず再就職の場でも役に立つと思います。皆様の御健闘をお祈りします

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