"精強自衛隊"の隊員たちが慰問活動で地域に尽くす—陸自大村、信太山、秋田駐屯地の隊員らが昨年末に障害者施設や高齢者施設を訪問して音楽演奏、清掃、餅つきなどを行い、地元に貢献した。
「待っていたよ」
大村駐屯地音楽隊(隊長・松尾義城陸曹長)は昨年12月中旬、長崎県東彼杵郡川棚町にある社会福祉法人「長崎慈光園」で慰問演奏を行った。
この施設での慰問演奏は、ちょうど20回目。昭和60年から始まり平成19年まで部外演奏支援の合間を縫って行ってきた。その当時からいる入所者は今回5年ぶりの慰問演奏をとても楽しみにしていたようで、外で音楽隊が来るのを待ち、手を振って歓迎。音楽隊がセッティングしている最中も「やっと来てくれたね」「待っていたよ」と話しかけ、音楽隊の演奏を心から待っている様子がうかがえた。会場には施設長以下110名が集まり、今か今かと演奏が始まるのを待っていた。
演奏はクリスマスソング「ジングルベル」の美しい鈴の音と軽快なリズムでスタート。昔懐かしい日本の冬景色を思い出させる童謡、唱歌をメドレーにした「日本の情景(冬)」と続き、アニメちびまる子ちゃんの主題歌「おどるポンポコリン」の曲紹介をすると、大きな歓声があがった。前奏から喜んで立ち上がる人や、サビの部分になると踊り出す人など、感情を素直に身体で表現していた。
以前、音楽隊が慰問演奏に訪れたときにプレゼントした指揮棒を、今もなお大切に保管していた入所者の一人は最初、控えめに後ろで指揮をしていたが、広報幹部が前へと促すと喜んで音楽隊の前に行き、音楽隊長顔負けの指揮を始めた。
その後もアニメソングや演歌メドレーなどを演奏し、終始大きな歓声があがった。予定の曲がすべて終了しても歓声は収まらず、アンコールに「上を向いて歩こう」と「長崎慈光園歌」を演奏。準備していたマイクを手に表情豊かに歌う入所者の姿に、演奏している音楽隊の表情にも自然と笑みがこぼれ、大盛況のうちに慰問演奏は終了。その後、片付けをしている音楽隊の隊員たちに「来年も絶対来てね」とハイタッチを求めたり「今度は、この曲を演奏して欲しい。ぼくがその時歌うから」とカセットテープを聴かせたりする入所者もいた。
松尾隊長は「久しぶりだったが、お互い歳をとりながらも、皆さん変わらず元気で本当に嬉しかった」と話した。
お年寄りを若返らせる
同日、駐屯地音楽隊は大村市にある老人福祉施設「デイサービスセンターふる里」でも慰問演奏を実施。73歳から97歳までの約40名のお年寄りを楽しませた。
演奏は行進曲「国民の象徴」でスタート。「日本の情景(冬)」に続き「リンゴの唄」「青い山脈」と戦後間もない日本映画の代表作の挿入歌を2曲続けて演奏。昔を思い出したのか涙を流すおばあちゃんも見られた。
その後、歌手「千昌夫」に変装した「百昌夫」(センター長)が登場、スタッフとともに「北国の春」を歌った。会場は笑いと拍手でより一層の盛り上がり。また12月の誕生者に対して、「ハッピーバースディ」の演奏をプレゼントした。
昔のヒット曲を揃えた「演歌メドレー」を隊員が歌うと、会場は最高潮。アンコールにも応え「ジングルベル」を演奏、ささやかなクリスマスプレゼントとなった。
音楽隊の帰り際に施設センター長は「生の音楽を聴くことで、お年寄りの皆さんは元気になり若返りました。今日はいつも以上に皆さん笑顔があって良かったです」と隊員らに話した。
「まだ帰らないで」
駐屯地音楽隊は、その8日後にも、今度は東彼杵郡東彼杵町の介護老人保健施設「さざなみ」で慰問演奏。会場には約120名の施設の方々が集まり、3年ぶりの訪問を待っていた。拍手に迎えられて音楽隊が入場。演奏とともに音楽隊員の林田和也陸士長による巧みな司会進行で、時折笑いを交えながら来場者を魅了。中でも隊員が演歌メドレーを歌うと、昔懐かしい歌に合わせて手拍子をしたり、一緒に歌を口ずさんだりする姿が見受けられた。
演奏が終わると代表者から感謝の言葉、さらに「まだ帰らないで」と後ろ髪を引かれるような言葉も受けた。
音楽隊は「来場者からたくさんの活力をもらい、年末にふさわしい音楽演奏支援となった」としている。 |