「気を付けてね」「行ってくるよ」とけさも又玄関先で小さな儀式
(福山 廣本貢一さん作 日本経済新聞1月23日付け「歌壇」)
皆さんは、これまでも「感染しない」・「感染させない」・「医療崩壊を防ぐ」ため、「3密(密閉・密集・密接)の回避」・「マスクの着用」・「手洗い」・「夜間のみならず日中を含めた不要不急の外出自粛」そして「会食の自粛」等に努めて来られていることと思います。
今、新型コロナウイルスとの戦いの中で、私たちは、1月12日に逝去された歴史探偵・作家の半藤一利さんが、様々な著作の中で強調しているような「根拠なき自己過信」に陥ってはなりません。
岸防衛大臣は、1月26日の閣議後の記者会見で、1月22日の会見以降31名の自衛隊員が新たに感染し、これまで合計829名の感染が確認された旨を明らかにしています。感染隊員の数は、増加を続けており残念です。
岸防衛大臣は、全自衛隊員に向けた令和3年の年頭の辞でも次のように述べています。
「私からも常々伝えているように、隊員諸君の感染は、部隊の能力発揮に直接影響を及ぼし、任務遂行に支障を来すものです。 "自分だけは大丈夫" という甘い考えや気の緩みは絶対に許してはなりません。各自の行動を改めて厳しく律してください」
「各部隊指揮官におかれては、感染拡大リスクを高めることのないよう、引き続き隊員に対して高い感染予防意識を持って行動するよう指導を徹底し、コロナ禍にあっても常に国民の負託にこたえられる態勢を維持してください」
どんなときも国民と共にある国民の自衛隊員としての責任そして危機感の共有&行動の徹底です。
こうした中、1月20日にジョー・バイデン米国大統領の就任式が行われました。日本では21日未明のテレビ中継でしたが、歴代大統領の中で最高齢(78歳)の年齢を全く感じさせない、見る人の心にグングン染み入って来る力強い真摯な就任演説。米国民の団結・米国を一つの国にする・同盟関係の修復等を自らの言葉で熱く訴えていました。
新型コロナウイルスとの戦いにおいて、最も厳しく命懸けとなり得る時期に突入しているときに、「私は約束する。すべての米国人のための大統領になることを(I pledge this to you:I will be a President for all Americans.)」と明言し、一緒にやり遂げようと呼びかけたバイデン大統領。危機感を共有し、自らの行動を徹底して行く決意をした米国民は多いに違いないと思いました。
そして、同大統領が演説の中で述べた「何も変わらないと言わないで欲しい(Don't tell me things can't change.)」や「私は常に皆さんに真実を話す(I will always level with you.)」等からは、真っ向国民に向かい合う国民に信頼されるリーダーとしての不退転の決意と覚悟を感じました。
バイデン政権発足後の1月24日、日米の閣僚による最初の電話会談が岸防衛大臣とオースティン国防長官との間で行われました。同国防長官は、中国の海洋進出を念頭に、我が国固有の領土である尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることを明言し、両防衛首脳は、東シナ海におけるいかなる一方的な行動にも反対することを確認しました。
中国は、軍の指揮下にある武装警察に編入された海警局の船を連日のように尖閣諸島周辺海域に航行させています。2020年は、我が国の主権、領海を侵犯し続けた時間は過去最長を記録。日本漁船を追尾するといった悪質な事案も続いています。
更にその中国は、1月22日に海警局の権限などを定めた「海警法」を新たに制定(2月1日から施行)。中国が主張する「管轄海域」に外国船舶が違法に入り停船命令等に従わない場合、武器使用を認めることなどを規定しています。
今後、中国が尖閣諸島や南シナ海で一段と攻勢を強めて来ることは必定です。
温度差の無い危機感の共有と断固たる信頼性強化のため行動する日米同盟の真価が問われます。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |