防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1037号 (2020年10月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第63回>

保科正之と江戸城天守閣

 保科正之をご存じだろうか。徳川光圀、池田光政と共に江戸時代初期の三大名君といわれた、会津の初代藩主である。しかし、保科正之は光圀や光政をはるかに超える名君だったように思われる。
 保科正之(1611-1673)は2代将軍徳川秀忠の庶子として生まれた。7歳のとき信州高遠藩主保科正光の養子となり、信州で育つ。21歳のとき養父正光が死に、3万石の高遠藩主となった。秀忠を継いだ3代将軍家光は、異母弟である正之の謙虚な人柄と優れた能力を認め、正之を取り立てていった。1636年、正之26歳のとき出羽山形領20万石を与え、高遠から転封させた。さらにその7年後、陸奥会津に国替えを命じ、正之を奥羽地方の要所23万石の会津藩主に据えた。
 家光は1651年に死ぬが、臨終の時、最も信頼する正之を枕元に呼び「家綱を頼むぞ」と、11歳の幼いわが子家綱を正之に託した。以後正之は4代将軍家綱の後見人として、家綱と幕府に尽くす。当時の老中等幕閣は極めて公正な判断力をもつ正之を深く信頼したので、正之は彼らの上に立つ幕府の大老のような存在として幕政に参画した。
 正之の数ある善政から幾つか拾うと、正之はまず末期養子を認め、社会の安定化を図った。末期養子とは、跡継ぎのいない大名が死の間際に養子を迎えてお家の存続を図ることで、幕府はこれを禁じ、跡継ぎのいない大名を多く取り潰してきた。結果、浪人が全国にあふれ、社会不安を起こしていた。
 次に正之は殉死を禁止した。主君が死んだとき、特に恩顧を受けた家臣が主君に殉じて切腹する風習は、戦国時代に発し、江戸時代には忠義の美風として暗に賞賛される傾向さえ生じていた。正之は、これを悪習と断定。まず国元の会津藩で殉死を禁止。続いて幕政においてもこれを禁じた。
 1657年江戸は史上空前の大火災に見舞われた(明暦の大火)。江戸市街の6割が焼き尽くされ、焼死者10万人に及んだ。正之は江戸の復興にリーダーシップを発揮。江戸市民の家屋の再建費として16万両の拠出を決した。巨大な出費で幕府の金庫が空になると恐れる幕閣に、官倉の蓄えはまさにこのような時に使うためにあると言った。また、正之は火事で焼け落ちた江戸城天守閣の再建をさせなかった。市民の救済対策、都市整備等民政を優先した。
 以来今日に至るまで江戸城(現皇居)に天守閣は再建されていない。石垣の天守台があるだけである。最近宮内庁が天守閣の30分の1の復元模型を公開した。民間の一部に、東京の観光拠点として天守閣を再建する運動があるが、私は反対する。天守閣が再建されなかった歴史に意義があると思う。天守閣のない石垣の天守台こそ、保科正之の事績を知り、江戸・東京の歴史を知る深みのある観光資源である。
 晩年正之は会津藩主として、「他藩がどうであろうと、会津藩は将軍家へ絶対的に忠誠を尽くすこと」、「政事は、利害をもって道理を曲げてはならない」、などから成る『会津藩家訓15箇条』を定めた。この家訓は代々受け継がれ、会津藩の憲法となった。この家訓のゆえ、幕末の動乱期に会津藩は佐幕の雄藩となり、戊辰戦争で薩長と戦い、敗れ、薩長の維新政府から朝敵として迫害される悲哀を味わった。しかし会津は、後に東大総長(2回)・京大総長などを歴任する山川健次郎や、北清事変で世界的な名声を博した軍人柴五郎をはじめとする多くの卓越した日本人を輩出した。こうした人の中に、藩祖保科正之の敷いた会津士魂が見いだされる。
(令和2年10月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


我らが地本!!
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自衛官候補生、武山へ
<静岡>
 静岡地方協力本部(本部長・杉谷康征1空佐)藤枝地域事務所は9月28日、陸上自衛隊武山駐屯地(神奈川県横須賀市)へ自衛官候補生陸上要員入隊予定者を引率した。
 藤枝所の担当地域の1人を含め、県内から3人の入隊予定者が武山駐屯地へ。最初は「特に緊張もなく、しっかり眠れました」と広報官に話していたものの、駐屯地が近づくと「やっぱり緊張してきました」と少しこわばった表情を見せていた。
 駐屯地に到着すると、早速迷彩Tシャツを購入し、入隊準備。静岡からの入隊予定者の中に後輩の友人がおり、意気投合した様子で「話が合うので良かったです。楽しく頑張っていけそうです」と笑顔を見せた。
 受付前には、自衛隊で初めての昼食をとり「自衛官の友人から、入隊すると早食いになると聞いています。まだ早く食べられないので訓練が必要です」と話していた。
 その後、受付で書類確認などを済ませ、いよいよ生活隊舎へ。「頑張ります!」と意気込み、今年度最初の陸上自衛官候補生が誕生した。
 静岡地本は、入隊後も入隊者との連絡を密にし、無事前期教育を卒業できるようサポートしていく。
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ガールズアドベンチャー
<沖縄>
 沖縄地方協力本部(本部長・坂田裕樹陸将補)は、9月5日、陸上自衛隊勝連分屯地及び海上自衛隊沖縄基地隊において、ガールズアドベンチャーを行った。
 ガールズアドベンチャーとは、女性の募集対象者に対して、自衛隊の魅力や女性自衛官の活躍を紹介することで、女性特有の疑問や不安などを解消し、募集に繋げることが目的であり、今回が初の試みである。今回、自衛隊に関心のある高校生や社会人など14名が参加した。また、台風10号の影響が心配されたが、無事にイベントを開催することができた。
 受付終了後、それぞれ希望の陸海空自衛隊の迷彩服を着用して、研修をスタート。午前中は海自沖縄基地隊で基地の概要説明、南極の氷体験、海自女性自衛官との懇談、施設見学、午後は陸自勝連分屯地において15旅団の概要説明、陸自女性自衛官との懇談、中SAM研修、施設見学を行った。
 概要説明では、陸自・海自の任務などの説明を行うとともに、沖縄での災害派遣などの紹介を行った。また、第15旅団で行われている後期教育の修了試験の様子をビデオで紹介し、入隊後の女性自衛官の姿をイメージさせた。南極の氷体験では、砕氷艦「しらせ」が持ち帰った南極の氷を提供した。氷を入れたコップに耳を近づけ、約2万年前の閉じ込められた空気のパチパチとはじける音や味覚など南極の氷に触れ、満足している様子だった。陸自勝連分屯地での中SAM研修では、女性自衛官による発射機を起立させる動作の展示を行った。参加者らは女性自衛官の姿を間近で見て、「かっこいい」と感激していた。
 懇談では、入隊間もない隊員から子育て中の隊員まで幅広い年齢層の女性自衛官と対談した。終始リラックスした様子で会話が進んだ。「体力がなくても大丈夫ですか?」「女性はどのような職種で活躍していますか?」など積極的な質問があり、隊員は自身の経験談を交えながら女性特有の疑問や悩みなどに答えた。この懇談により参加者に、自衛隊に対する安心感や職種・進路の希望を広げることができた。また、女性自衛官が生活する施設などを見学し、入隊後の生活の様子を説明した。
 参加者から、「このイベントをきっかけに自衛官になりたいという気持ちがとても強くなりました」「女性でも自衛官として自信をもって働けるということが分かりました」「女性自衛官の生活スタイルがわかりました。自衛官の仕事内容のイメージが変わりました」などの感想を受け、女性自衛官の魅力を十分に伝えることができたと感じた。
 コロナ禍においても、多くの募集対象者に自衛官の魅力を伝えることができるよう、今後も様々なイベントを企画していく。

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知って得するお金の話
辻 章嗣
「マイホームの夢を叶える」(その2)

今回は、住宅資金と住宅ローンの繰上げ返済について解説します。
1. 購入希望価格の2〜3割の資金を準備しよう
まず、住宅購入資金を準備する重要性について解説します。
多くの方が利用する住宅金融支援機構が提供している「フラット35」の場合、融資率が九割を境に借入金利が代わります。
ここで、「融資率」とは、「借入額」を「住宅の建設費又は住宅の購入額」で割った値を言います。
「融資率」=「借入額」÷「住宅の建設費又は住宅の購入額」
「フラット35」の平均的な金利で、9割を超えた場合の金利は、9割未満の金利より0.26%程高くなります。例えば、「借入額3,000万円、元利均等返済方式、借入期間35年で借り入れた場合」、金利が0.26%違うと総返済額は160万円程多くなります。
また、住宅の購入には、税金や手数料等の諸費用が掛かります。その諸費用の額は、新築住宅で購入価格の3〜7%、中古住宅で6〜10%と言われています。
したがって、頭金と諸費用を合わせて、購入希望価格の2〜3割の住宅購入資金を準備しましょう。
2. 合理的な方法で住宅資金を準備しよう
それでは、住宅資金を合理的に準備する方法について提案します。
その方法とは、現在の家賃相当額と、住宅ローンの返済予定額との差額を住宅資金として蓄える方法です。
「住宅資金積立額」=「住宅ローン返済予定額」-「支払い中の家賃相当額」
この方法で家計をやり繰りすることができれば、住宅ローンの返済が可能であることを検証できるとともに、住宅購入資金を準備することができます。
また、住宅資金の積立には、給与から源泉控除される共済組合の定額積立貯金や財形貯蓄を利用されると良いでしょう。
3. 無理の無い範囲で積極的に繰上げ返済しよう
 最後に、住宅ローンを現在返済中の方に、繰上げ返済のお勧めです。
 繰上げ返済の方法には、「返済額軽減型」と「期間短縮型」があります。
《返済額軽減型》
返済期間を変えずに毎月の返済額が軽減されます。
《期間短縮型》
毎月返済額を変えずに返済期間が短縮されます。
 例えば、先の借入例の金利が全期間固定型で年利1.5%とすると、総返済額は約3,858万円となります。そこで、返済開始後11年目に100万円を繰上げ返済した場合の総返済額を計算すると、返済額軽減型は約3,839万円、期間短縮型は約3,816万円となり、繰上げ効果は期間短縮型の方が約23万円大きくなります。
 また、同じ期間短縮型でも、繰上げ時期によってその効果が大きく異なります。例えば、先の借入例で21年目に期間短縮型で同じ100万円を繰上げ返済した場合の総返済額は約3,835万円となり、11年目に返済した場合に比べその効果は約19万円小さくなります。
 その理由は、繰上げ返済した金額は、全て元金の返済に充てられ、その結果短縮することができた期間の利息分が軽減されるためです。したがって、返済額の内訳で元金分に比して利息分の割合が多い返済初期の方が、繰上げ返済効果が大きくなります。
 したがって、住宅ローン減税期間が終了したら、無理の無い範囲で早めに期間短縮型で繰上げ返済することをお勧めします。 

マイホームの夢を叶えるためには、まずは、住宅資金の準備から始め、キャッシュフロー分析により無理の無い住宅ローンを組みましょう。そして、早めに繰上げ返済をされると良いでしょう。

辻 章嗣
ウィングFP相談室代表
元航空自衛隊パイロット、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士


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