9月16日、菅内閣がスタートしました。
防衛大臣には、平成19年の福田内閣・同20年の麻生内閣で防衛大臣政務官を務められた岸 信夫衆議院議員が就任され、12年ぶりに防衛省に戻って来られました。
岸防衛大臣は、就任に当たり菅総理から7項目の指示を受けたことを明らかにしたうえで、「総理からいただいたご指示を踏まえつつ、世の中や時代の変化を敏感に感じ取りまして、常に柔軟な発想で25万人の隊員の先頭に立って、国民の皆様の負託に応えるため、わが国、また世界の平和と安定に全力を尽くしてまいりたい」と表明されています。(9月16日、就任後の記者会見)
岸防衛大臣を迎えられた全ての防衛省・自衛隊の皆さんには、岸防衛大臣のもとに一丸となって団結され、内局・各幕が一体となって盤石な組織の維持に努め、国民の皆さんの深い理解と力強い支持を確固たるものにして行っていただきたいと思います。
岸防衛大臣が受けられた総理指示は、真に実効的な防衛力の構築、自衛隊の役割・活動の強化、インド太平洋地域の安定化への寄与、普天間飛行場移設を含む地元の基地負担の軽減、相次ぐ自然災害に対する取り組みの充実など、大変多岐にわたっています。
その第一には、先のイージス・アショア調達中止決定に係る抑止力強化のため、ミサイル阻止に関する新たな方針を今年末までに策定し、速やかに実行に移すことが挙げられています。防衛省は、9月4日に発表した「イージス・アショアに係る経緯について」で、次のような反省の弁を述べています。
「防衛省内における配備にかかる検討のための体制が十分でなかった面は否定できず、当初の段階から十分な体制を構築しておくべきであった。省内の意思疎通や情報共有の在り方などを含め、仕事の進め方に係る問題を改善するため、風通しの良い業務環境を整備していく必要がある。」
岸防衛大臣の統率のもと、今度こそしっかりとした検討体制を構築し、英知を結集し、大臣から現場の部隊等に至るまで組織の風通しを良くされ、この重大懸案事項に取り組み、国民の負託に応えて行っていただきたいと思います。
更に総理は、2015年9月に平和安保法制が成立してからちょうど5年を迎えた中で、同法制に基づく自衛隊の任務の着実な遂行についても万全を期すよう指示しています。
同法制について、2020年9月20日付け日本経済新聞は、「インド太平洋構想が深化」との見出しに続き、「日米同盟は強固になり、自由で開かれたインド太平洋構想を推進する基盤となった」、「日米同盟の深化は英国やオーストラリア、インドなど日本にとって「準同盟国」といわれる国との協力強化にもつながった」等報じています。そして2017年から現在までに、平時の米艦・航空機の防護活動32件。平時の米艦への洋上給油は随時。2019年4月から国連が統括しない平和維持活動への自衛官2名をエジプト・シナイ半島に派遣。PKOの駆け付け警護と宿営地の共同防衛については、2016年に南スーダンの派遣部隊に権限を付与するも行使されるには至らなかった旨を伝えています。
このような折、発行されたばかりの山口那津男公明党代表とジャーナリストの田原総一朗さんの対談集(「公明党に問うこの国のゆくえ」毎日新聞出版2020年9月20日発行)を読む機会がありました。山口代表は、かつて2003年に自衛隊がイラクのサマワへ派遣された際の体験から、次のように大変強い思いを語っています。(筆者抜粋)
「初めてサマワに自衛隊の部隊を出すときの壮行会に参加させてもらいましたが、そのときのピリピリした緊張感は今も忘れられません。・・・最初の緊張感はすさまじいものでした。そういう現場で、自衛隊員とその家族の緊張した様子を肌で感じた・・・その経験を通して海外派遣は行かせる側ではなく、行かされる側の身になって考えなければいけない。外務省や政治家が外交交渉を行う際には、実際に現地で活動する人たちのことを、まず考えるべきだということを思い知らされました。」
一段と厳しさ複雑さを増す国際安全保障環境の中にあって、防衛省・自衛隊に対する国民の期待は益々大きくなっています。
そんな国民の心を心として、懸命に尽力されている岸 信夫防衛大臣はじめ任務の完遂に邁進する隊員の皆さんに、心から力いっぱいのエールをお送り申し上げます。
頑張ってください!
頼みます!
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |