防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1027号 (2020年5月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第53回>

学びの日本文明

 以下、粗雑な文明論であるが、日本文明は学びの性向を強くもつ文明であるように思われる。
 古くは中国文明に学び、近代は西欧文明に学んだ。日本は古来世界の先進文明に学び、吸収して文明を豊かにしてきた。日本文明は学び、吸収する文明で、大文明として外に広がることはほとんどなかった。
 こうした日本文明の学び、吸収する性向は、日本が島国の後発文明であり、先進文明は常に大陸からもたらされてきたという地理的、歴史的条件が生んだものであろう。
 世界史を見ると、強力な大文明は圧倒的な影響力をもって広がるのが常であり、そのため滅んだ弱小文明も多い。日本文明が消滅せず独自の発展を遂げてきたのは、日本が島国であり、大陸の動乱の影響を蒙らなかったことが根本だと思うが、学びの精神が旺盛で、漢字から表音文字の仮名を創作したことに代表されるように、学んだことを換骨奪胎して優れたものを生み、文明を豊かにしてきたことも大きいと思う。
 しかし、他文明から優れた、進んだものを学び、吸収する日本文明の大きな長所の裏はそのまま短所ともなる。
 一つは、日本では海外のものを崇拝するあまり、自国のものをけなす軽薄な傾向がよく発生する。国を挙げて西洋文明を学んでいた明治時代、福澤諭吉が『学問のススメ・第15編』でこれを指摘している。「開化先生と称する輩は、口を開けば西洋文明の美を称し、およそ知識道徳の教えから、治国、経済、衣食住の細事に至るまでも、西洋の風を慕ってこれに習おうとする。日本の旧習を厭うて西洋の事物を信じるのは、軽信軽疑の譏(そしり)を免れない。彼(西洋)の風格が悉く美にして信ずべきでもなく、我が(日本の)習慣が、悉く醜で、疑うべきものでもない」と。ものの良し悪し、価値評価の基準を自分に置かず、外国に置くという、特に知識人に見られる傾向である。
 また、海外の文明を学ぶとき、書物で学ぶゆえ、海外の文物、思想を理想化し、現実の日本と比べるという現象がよく発生する。現実ではない海外の理想の方が現実の日本より良く見えて当然である。かつて中国に対する日本人がそうだった。漢籍により中国を知る日本の知識人は、聖人を生む文明国としてこれを尊崇してきたが、明治の開国後中国社会の現実を知った。また、西洋を崇める近代日本の知識人の多くが、マルクス主義を尊崇し、ソ連を理想化した。マルクス主義国家に対する幻想は、1991年ソ連の崩壊によって消滅した。
 日本の、優れた文明から謙虚に学ぶという良き特質を、これが短所とならないように維持するには、良いものは誰が何と言おうと良い、悪いものは悪い、といった他に依存しない個人の確固たる価値基準をもつことが根本だろう。西郷隆盛はあるとき、「西洋は野蛮だ」と言った。驚いて、「西洋は文明だ」という識者に対して、西郷は「西洋が本当に文明ならば、未開の国に対して慈愛を本とし懇々と説諭して開明に導くべきであろうが、実際は未開の国に対するほどむごく残忍なことをして、自国の利益を図るのは野蛮だ」、と言って譲らなかったという逸話が伝わっている。西郷は、自己の文明評価基準をもっていたのである。
 文明を評価するとき、他文明をよく知り、自文明をよく知って、これをつぶさに比較し、すなおな目で判断することが重要であると思われる。
(令和2年5月15日)
  
神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。

祝!入隊式・入校歓迎行事
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中部方面混成団
 中部方面混成団(団長・芝伸彦1陸佐)は4月4日に豊川駐屯地、4月5日に大久保駐屯地、4月7日に大津駐屯地、4月10日に松山駐屯地において、第15期一般曹候補生(男子約735名、女子約30名)、自衛官候補生(女子約280名)の入隊式を実施した。
 着隊から入隊式までの約1週間、階級章の縫い付けなどを不慣れな手付きで行い、敬礼や行進などの基本教練を学んだ。初めて親元を離れる隊員も集団生活の中で、徐々に同期とも打ち解けあい、笑顔が見られてきた。
 満開の桜が咲く中、各地本長や担当した広報官が見守る中、新隊員は緊張した面持ちで真新しい制服に身を包み入隊式に臨んだ。混成団長は、「皆のこれまでの過去は変えられない。では、光り輝く未来はあるのか?世の中そんなに甘くもない。では、どうすればいいのか。それは『今を全力で頑張ること』だ。今後皆さんが自衛官として人生を歩んで行く上で多くの困難に向き合うことになると思う。そんな時に逃げ道を捜していたら、大変なことから目を背けたら、輝く未来に手が届くことはないと思う。目の前に困難が立ち塞がったら真正面からそれを乗り越えよ。絶対に逃げるな。世の中には数多の職業があるが、自衛隊はやって良かったと思える職業の一つであると団長が保障する。今は不安で一杯かも知れないが、区隊長、区隊付、班長を信じて全力でこの教育に臨んで貰いたい」と訓示した。
 新隊員は6月下旬までの約3カ月間、自衛官として必要な基礎的な知識及び技能を修得し、各部隊等においてそれぞれの職種教育を受け、その後全国の各部隊に配属される。
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第24普通科連隊
 第24普通科連隊(連隊長・中川宏樹1陸佐=えびの)は4月5日、全国各県からの第15期一般陸曹候補生課程101名の入隊式を挙行した。
 今回の式は新型コロナウイルス感染拡大防止の為、式を縮小開催したために家族等の参加は見送られたが、大分県及び宮崎県の地方協力本部長が来賓として見守る中、代表の第3区隊・重松優貴(しげまつゆうき)一般陸曹候補生(大分県出身)による申告、宣誓を全員で力強く行った。
 連隊長は、式辞において「団結せよ」「自ら学び取れ」「真に戦える隊員を目指せ」の3点を要望した。
 又、会場スクリーンに河野防衛大臣からのメッセージが放映され自衛官としての志を再確認していた。引き続き会場及び桜木周辺での区隊毎の記念撮影と野外会食や自己紹介が実施され親睦を深めた。
 式後、申告を実施した重松優貴一般陸曹候補生は「かけがえのない同期と3カ月間の教育訓練の苦楽を共にして、全員で笑って終了式を迎えたい」と一般陸曹候補生としての決意を新たにしていた。参加が見送られた全国の家族等へ、えびの駐屯地公式Twitterを利用し入隊式の様子を配信した。
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第36普通科連隊
 第36普通科連隊(連隊長・伊藤博幸1陸佐=伊丹)は4月5日、伊丹駐屯地において、「自衛官候補生課程入隊式」を挙行し、満開の桜の中、67名の自衛官候補生が入隊した。
 今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため来賓、隊員家族は招待せず、駐屯地グラウンドにて実施した。厳かな雰囲気の中入隊式は執り行われ、告達、申告、宣誓等を実施した。執行官式辞の際、連隊長は「何事にも失敗を恐れずチャレンジ精神をもって臨んでもらいたい」と述べ、さらに、「3カ月後の教育修了時にはより成長した姿が見られることを期待する」と述べ、候補生達を激励した。また、祝電披露においては大阪府自衛隊家族会や伊丹自衛隊家族会等多くの方からの祝電が紹介された。自衛官候補生67名は、自衛官候補生として存在意義を自覚するとともに、団結の強化及び履修意欲の向上を決意した。
 入隊式後には、防衛大臣からのメッセージ上映及び区隊旗授与式、武器貸与式が行われ、候補生は一段と引き締まった表情になり、教育に対する気持ちを新たにした。
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第43普通科連隊
 第43普通科連隊(連隊長・中尾圭1陸佐=都城)は4月5日、桜満開で花弁が舞い降る快晴の中、都城駐屯地体育館において、自衛官候補生57名の教育入隊式を実施した。
 今回は、新型コロナウイルス感染症拡大を予防する観点から、来賓や家族等の招待を行わず、自衛隊内関係者のみで粛々と行われた。また、河野防衛大臣によるビデオメッセージの放映や、西部方面総監を始め多数の祝電を披露した。
 式辞の中で連隊長は、「『一歩前へ』『同期との絆を大切にせよ』」と要望し、「己の夢と目標を忘れずに、いきいきと前に突き進み、一人では苦しくても、同期がいるからこそ乗り越えられ同期の絆を一生大切にしてもらいたい」と述べた。
 自衛官候補生の前田一成(まえだいっせい)候補生は「これからの辛く厳しい訓練を乗り越え、入隊すると自分で決めたからには、しっかりと基礎的な知識及び技能を身につけ、1日も早く一人前の自衛官となり活躍したいです」と固く誓った。
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第21普通科連隊
 第21普通科連隊(連隊長・五十嵐雅康1陸佐=秋田)は、4月6日、秋田駐屯地において、「令和2年度自衛官候補生入隊式」を実施した。
 春の日差しを浴びながら整然と隊列を成した初々しい姿の自衛官候補生58名は、式が始まると区隊長からそれぞれ名前を呼ばれ、任命された。
 そして入隊者を代表し今井琉煕斗候補生が入隊を申告、引き続き網木拓海候補生が「自衛官候補生として名誉と責任を自覚し、知識及び技能の修得に励むことを誓います」と力強く宣誓した。
 執行者の五十嵐連隊長は式辞において、「使命感と誇りを持て」「自らを鍛え、同期と団結し、困難に立ち向かえ」の2点を要望し、「自衛官として、また立派な社会人として成長できるよう、しっかり修養してもらいたいと思います」と激励した。
 なお、本年の入隊式は新型コロナウイルス感染予防のため、万全の防疫対策を施し、屋外での挙行、各人間隔2m以上の保持、時間や内容の短縮、参加者全員のマスク着用等を徹底した。特に参加人数の削減については、来賓や家族の深い理解の元、参加を遠慮いただき、最少人数で実施することができた。

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