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自衛隊ニュース   891号 (2014年9月15日発行)
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広島市の土砂災害に1400名規模の災害派遣
「百万一心」を合言葉に
陸上自衛隊第13旅団

 平成26年8月20日午前6時30分、前日から降り続いた大雨の影響により土砂災害が発生した広島県広島市の人命救助に係る災害派遣要請が、湯崎英彦広島県知事から掛川壽一13旅団長に出された。
 待機していた部隊の初動は早かった。午前7時40分には第46普通科連隊(連隊長・一宮大介1陸佐)の人員約30名と車両約10両が海田市駐屯地を出発し、広島市安佐南区と安佐北区の行方不明者の捜索を始めた。9時03分には、八尾駐屯地にある中部方面航空隊(隊長・中尾国保1陸佐)のUH―1が離陸し、情報収集活動を実施した。以後、海田市駐屯地の第47普通科連隊(連隊長・齊藤肇夫1陸佐)・第13施設隊(隊長・伊藤康人2陸佐)・第13後方支援隊(隊長・渡辺浩二1陸佐)と防府分屯地の第13飛行隊(隊長・大島政之2陸佐)及び海上自衛隊呉造修補給所(所長・坂口好明1海佐)から続々と人員や車両が出発し行方不明者の捜索を始めた。この日16時までに派遣された人員は約600名・車両は約90両・航空機4機で、夜を徹して捜索活動を行った。翌21日には、三軒屋駐屯地の第305施設隊(隊長・小林公則2陸佐)・出雲駐屯地の第304施設隊(隊長・渡邊岳央2陸佐)・山口駐屯地の第17普通科連隊(連隊長・山口真司1陸佐)の人員や車両も加わり情報収集活動や行方不明者捜索活動を行った。24日、入浴支援を開始。25日からは米子駐屯地の第8普通科連隊(連隊長・小見明之1陸佐)と海田市駐屯地の第13特殊武器防護隊(隊長・安部昌勝3陸佐)からも人員等を派遣、依然として夜間も行方不明者の捜索活動を実施した。27日に日本原駐屯地の第13特科隊(隊長・村上賢治1陸佐)・第13戦車中隊(中隊長・杉田智紀3陸佐)・第13高射特科中隊(中隊長・竹下友也3陸佐)、28日には千僧駐屯地の第3後方支援連隊(連隊長・吉岡正孝1陸佐)、9月2日以降、海田市駐屯地の第13旅団司令部付隊(隊長・永井博3陸佐)・第13音楽隊(隊長・今井裕樹2陸尉)、出雲駐屯地の第13偵察隊(隊長・伊達俊之2陸佐)からも人員等が派遣され順次部隊交代しながら夜を徹した行方不明者捜索活動や入浴支援が9月10日現在も1400人体制で続けられている。また、第13通信隊(隊長・清遠高令2陸佐)は、派遣当初から広範囲に展開し捜索活動等に関する指揮連絡の任務にあたっている。
 西村内閣府副大臣を本部長とした国の現地対策本部(9月9日より現地連絡調整室)には、自衛隊・警察・消防等の連絡要員を配置して、被災情報等を共有し捜索活動を指揮した。
 派遣活動間、大雨や雷雨により行方不明者捜索活動を一時中断することも余儀なくされ、歯がゆい思いをする各部隊・各隊員。そんな隊員達のヘルメットに貼ってある「百万一心」のステッカー、これは、13旅団が団結して任務を遂行するために伝承している訓えで、毛利元就が郡山城の築城の際に人柱に代えて鎮めた大石に刻まれたものと言われている言葉だ。「百万一心」の言葉の左に陸上自衛隊のマークを右に13旅団の部隊章を配したこのステッカーは、現地対策本部でも取り入れられ、現地対策本部では「百万一心」の左に広島県のマーク、右に広島市のマーク、中央に日の丸を配したステッカーを使用している。
 「一日一日を一人一人が力を合わせて、心を一つに協同一致して事を行う」の訓えのとおり、13旅団の隊員たちは今日も任務に励んでいる。

派遣規模 (9月10日現在)人員:約1400名(延べ約14、900名) 車両:約205両(延べ約3、230両) 航空機:2機(延べ66機)
〈9月11日22時撤収要請〉


南西地域で津波想定
離島統合防災訓練
 防衛省・自衛隊は9月3~6日まで沖縄県で平成26年度離島統合防災訓練を行った。3~4日は沖縄本島から北西約60qにある渡名喜島及び粟国島で、渡名喜村役場役人が同行して港湾使用不能時における揚陸適地の調査と計測を実施し、5~6日には沖縄本島から南西約290qにある宮古島・多良間島・伊良部島で沖縄県総合防災訓練に参加した。
 宮古島北方沖を震源とする最大震度6弱の強い地震により沖縄気象台から宮古・八重山地方に「大津波」の津波警報が出された想定で行われた沖縄県総合防災訓練には、陸海空合わせて人員約470人、輸送艦「しもきた」、エアクッション型揚陸艇LCAC、航空機9機、車両等35両が参加し、医療チームや人員・物資の那覇→宮古島間の空輸、航空機による沿岸部の状況偵察、伊良部島・多良間島からの被災者の空輸、「しもきた」による警察・消防車両等の沖縄本島からの海上輸送、「しもきた」・LCACによる沖縄電力の発電機車の輸送、医療支援・炊き出し、海上での行方不明者捜索・吊り上げ救助、陸上での倒壊家屋及び土砂・がれき下からの救出等の訓練が大規模に行われた。

全国で広域医療搬送訓練
九州→東日本など
 8月30日、防衛省・自衛隊は政府主催の平成26年度広域医療搬送訓練に参加した。同訓練は9月1日の「防災の日」前後に毎年行われる各種大規模地震を想定した政府による総合防災訓練の一環として平成16年度から始まった。被災地域内で十分な医療活動が行えない状況を想定し、都府県域を超えて患者や医療チームを搬送する訓練で防衛省・自衛隊は初年度から参加している。今年度は昨年に引き続き南海トラフ巨大地震を想定。大分県・宮崎県・鹿児島県に津波による甚大な被害が発生したと想定し、空自固定翼輸送機C-130、輸送ヘリCH-47、陸自輸送ヘリCH-47が患者やDMAT(災害医療派遣チーム)などを鹿児島~新潟空港、空自新田原基地~海自厚木航空基地、大分空港~関西国際空港、大分スポーツ公園~松山空港、陸自高遊原分屯地~広島空港間でそれぞれ空輸した。
▽新田原~厚木間の空輸
 統合幕僚監部は空自新田原基地~海自航空厚木基地間で空自C-130による空輸を実施した。新田原基地にはSCU(広域搬送拠点臨時医療施設)が設置され、ドクターヘリで付近の病院から搬送された患者等をC-130で厚木に向かって空輸する訓練を行った。待ち受ける厚木では新田原側から逐次連絡が入り、空輸される患者の症状や年齢・性別を白板に書き込み搬送先の病院を決定する等受け入れ準備が着々と進む。車庫前には周辺自治体等の救急車が横一列8台並んでC-130の到着を待ち受けた。
 午後5時45分にC-130が到着すると、ストレッチャーを使い模擬患者(マネキン)を順次運び、各種医療行為を施したのち救急車に搬送し病院へ向かった。訓練終了後、DMATからは「一連の流れがとてもスムーズだった」、「昨年(9月に行われた神奈川県主催の広域医療搬送。陸自CH-47等を使用)に続き実践的な訓練が出来た」等、訓練を評価する声が相次いだ。(奥田壮太郎)

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