稲妻に浮かびし街にかつて棲み 鈴木芳江
新盆の読経の僧は同級生 谷 勝美
腰おとし忍び足して阿波踊 脇田登志子
香を焚き法然絵伝曝しけり 小田智佳
卓袱台に麦湯と富山の常備薬 小熊和子
潮騒の浜辺に確と虫の声 藤原恋水
杣小屋の屋根石照らす盆の月 宮本立男
客殿の広間に迷ぶ鬼やんま 岩城節子
夏萩の盛りと眺め門を入る 篠田初枝
追伸に病匂はす夜の秋 東 秀文
門火焚き我より若い父母迎え 氷川杜夫
捨畑の虫の声増し闇深む 立川美佳
老鶯や熊除け鈴とすれ違ふ 田中雅巳
喪服脱ぎ坪庭聞くつづれさせ 谷 勝美
石仏の蔭より蔭へ黒揚u 長尾花子
合掌の我が手の老いぬ門火焚く 三根香南
落暉今一村包む吾亦紅 鮎瀬 汀
選者吟
蓮池の風を夏行の堂に入れ 成川雅夫
(「栃の芽」誌提供) |