「いつも聞かれるのはトシのこと。でも、オレはいま現役最年長だとか、誕生日が来たら48歳になるんだとか、数えたことがないんだ。誕生日に何をするかって? 別に予定もない。普通に1日が終わるんだろうな、いつものように」
中日のベテラン・山本昌(47)は、こういってニヤリと口元をほころばせた。7月13日の巨人戦で先発し、今季4勝目をあげたときのこと。自身の持つプロ野球先発最年長勝利と、セ・リーグ最年長勝利投手となった。
記録をたどっていくと、40歳以上の勝利数でも工藤公康(西武、巨人など)の持っていた38勝とも並んだ。「そういうことをひとつひとつ書き出されると、すごい記録とも思えるけど、オレひとりでやったもんじゃないしね。みんなに支えられて、どうにかやってこられたんだ。これからどこまでやっていけるのか、自分でもわからない。みんなにその都度"ありがとう。今後ともよろしく"と頭を下げるしかないね」。
ある新聞で、有名な心理学者が「年を取っても、元気でやっていくためには教養と教育が必要だ」と書いていたのを読んだ。「オレは教養も教育も中途半端でここまできてしまったが、よくよく読んでみると、教養というのは"きょう用がある"という意味。教育は"きょう行くところがある"ということだそうだ。えらい人はいいことを考えるものだ。40歳を過ぎてダラダラと日を送ってしまってはいけない。何かやることがある、行くところがあるというふうに、毎日自分に課していくことが必要なんだと思う。オレもそういう気持ちを忘れないように、今後も生きていきたいものだ」。
つまらない質問を承知の上で「何歳まで投げ続けられますか?」と聞いてみた。「オレを使ってくれるチーム、監督がいれば、その間は自分なりに頑張る。"行け"といわれれば、投げるだけ。それだけだよ。トシのことなど考える必要はないと思う」と、48歳とは思えない若々しい笑顔で話してくれた。
この分なら来季も、2年後も元気いっぱい、マウンドにたつことだろう。高木守道監督は「若い連中には"生きた手本が目の前にあるんだから、精いっぱい真似して、いい面を盗み取れ"といってある」と話している。
通算216勝(7月22日現在)は、もちろん現役最多(両リーグ16位)。大先輩の杉下茂さん(88)=中日、実働11年で215勝=は「中日から私の勝ち星を越えてくれる投手が出て、本当にうれしい。丈夫に生んで育ててくれた両親に感謝して、50歳までも、いやそれ以上、投げ続けてほしい」と話してくれた。
定年退職した途端、どこが痛い、ここが苦しいと病院通いを始めるやからが増えている昨今「オーバー40」どころか「オーバー50」を目指して投げ続ける山本昌投手。8月11日の誕生祝いは、何をさて置いても盛大にやってもらいたい。ファンは拍手喝采。「みんなで一杯やって、お祝いしよう」と、いまからその日を待ちわびている。 |