陸上自衛隊は1月15日から2月22日まで、米国カリフォルニア州で米海兵隊と、島嶼部防衛対処能力の向上を目的とした実動訓練「アイアン・フィスト(鉄拳)」を実施した。「鉄拳」は平成17年に始まり今回で8回目。陸自からは、尖閣諸島を含む南西地域を担任地域に持つ西部方面隊から、島嶼防衛を主任務とする西部方面普通科連隊(西普連)を主体に、総監部の幕僚など約280名が参加した。米側の主体は第1海兵機動展開部隊隷下の第13海兵機動展開部隊(13MEU)。陸自の参加要員が昨年比100名増、水路及び空路で敵占領地域へ上陸し制圧する訓練を2度(前回は1度)行うなど、過去最大規模となった。上陸訓練では西普連がV—22オスプレイに搭乗、空路上陸を行った。同型機に自衛隊が訓練で搭乗するのは初。
陸自部隊は米国入国後、訓練準備を経て、2月3日までは指揮機関訓練及び、水路潜入訓練・LCAC(エア・クッション型揚陸艦)/LCU(汎用上陸艇)訓練・ヘリキャスト訓練・戦闘射撃訓練・統合火力誘導訓練(※注1)の各機能別訓練を行った。指揮機関訓練では、「鉄拳」後半に行われる総合訓練(上陸訓練)の訓練計画を担当する日米の幕僚が情報・意見交換を重ねて当該計画を立案した。今回は陸自の参加幕僚の人数が前回比で大幅に増えている。また、機能別訓練では主要訓練地キャンプ・ペンデルトンの北東150キロに位置する29パームス(※注2)において、小隊、中隊、大隊規模の日米共同の戦闘射撃訓練と、統合火力誘導訓練を行っている。
これらを経て、2月7日からは、2度に渡る総合訓練(上陸訓練)がサンクレメンテ島、C・ペンデルトンで行われた。西普連中隊主力約50名は、9日のサンクレメンテ島上陸訓練ではCH—532機、13日のC・ペンデルトン上陸訓練ではV—22オスプレイ4機に分乗して、上陸地点の沖合いに進出した米強襲揚陸艦ボクサーから発鑑し、空路上陸を行った。米側の13MEUは、どちらの訓練においても、自衛隊が購入を検討している水陸両用車AAV7に分乗し水路から上陸を行った。空路及び水路から上陸したこれら人員に加え、LCACを使用し水路から車両が上陸(陸自は高機動車やパジェロ、大型車が参加)、日米が連携して島嶼部を支配する敵を排除、地域を確保するシナリオで、2度の上陸訓練を完遂した。
君塚栄治陸幕長は2月21日の会見で鉄拳の成果を問われ、「水陸両用作戦の資を得ることを目的に実施しましたが、十分にその目的を達成することができたと思います。今回は特に充実した指揮機関訓練を実施するとともに、日米間の実射を含んだ統合火力調整の訓練等を行うことができました」などと訓練を講評している。
「鉄拳」は、今年度2度目の陸自—米海兵隊の米国での実働訓練だった(※注3)が、水陸両用作戦において、米海兵隊と自衛隊の相互連携の強化、及び、米海兵隊が持つノウハウを導入するため、国内外の様々な訓練や研修の機会を通じ努力が続けられている。南西地域をはじめ島嶼防衛の重要性が高まる中、自衛隊の水陸両用作戦遂行能力は着実に向上している。
※注1 攻撃目標へ発煙弾を発射、そのマーキングに向け統合火力(航空火力や艦砲)で射撃する訓練
※注2 米海兵隊空地戦闘センター。「鉄拳」初使用
※注3 昨夏に米国・北マリアナ諸島などで陸自—海兵隊の実働訓練が行われた |