シリーズ開始にあたり
「人生100年時代」到来!
我が国は、先進国で「少子高齢化」の先頭を走っており、ロンドン・ビジネススクール2人の教授の著「ライフ・シフト」が「100年時代の人生戦略」と邦訳されて以来、「人生100年時代」の言葉自体も定着している。
だが、この「人生100年時代」が自分の人生にいかなる影響を及ぼすかを理解し、その準備にとりかかっている人はそう多くはないだろう。
では、私達・自衛官にとってはどのような意味を持つのだろうか。任務最優先で日々の職務に全力を尽くす自衛官は、「人生100年時代」という言葉を察知はしても "我が事" とは思わず、仮に "我が事" と思っても「遠い将来のこと」であり、「今の自分には関係ない」と思っていることだろう。
昨今、ようやく自衛官の定年延長が実現しつつある。しかし、1〜2年程度定年を延長しても、自衛隊の特性上、一般官僚や民間人に比して「若年定年」ということには変わりない。
さて、長い自衛隊生活を終えて定年を迎える自衛官は、これまでとは全く違う「第2の人生」でカルチャー・ショックを感じる人も少なくない。中には、その変化に順応できず、戸惑い、悩み、岐路に立つ人もいる。
それでも平成の前半頃までは、再就職をして7から8年(我慢して)勤務すれば年金受給年齢に達し、その後は悠々自適な余生(老後)を送れた。
「定年後も "長い" 人生は続く!」
現在は事情が少し違う。民間企業の定年延長や年金受給開始年齢の引き上げの中、少数の恵まれた人以外は、再就職を全うしても、「第3の人生」を歩まなければならない。
今度は、官の支援は得られず、「自己開拓」しかない。もはや自衛隊の経験も階級も特技も通じず、絶望感さえ感じるその困難さは体験した者でないと理解できないだろう。
「人生100年時代」になると、また少し事情が変わるはずだ。マラソンに例えれば、自衛官は、人生の折り返しを過ぎたあたりで定年を迎え、人生の後半が益々長くなる。中には、「第3の人生」どころか「第4の人生」を歩む人も出てくる。つまり、若年定年の自衛官は「マルチ・ステージ人生」を歩むことが宿命づけられている。
そのような自分の将来の人生をいつから意識し、何を準備すればいいのだろうか。また、現在のような就職援護態勢で十分なのだろうか。
「人生100年時代」を迎え、 "若年定年の自衛官が退職後の人生をいかに過ごすか" はもはや各自衛官個人に課せられた問題ではなく、自衛隊組織の問題としてとらえるべきと考える。しかし、最も大きく変わることが求められるのは自衛官ひとり一人であることには変わりない。
本シリーズは、「定年後も "長い" 人生は続く」ことをすべての自衛官が "我が事" として自覚し、必要な準備を始めてほしいとの願いを込めて執筆するものである。
開始にあたり、紙面をご提供いただいた「防衛ホーム」に感謝申し上げ、毎月1回、約1年間の予定でシリーズをスタートする。請うご期待!
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