人類が新型コロナウイルス感染症と戦っている中で、7月23日、東京2020オリンピックが開会式を迎えます。感染拡大を避けるため1年間延期したオリンピック。
6月11日から13日にかけて英国・コーンウォールで開催されたG7コーンウォール・サミットに出席した菅総理は、「G7各国の首脳に対し、安全・安心な東京大会の開催に向けて、万全な感染対策を講じ、準備を進め、世界のトップ選手が、最高の競技を繰り広げることを期待し、各国に強力な選手団を派遣して欲しいと呼びかけました。」(外務省HP G7コーンウォール・サミット(概要)6月13日付けより)
そして、サミット最終日の13日に発表された「G7カービスベイ首脳コミュニケ」の最後には、「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催することに対する我々の支持を改めて表明する」との一文が明記されています。
オリンピックの主催者自体はIOCであるにせよ、日本は開催地として、日本国民のみならず来日する選手・オリンピック関係者等を含む全ての人々を、オリンピック開催を由来とする感染拡大から守る国際的責任があります。
これまでさまざまな論議や懸念等が投げかけられて来た経緯のある開催決定は、日本がこの責任を果たすことが出来る確信、明確な根拠に基づく確信があることを内外に宣明したことにほかなりません。
開催が決まった以上、責任を政府・組織委員会等だけに任せているわけにはいきません。
東京オリンピックは、正に日本の威信をかけた国家的な一大スポーツの祭典。変異種拡散も続く中、人流増は必至。しかし、何としても成功させなければなりません。
私たちは、あらゆる場面において、一層主体的に新型コロナウイルスの感染防止に取り組んで行く必要があります。私たち国民一人ひとりが、G7サミットで菅総理が表明した国際的責任を果たす責任を負っていることを忘れてはなりません。今回の東京オリンピックの成否如何は、ひとえに私たち日本国民の一致団結・感染防止行動にかかっていると言っても過言ではありません。
また、政府が鳴り物入りで推奨して来たホストタウン構想。全国で528もの自治体が、ご縁のある国や地域のホストタウンとして、そのオリンピックチームの事前合宿等を受け入れ、市民と積極的な交流を図る等の準備をして来ました。しかし、コロナ禍のため、今や多くの自治体が、受け入れを取り止めるに至っています。真にやむを得ない決断です。
同時にこうした中にあって、引き続きホストタウンとしてオリンピックチームを受け入れてくださる自治体の皆さんの厚意と覚悟、そして感染防止のための懸命な努力と多大な負担に思いを馳せ、寄り添い・応援して行こうではありませんか。隊員・家族の皆さん、本紙読者の皆さんには、それぞれに関係のある、あるいは身近なホストタウンを応援して行ってください。
ホストタウン滞在中、オリンピックチームは感染防止のため厳しい行動制限を強いられます。しかし、実りの多い事前合宿と地元の皆さんとの温かい思い出や応援を力に、万全のコンディションで本戦に臨めることを願って止みません。
なお、NHKが「世界を応援しよう!」(https://sports.nhk.or.jp)という大変興味深いプロジェクトを立ち上げています。「応援は、その国・地域の人ならだれもが知っている言葉であり、リズムであり、心。今こそ、200を超える国と地域の人々が、互いにエールを送りあったなら、世界はもっと近くなる。世界はきっとひとつになれる」として、それぞれの言葉で、約2分間の応援メッセージのビデオを作成しています。出演者は、その国・地域の出身で日本に在住している皆さん。是非、ご覧になってください。
筆者が関係している東ティモールは、防衛大学校等に留学している若者が、東ティモールの伝統織物「タイス」姿で、とても明るく元気に応援しています。ちなみに、東ティモールのホストタウンは、長野県伊那市。白鳥 孝市長を先頭に、在東ティモール日本大使館、駐日東ティモール大使館の皆さんの協力を得ながら、陸上選手男子1名(5000m/10000m走)、水泳選手男女各1名(いずれも50m自由形)を含むオリンピックチームの受け入れ準備は大詰めを迎えています。また東ティモールから一時帰国した機会を活かし、事前合宿の期間を通じて同国の公用語であるテトゥン語通訳のボランティアを買って出てくれている方もいます。
さまざまな皆さんの、さまざまな形での一致団結があります。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事 |