防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1046号 (2021年3月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第72回>

陸軍の下克上と 国家のガバナンス

 司馬遼太郎は学徒出陣により陸軍戦車第十九連隊に入隊、23歳のとき陸軍少尉で終戦を迎えた。「こんな愚かな戦争を日本はどうしてやってしまったのか」、「昔の日本人はもう少しましだったのではないか」。その時の痛切な思いが、後年歴史小説を書く原点となった。「いわば23歳の自分への手紙を書き送るようにして書いた」という数多くの歴史小説は、代表作『龍馬がゆく』、『国盗り物語』、『坂の上の雲』、『花神』、『世に棲む日日』をはじめとしてベストセラー、ロングセラーとなった。戦後、該博な歴史的知識を駆使して、歴史人物を肯定的に描く司馬の作品は日本人に歓迎され、国民作家と評価されて平成8年に没した。
 司馬は明治の国家を非常に高く評価していた。曰く、明治国家は清廉で透き通ったリアリズムをもっていた。維新を躍進させた風雲児・坂本龍馬、国家改造の設計者・小栗忠順、国家という建物解体の設計者・勝海舟、新国家の設計助言者・福澤諭吉、無私の心を持ち歩いていた巨魁・西郷隆盛、自己と国家を同一化し、常に国家建設を考えていた大久保利通、これらの明治の父たちは偉大であった、と。
 こうしたすばらしい明治を生んだ日本人が、昭和には愚かとしか言いようのない大東亜戦争をおこし、国を滅ぼすに至ったのはなぜか。司馬は、日露戦争後から大東亜戦争の敗戦までの40年間は日本史としての連続性をもたない「異胎の時代」であったと結論した。特に昭和元年から昭和20年までは異常であり、日本という森の国に魔法使いが杖をポンとたたき、森全体を魔法の森にしてしまったと思われるほど異常だったと。
 司馬が昭和を明治と異なる異常な日本だったとみる感情(司馬史観)は理解できるとしても、事実は連続した国家だった。昭和の最大の特色は陸軍によって国家が事実上支配されたことにある。そして陸軍は佐官級、課長級の中堅軍人官僚によって支配され、幹部による統制のきかない下克上の世界となっていた。この下克上こそは、昭和の国家が明治と連続していることを示す。明治国家は、高杉晋作が挙兵して長州藩の実権を握り、藩主実質不在の革命的政権を樹立したところにルーツがある。この長州が薩摩と同盟して幕府を倒す。明治の陸軍は長州閥が支配した。陸軍の下克上は、明治国家をつくりあげた志士たちが没した昭和になって顕在化した。昭和の時代、結果さえ良ければ政府や天皇の言うことなど聞かなくてよいという空気が陸軍を支配していた。
 徳富蘇峰は『終戦後日日記』に敗戦の原因として記す。「陸軍省は関東軍その他の出先将校によって動かされ、内閣は陸軍省によって動かされ、かくの如くして首相も何事たるや知らず、陸軍大臣、参謀総長も半分くらい知っていても他の半分は知らず。満州事変から大東亜戦争まで、下克上でもちきったのである。戦争に一貫たる意志がなく、統率力がなかった」。
 戦前の昭和は著しく国家としてのガバナンス(統治力)を欠いた時代だった。陸軍が政府を引きずりまわし、国家として機能不全に陥っていた。国家を統べるのは天皇しかいなかったが、天皇は戦前も君臨すれど統治はせぬ立憲君主であり、戦後の象徴天皇と実質的に変わりはなかった。
 戦後も各省あって政府なしと言われ、国家のガバナンスの弱さは継続した。官邸に権力を集中させるといった改革が行われてきたが、民主主義国としての国家のガバナンスはなお課題である。
(令和3年3月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


ゲッキーの突撃レポート
第1回

 防衛ホーム公式キャラクターのゲッキーが元航空自衛官の宇都隆史防衛副大臣に「安全保障と外交」について話を伺う連載機会を頂きました。今回は第1回目です。

ゲッキー)今日は、外務省にお邪魔して、元自衛官(航空)の宇都隆史(うとたかし)外務副大臣に突撃レポートに来たよ。こんにちは宇都副大臣、さっそくだけど外務省って何をしてるの?

宇都)いらっしゃいゲッキー。外務省の主な仕事はね、日本の国民が豊かで安全な生活ができるように、日本の国益を守ることです。そのためには、平和で安定した世界を作るため、「紛争、核兵器、テロ、感染症、環境問題」といったみんなに関わる問題の解決や,世界経済の維持発展のための取組を国際社会と連携して行うんだよ。また、日本の伝統文化を海外に紹介したり、人材交流を通してお互いの理解を深めたり、外国に住む日本人の安全を保護したりしているよ。

ゲッキー)「守る」って部分は、自衛隊と少し似てるね。自衛隊と協力したり、一緒に仕事したりすることはあるの?

宇都)もちろん、あります。「防衛と外交は表裏一体」と言われ、海外派遣するPKО部隊や、日米同盟関係等に関しては外務省も自衛隊(防衛省)と一緒になって仕事をしているよ。また、世界で活躍する防衛駐在官(1佐〜3佐)は外交官の一員として、海外の大使館等で勤務しているんだよ。現在70名(陸33、海19、空18)の防衛駐在官が外交の現場で活躍しています。

ゲッキー)へぇ〜意外と多くの自衛官が大使館等で働いてるんだね。外務省は全体でどれくらいの人が働いているの?

宇都)定数24万人の自衛官と比べると、とても少なくて、約6300人(海外‥約3500人)の外交官がいます。そのうち女性が約1700人で全体の3割を占めています。また、現在19名(陸8、海6、空5)の自衛官(2佐〜1尉)が防衛省から外務省に出向して勤務しているんだよ。

ゲッキー)まさに女性が活躍している職場なんだね。しかも、自衛官が外務省の本省で働いてるなんて初めて知ったよ。僕も外務省で働いてみたくなっちゃった!英語が得意じゃないとダメかな?

宇都)仕事の性質上、英語を使って海外の方と調整する機会は多いので、ある程度の英語能力は必要だね。でもそれ以上に、海外の人と話をするには、国際社会のルールや条約、日本の安全保障政策や制度についてもしっかりと勉強しておかないといけないね。

ゲッキー)そっか、海外の軍人さん達と議論するにしても、自衛隊のことや海外で起きているニュースを知らないと、会話についていけないもんね。宇都副大臣、これからもっと教えてください!

宇都)はい。ではゲッキー、これから安全保障と外交について、一緒に勉強して行きましょう!

 宇都隆史(自由民主党参議院議員、現外務副大臣、元航空自衛官)昭和49年生まれ、鹿児島県出身。平成10年に防衛大学校卒業(第42期)、航空自衛隊入隊。要撃管制官として三沢、稚内、春日基地等で勤務した後、平成19年に政治の道を志して退官。平成22年自民党比例区で参議院議員に初当選。日本に生まれたすべての国民が「生まれ変わるなら、また日本がいい」と思える国造りのために日々奔走している。

 ★ゲッキーから宇都副大臣に聞いてもらいたい質問を受け付けています。ゲッキー質問係まで。(編集部)


第2地対艦ミサイル連隊
26年ぶりに本部管理中隊が優勝
 第2地対艦ミサイル連隊(連隊長・小橋史行1陸佐=美唄)は、駐屯地体育館において、「令和2年度連隊銃剣道競技会」を実施した。
 本競技会は、各個の戦闘能力及び闘争心の涵養を図るとともに、部隊の団結の強化及び士気の高揚を図る事を目的とし「中隊対抗の部」及び「個人の部(幹部・陸曹、陸士、新配置隊員及び女性自衛官)」により実施した。
 今回は、コロナ禍の特性を踏まえ、選手は透明シールドマスクを装着するとともに、会場の窓を換気のため常時開放する等、その対応に万全を期した。
 また、今年度は銃剣道への関心を高めるため新配置隊員と女性自衛官の部を新設した。選手たちは、屋外と変わらぬ室温の中、中隊の勝利と個人の名誉を懸け熱い戦いを繰り広げた。
 競技の結果、「中隊対抗の部」において本部管理中隊(中隊長・元流3陸佐)が10月の武装走競技会に引き続き優勝した。平成6年以来26年ぶりの優勝だ。優勝中隊の監督で個人戦でも第1位の成果を収めた友廣2陸曹は「優勝できてうれしい。今回の勝因は中隊の団結です。皆の応援が選手の剣を5センチ伸ばしてくれた。中隊皆で獲得した優勝です」と息を弾ませ、満面の笑みで語っていた。
 表彰式において、連隊長はそれぞれの成果に対する賛辞を述べ、競技会を終えた。

第4特科群
 第4特科群(群長=徳留貴弘1陸佐=上富良野)は、1月28日、上富良野演習場において「令和2年度群冬季戦技競技会」を実施した。
 本競技会は、部隊機動、アキオ曳行及び個人機動により、積雪寒冷地における機動能力の向上を図るとともに、競技を通じて、部隊の団結及び士気の高揚を図ることを目的として実施された。競技開始にあたり統裁官(徳留群長)は「団結して勝利を追求せよ」「健康管理・安全管理を万全にせよ」の2点を要望し、競技に参加した部隊及び隊員は、日頃の訓練成果を遺憾なく発揮し所期の目的を達成した。

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