なつかしき雨音春の来りけり 小川淑子
甚句聴き初切を観て花の宮 小熊和子
今日花見明日はゲートボールして 大平光枝
鴎連れ観潮船の戻り来し 脇田登志子
見上ぐれば花に見られてゐる思ひ 井出かへい
もの忘ればかり多くて春炬燵 故 戸部弘美
被災せし弘道館の梅咲きぬ 西無左夫
山迫る鎌倉古道の鯉のぼり 尾野千惠子
花散りてはるかと思ふ昨日かな 米田ふさゑ
色違へ背山妹山笑ひそむ 大室 猛
老いてなほ化粧費嵩む春の旅 人見冬菜
村十戸揺がし響く雪解川 佐藤牛歩
義仲寺の池に亀浮く彼岸かな 丸岡泥亀
その中に祖母の晴着の吊し雛 佐賀あかり
チューリップお絵描き帳をはみ出せり 山室宏美
芹摘むや遠山にまだ白きもの 若松芳明
選 者 吟
初花を促す朝日ぬくからず 成川雅夫
(「栃の芽」誌提供) |