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   2006年5月1日号
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統合運用 急変事態で効果的対応
<先崎一統合幕僚長に聞く>
長官の命令・指示の迅速化
初代統合幕僚長としての職責、抱負などを語る先崎陸将(右は本紙 所谷尚武)
 統合幕僚監部が、3月27日発足した。自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの防衛庁長官補佐の一元化、不審船や領域侵犯等の急激に拡大する恐れがある事態に対し、また防衛庁長官の情勢判断や意思決定および命令指示の発出の迅速化を図る意味でも、かねてから早期の実現がまたれていた。昭和29年33人の陣容で統合幕僚会議として発足したが、今回長官直轄となった統合情報部を含めると約700人となり内局と同規模になった。初代統合幕僚長となった先崎一陸将は、発足記念式典に際して「責務の重要性に思いをいたし、国民とともにある統合体制を目指す」と述べたが、改めてその抱負をうかがった。
(聞き手 本紙 所谷尚武)

 −初代統合幕僚長ご就任おめでとうございます。というよりか、ご苦労様ですと申し上げたいと思います。計算式でみましても幕長の3倍の仕事ということになりますね。
 先崎統幕長 そうですね。今までの調整という仕事と違って陸海空の運用の全部の責任を持つという立場に変わりました。
−前任者がいないので全部がオリジナルになりますね。
 先崎 そうなんですよ。まして運用も陸のことしか知りませんから海空の運用も勉強しておかないといけないと思っております。ありがたいことに各幕長が非常に前向きに協力してくれています。
−統合運用というのは、以前、当時の石破茂長官のときに海上自衛隊の護衛艦に野戦病院をつぎこんだらそれは統合運用だよ、と聞きました。
 先崎 統合運用というのは、ある共通の目的の達成のために陸海空の持っている力をいかに効率的にかつ効果的に活用して任務の遂行に寄与するかというもの。その方法もたとえば1人の指揮官の下に陸海空の部隊を編成するやり方もあるし、指揮系統は3人別々で、調整機能を充実したものもある。スマトラ方式ですね。去年の大津波でもそうやって、協同という形ですが大きい意味で言う統合運用を経験しました。
−護衛艦からヘリを飛ばしましたね
 先崎 護衛艦を海上におけるベースにしながら、ヘリの部隊が被災地に飛んで行き、そして終わったらまた艦に帰ってくる。あれが陸海が一体となった統合運用の前例とも言えます。
−統合運用というのは突然決まった印象がありますが流れはあったんですか
 先崎 先の大戦で航空機が登場して以降、作戦が立体化してきた。そうするともう陸海空は統合運用というのは常態だというような流れがずっと続き、それが今日に至っている。もちろん自衛隊発足以来、制服の先輩方にとっても、軍事的観点からは当然それが必要だということで、それぞれ熱い思いをかけながら取り組んでこられたという長い歴史もあるわけです。
−スタートはしたが今からが本当の始まりだと思います
 先崎 陸海空の統合運用というのは常態という流れのなかで平成10年4月に当時の中谷元防衛庁長官からの指示をいただき、それから本格的に検討が始まりました。ということで今日まで約4年かけてまいりました。早いことは早いですね。とにかくやろうということです。
−海や空の方も。まるっきり新しい仕事ですものね
 先崎 そういう意味では、一日一日が新しい発見ですね。問題点も含んでそういう風な感じですね。非常にチャレンジングな、全て新しいものに挑戦していくという気持ちをずっと持ち続けようと思ってます。
−統幕長は式典の中で、統幕が発足したときは50人だったのが今500人になったとおっしゃっていましたが
 先崎 統合幕僚監部、もともとは統合幕僚会議は陸海空幕僚長で構成していたもので、そこを支える統幕事務局が幹部定員33人、現在は500人ですね。
やっぱり統合幕僚長を支える幕僚組織として、運用をつかさどる必要なスタッフが全部そろっている必要があるということでJ1(総務)、J2(情報)、J3(運用)、J4(後方補給)、J5(防衛計画)という機能に加えて、指揮通信システムを担当するJ6という新しいスタッフを加えてやって行きます。
−指揮通信というのも、陸海空の周波数なんかはバラバラだから今は一緒にできないですね
 先崎 今はそうですが、それぞれ工夫すればできるわけです。

各幕で運用支援を

−国民もマスコミもいま統幕のほうに目を向けています
 先崎 新しいものには関心が高いのではないでしょうか。それと、ちょうど海外に派遣している派遣部隊も全部統幕が受け持つということになりますから。インド洋もイラクもゴランもです。
−命令系統はここから各幕にいって
 先崎 ここから陸海空にいってメジャーコマンドを通じて流れたり。若干違うのですが、例えば陸ですとここからストレートにイラクの派遣部隊に、要するに長官直結部隊という形をとっておりますので。で、海空は総隊や艦隊、そこを通じて。そこも例えばクウェートに航空自衛隊のC−130の部隊というのは、府中にある航空集団司令官が、海であれば横須賀の自衛艦隊司令官のもとに派遣部隊がある。こういうことでちょっと違います。ゴランは長官直轄部隊だから直接統幕でやります。
−命令系統は統幕長から各幕長にいって、ずっといくわけですよね。ストレートに部隊にいって、各幕僚監部を通さないでですか?
 先崎 もちろん各幕僚長は運用にあたって特に後方支援だとかそういうところについては、各自衛隊の現存の組織を使ってやるということですので、そこからも何かの措置を命じる。そこらへんがパックになって部隊に命令が下達されていくというかっこうなので、運用の支援(統幕の支援)を各幕がやると。だから運用支援機能は各幕に残っています。
−統幕から総隊司令官だとか府中の方に直接命令がいくわけですか?
 先崎 ご存知のように、自衛隊の指揮系統というのは、総理大臣がトップで総理大臣からそれを受けて長官がおられるんですね。長官の命令が各部隊長、要するにメジャーコマンド、部隊長に直結しているわけです。例えば陸でいいますと、陸の各方面総監に直結している。そこを今までは陸幕長が長官を補佐する立場であったことから事実上は陸幕を通じてということになっておりましたが、今度それを統幕がするということになります。
−長官、即、統幕ということですね
 先崎 指揮系統は空海も同じように厳密に言うとすべてそういうようなことになります。それを一元的にこちらが支える立場ということです。
−まさか陸海空の人事もするのでは?
 先崎 人事権は各幕僚長が持つ。ただ、統合運用という観点から必要な人事上のニーズは各幕僚長にこちらから必要な人材を要請することも必要かと思います。

国民の期待に応える

−統幕の将来像はどのように考えていますか
 先崎 私はいつも言っているのですが、陸海空50年培ってきたそれぞれの歴史・伝統・文化ですね。ここらへんのものを大事にしながら、そして実績を積み重ねながらそれぞれの持ち味、違いを大事にしながら持ち味を発揮するような体制をつくって他国にない自衛隊らしい質の高い統合運用体制、それがどういうものかは具体的にはまだいえないですが、それに向かって一歩一歩前進しながらやっていこうと思っております。
 いつも言っているんですが統幕だけでやるんじゃないよ、我々の主役は一人ひとり陸海空の隊員であり、各部隊だと、それを忘れないでやれということで、いかに全体をまきこみながら運用をしっかりやるかということです。
 また一つ補足しますと、BMDだとか大規模災害だとか、国際緊急援助活動が多くなっている。そういう事態に迅速に、かつ効果的に対応するためには統合というのは不可欠じゃないかと思う。さっきのスマトラの事例のようにですね、そういう時代にきている。時代の要請ですね。我々の長年の積み重ねによるPKOとか、自衛隊に対する国民の期待感、信頼。そこが一番重い。期待と信頼に応える。最終的には国民に密着した統合を目指していきたいと思います。(3面につづく)

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