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晴れの門出祝う |
<防大卒業式> |
小泉純一郎首相 訓示 |
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本日、防衛大学校卒業式が挙行されるに当たり、卒業生諸君並びに御家族の皆様方に対し、心からお祝いを申し上げます。
御家族の皆様には、見違えるように凛々しく成長された卒業生諸君の姿を前にして、感慨もひとしおと思います。
卒業生諸君を立派な幹部要員として育て上げた西原学校長を始めとする教職員の皆様方のご尽力に対し、心より敬意を表します。
日頃から防衛大学校に対して多大の御協力と御支援を賜っております御来賓の皆様に対し、この機会に心から感謝を申し上げます。
防衛大学校の卒業式は、内閣総理大臣として5回目の出席となりますが、出席する度に清々しく感じます。特に、本日の卒業式は、諸君が防衛大学校の第50期という区切りの卒業生であると同時に、私にとりまして総理大臣として最後の機会であり特別の感慨があります。
昭和28年4月、防衛大学校の前身、保安大学校は、第3次吉田内閣において、過去の反省と教訓を踏まえて、将来の国防を担う部隊指揮官を養成するため、陸、海、空を一つにまとめるべきであるという理念の下で設立されたものであります。
陸・海・空統合を基本とする自衛隊の運用が間もなく始まりますが、防衛大学校は、時代を先取りした理念に基づいて創設されたことが分ります。陸上自衛官に任官する諸君も、海上自衛官に任官する諸君も、航空自衛官に任官する諸君も、そして、本日の式典に出席している全ての諸君は、この理念に想いを致し、国家防衛の志を共有しながら、それぞれの分野で活躍することを期待します。
戦後60年、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」、この憲法前文を体して、我が国は、自由と民主主義を守り、平和のうちに豊かな社会を築いてまいりました。この過程では、世論の対立などにより、自衛隊にとって大変厳しい時代もありました。しかし、2万人を超える諸君の先輩は、国を守るという理念の下、様々な困難を克服してまいりました。
近年、透明性を欠く軍備拡大を進めている国も見られ、そうした国々の意図も影響して、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどに関する技術が無軌道に拡散する傾向が顕著であります。国際テロ組織も依然として活発に活動を続けています。これらの新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な実態への対応が、今日の国際社会における差し迫った課題となっております。
このような安全保障環境の変化の中で、日米安保保障体制は、わが国とアジア太平洋地域の安全と基軸として、引き続き重要な意義を有しております。
日米両政府は、共通の戦略目標を確認をし、抑止力の維持と地元の過重な負担の軽減の観点から、日米の役割、任務、能力、及び在日米軍の兵力構成見直しについて合意しました。現在、最終取りまとめに向けて、全力を傾注しているところであります。
カンボジアPKO以来10年余にわたる国際平和協力活動への参加、テロ対策として実施されているインド洋における給油活動、イラク人道復興支援における献身的な活動によって、わが国自衛隊は、日本国民の善意を実行する部隊として国際的にも高い評価を得ております。
この冬の豪雪時における被災自治体からの強い期待と要望にみられるとおり、国内の災害時における救難、復興支援活動においても、その実績の積み重ねにより、国民から信頼を得ております。
諸君においては、先輩の残した歴史を受け継ぐとともに、各自が一層研鑽して、国民の期待と信頼を更に高め、日本の発展のために、難局に敢然と立ち向かい、困難を乗り越える勇気を持って任務を遂行することを期待します。
諸外国からの留学生の皆さんには、今回の留学で育まれた友情の絆を大切にして、我が国との友好関係の架け橋となるよう、活躍されんことを希望しております。
終わりに、諸君の今後の御活躍と防衛大学校の益々の発展を祈念し、私の訓示と致します。
諸君、卒業おめでとう。 |
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額賀福志郎長官 訓示 |
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防衛大学校第50期、理工学研究科前期課程第43期、同じく後期課程第3期、総合安全保障研究科第8期の卒業式が挙行されるに当たり、まず、卒業生諸君に対し率直におめでとうと言いたい。また、今日の日を心待ちにされていたご家族の皆様に対しましても、心から御祝い申し上げます。
先日、卒業生諸君が学び、訓練し、遊んだ防衛大学に足を運び、校舎や体育館、宿舎などを初めて見学しました。
その日の小原台は、穏やかな晴天に恵まれ、風は凪ぎ、東の濃紺色の走水海岸の海面はまさに水を打ったような静かさでありました。はるかに房総半島が臨まれる一方、西の方は普通ならクッキリと見える富士山が霞んでおりました。
本校舎前と舎前通りの桜の木は、春の訪れを前に確実に芽吹き、ケヤキの木も来るべき新緑の季節のために着実にエネルギーを蓄えているようでした。
いかにも校庭の風景はのどかで平和そうで何事も順調に進んでいるように見えました。
しかし、諸君、私たちの目を世界に転じてみれば、連日、新聞やテレビのニュースでテロによる惨劇の報道が絶えたことはありません。大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散も私達が必死に止めているにもかかわらず、止まるところを知りません。鳥インフルエンザなど新しい
感染症の恐怖も世界を覆いつつあります。
一方、国内に目を転じた場合でも親が子を殺し、子が親や友人を他愛もなく殺傷する事件が続発していることは、人の世とは思えない光景であります。経済社会においても建築設計偽装事件やライブドア事件のように利益のためには手段を選ばないというやり方は、正しい資本主義経済の論理とは思えません。自らの経済活動が社会に役に立ち、自分も他人も恩恵を欲し、結果として生み出すというものが、我が国の世界に誇れる伝統的な資本主義経済の理念であったと思います。
いずれにしても、世界がグローバル化していく中で日本人として生きる背骨(バックボーン)と誇りと自身を取り戻し、前進していかなければなりません。
諸君は、こうした激動の国際社会の中で、日本がどう生きていくかを選択していく重大な局面を迎えているときに思い出の学舎を巣立ち、社会人として自立していくことになるわけであります。
私は諸君に二つの武器を送りたい。
一つは、寛容の精神であります。これは先輩や同僚から謙虚に学び、ライバルを追い落とすのではなく協調して目標に向かい、失敗や欠点を責め立てるのではなく、次のエネルギーのバネにするということ
であります。
もう一つは、進取の精神であります。国際的にも広い視野を持って世の中の流れを見極め、改革にチャレンジし、新しい道を切り開く情熱を持とうということであります。
2001年に発生した米国の9・11テロ事件以来、大量破壊兵器や弾道ミサイル拡散など新しい脅威が起きている安全保障環境の中で、我が国は、自衛隊の統合運用体制を強化するため、統合幕僚監部を新設し、自衛隊の能力を向上させようとしています。
また、日米安全保障体制は、我が国の安全とアジア太平洋地域の安全のために重要な意義を有しており、自衛隊と米軍の役割、任務、能力及び在日米軍の兵力態勢の見直しを行っています。
現在、自衛隊は、イラクの国家再建に向けた取組への協力を行っております。私も昨年12月に、イラク及びクウェートを訪れ、隊員の活動を視察致しました。皆、厳しい環境にもかかわらず、高い士気と規律を保ち、活動に励んでいる姿を見て感動を致しました。私は、自衛隊の活動が、イラクの人々をはじめ、広く内外から高い期待と評価を得ていることを確信致しました。
残念ながら、防衛施設庁入札談合事件や秘密情報流出事案などの不祥事については、誠に遺憾であり、防衛庁として深く反省すべきものと考えております。現在、事実関係の徹底的な究明と再発防止策の策定に全力で取り組み、一日も早く防衛庁に対する国民の皆様の失われた信頼を回復してまいる決意であります。
本科課程を卒業する諸君は、教養科目の他に、防衛学や千時間を超える訓練といった幹部自衛官として必要な教育時間数も多く、一般大学の学生以上に頑張ってきたこともあり、本日ここに晴れて卒業の日を迎えたことは、誠に感無量であろうと考えます。今後も不断の精進を重ね、堂々たる幹部自衛官として大きく成長されることを切望致します。
理工学研究科の課程を卒業する諸君は、本校で習得した専門的な知識、能力を生かし、自衛隊の技術分野の近代化と質的な向上に貢献されることを期待します。
安全保障研究科の課程を卒業する諸君は、ここで身につけた知識、能力を、益々、多様化、国際化する自衛隊の任務に活かしていただきたいと考えます。
留学生諸君は、言語、習慣の違いを克服して、立派な成績で本日卒業の日をむかえられましたことにあらためて敬意を表し、心から御祝い申し上げる次第でございます。諸君が、我が国での経験を糧として母国において大成され、また、本校で培った友情と信頼を基に、貴国と我が国との友好協力関係をより一層推進するための架け橋となり、さらにアジア地域の安定と繁栄のために大きな役割を果たされることを心から希望します。
最後になりますが、4年間にわたり立派な幹部自衛官要員を育て上げた西原学校長をはじめとする教官・職員の皆様方に敬意を表するとともに、卒業生の諸君の一層のご活躍とご発展を祈念いたしまして私の訓示といたします。 |
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平川裕弘 東京大学名誉教授 祝辞 |
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この良き卒業式にあたり古歌を引いて御挨拶といたします。
とれば憂し とらねば物の数ならず 捨つるべきものは弓矢なりけり
本学出身の皆さまは武力と関係する。「弓矢」を実際に使えば、人を殺し「とれば憂し」の立場に立たされる。しかしもし武器をとらねば「物の数ならず」。国防の決意なき国は、他国と通じる内外の勢力により心理的に支配され、人の数にならない。その矛盾の悩みが「捨つべきものは弓矢なりけり」武器は捨てたいものだ、という呻きとなりました。
しかし武器は捨ててすむのか。戦後60年我が国は自衛力と同盟国の武力によって護られてきました。21世紀世界では一国平和は不可能です。ではなぜ1946年憲法を改正し軍隊をきちんと認知しないできたのか。それは「とれば憂し」という懸念が常に言われたからです。だが備えがなければ相手の思うままにされる。それで万一に備え、自衛隊があり防衛大学校があり、国民も皆さまに期待しています。ただし戦前は軍の学校を出る者に対し、赫々たる武勲をたてることが期待されました。今日皆さまに期待するのは地球社会の平和維持力としての自衛隊であり、その任務が重く尊いことは、日本の首相が卒業式に必ず惨烈するのは本学だけであることからもわかります。
「戦ひ好まば国亡び戦ひ忘れなば国危ふし」と申します。昭和初年、軍部は独走し、軍国主義日本は「戦ひ好まば国亡ぶ」惨状を呈しました。戦いを好んではならない、しかしかといって戦いを忘れてはならない。釣り合いが大切です。ではそのバランス感覚を皆さま個人はいかに磨くか。積極的・能動的な本学卒業生は、敵を知り己を知る知的訓練を生涯積まれることを切望いたします。
昭和の軍人で範とするに足る人は誰か。自己研鑽を生涯怠らぬ立派な人はおりました。今村均大将の自伝は読まれた方もありましょう。私は昭和20年、硫黄島で米国大統領へ宛て立派な遺言を日英両文でしたため戦死した海軍草分けのパイロット市丸利之助少尉についてお話ししたい。市丸大尉は大正末年、練習飛行中墜落、3年病臥し、同輩に遅れ、悩みました。しかし和歌を学ぶなど修養につとめました。人生誰しも蹉跌はあるが、強制された休暇を善用したからこそ、市丸は軍に復帰するや予科練の初代部長として深い感化を与えました。市丸の歌、
紺青の駿河の海に聳えたる紫匂ふ冬晴れの富士
市丸は富士に日本の永遠を祈りました。皆さまも小原台から眺めた富士山を末永く心にとめ、裾野の広い、大らかな人格を築いてください。島国日本は古来外敵に蹂躙されることが稀でした。専制主義国の圧迫を蒙ることなく、私どもは精神の自由を失わず生きている。経済発展も嬉しいが、日本が東アジアで例外的に言論の自由を享受できたことを私はさらに誇りに感じます。この地球社会の自由を皆さまとともに護ることを誓い、祝辞といたします。本日はおめでとうございます。 |
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西原 正学校長 式辞 |
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防衛大学校本科第50期、理工学研究科前期課程第43期、同後期課程第3期、並びに総合安全保障研究科第8期の学生諸君は、本日をもって所定の全課程を修了します。ここに卒業式典を挙行するに当たり、私は本校の教職員一同と共に、諸君に対して心から祝意を表します。
本日はこの栄えある式典に、ご多忙の中を、小泉内閣総理大臣をはじめ、内外多数の来賓各位のご臨席を賜りましたことを誠に光栄に存じますと共に、心よりお礼を申し上げます。とくに小泉内閣総理大臣におかれましては、国会議員になられて以来、そして総理大臣ご就任後も、毎年欠かさず本卒業式にご臨席いただいておりますこと、また平成14年秋の防大創立50周年記念簡閲式にも観閲官としてご臨席いただきましたことばなどに対しまして格別の謝意を表しますと共に、総理のご臨席が、防大生並びに防大教職員にとりまして何ものにも代えがたい激励となりましたことも申し添えたく存じます。
本日の式典にご参列の、卒業する学生諸君のご両親ご家族におかれましては、ご子弟のご卒業をこの上なくお喜びのこととお察し致します。長い間のご支援とご理解に厚くお礼を申し上げる次第です。今後ともよろしくお願い申し上げます。さらにこの式典には、43年前に卒業された防大第7期生の方々をホームカミングデーとしてお招きしておりますが、これらの大先輩も若い後輩諸君の門出を祝福して下さっています。
本科卒業の諸君は、4年前の平成14年4月、それまでの高校生活とは全く異なる小原台にやってきました。そこには、規律正しい集団生活、学生間の厳しい上下関係、分刻みの日課など多くの戸惑いを覚えた筈です。しかし諸君はそれらの試練を見事に乗り越えて、組織の中で生き、組織を動かすことのできる人間として自らを鍛えました。諸君は、礼節、忍耐、自己犠牲、忠誠、名誉などの価値観を身につけて、本日に至りました。
これからは、国防にしろ、災害派遣にしろ、また国際協力にしろ、諸君は、それらを指揮する幹部自衛官としての強い責任感、また武器を扱う集団の幹部としての高い倫理観を維持してくれることを期待します。学生綱領にある「廉恥、真勇、礼節」は、武士道精神に合致する価値観で、諸君がこれからもみずからの道義的信条の支柱とすべきものです。
理工学研究科前期課程及び後期課程、並びに総合安全保障研究科を卒業する諸君には、それぞれの分野の研究において見事に所期の成果を収めたことに対して心から祝意を述べます。日進月歩する科学技術をいかにして国防に応用することができるかを研究することは一国の国防能力を維持し、高めるのに極めて重要です。またわが国を取り巻く安全保障環境の分析能力を高め、国防戦略や国防力の国際比較などをすることは、日本の安全にとって不可欠の研究作業です。
最後になりましたが、本科及び研究科で学び、本日卒業する、10ヵ国からの留学生23名の諸君には、祖国を離れて、忍耐強く、所期の目的を達成したことに心から敬意を表します。留学生諸君は、日本での経験を基に、さらに飛躍して祖国の防衛ならびに国際平和のために活躍する将校になってくれることを期待します。
卒業生諸君、遠くに富士山を仰ぎ、近くに大平洋を臨む「若人の城」での青春の思い出を胸に、世界に羽ばたく武人として、力強く生きてくれることを、我々教職員一同は祈っています。
諸君、卒業おめでとう。
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