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   2004年9月15日号
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富士の裾野で実弾射撃
平成16年富士総合火力演習
イラク派遣部隊装備品も展示
実戦さながらの総合火力演習(8月28日)
 「平成16年富士総合火力演習」が8月26、28の両日、東富士演習場で行われ、3万人を超える見学者が訪れた。
 28日午前10時すぎ、石破茂長官はじめ防衛庁・自衛隊の高級幹部や来賓、在日米軍関係者が畑岡地区の会場に到着。国旗掲揚、国歌斉唱に続いて、迫真の実弾射撃が始まった。203ミリ自走りゅう弾砲や多連装ロケットシステムなどの遠距離・特科火力が見事に標的に命中すると会場から驚きの歓声と拍手が沸き起こった。
 次いで、120ミリ迫撃砲や96式多目的誘導弾システムなどの中距離火力の展示のあと、普通科部隊が登場、89式装甲戦闘車からの機関銃射撃やイラク復興支援隊が現地で使用している軽装甲機動車も紹介された。
 最後に、90式戦車やヘリコプターなど全装備品を使って機動打撃力が展示され、迫力ある実弾演習を終了した。

富士本屋写真部
東富士を撮り続けて
佐藤欣一氏(写真提供)
滝ヶ原兵舎
歩兵の装具
女学生の射撃訓練

<論陣>
世界のテロが連携している
アルカイダとチェチェン集団の関係
 ロシアを"敵"としたチェチェン共和国の独立派武装勢力の激しいテロが各地で続いている。2002年10月にモスクワの劇場を独立派が占拠。ロシア連邦保安局の特殊部隊が突入した。そのとき人質の大半は解放されたが、部隊が使った特殊ガスで130人が死亡した。その事件を皮切りに03年12月にはチェチェン北西部ズナンメンスコエの行政庁舎付近でトラックが爆発、60人が死亡、04年2月にはモスクワの地下鉄で爆発、40人以上が死亡、5月9日にはチェチェン共和国の首都グロズヌイで開かれていた対独戦勝記念式典会場で爆発、カディロフ大統領が死亡した。8月24日、モスクワを離陸した旅客機2機が同時刻に爆破し、墜落、乗客90人(全員)の死亡が確認された。また、8月31日にはモスクワ駅近くの広場で爆発があり、通行人9人が死亡、50人以上が負傷した。そして9月1日、チェチェン共和国の北隣りにある、北オセチア共和国の下級学校(小中学校)に独立派テロ集団およそ30人が押し入り、あらかじめ体育館内に隠しておいた爆弾や武器を使って、始業式で集まっていた生徒、教師、父母など1,200人以上を人質にたてこもった。遂にはロシア治安部隊とテロ集団との銃撃戦で死者600人以上も出すという悲惨な事件が起きた。
 イラクでのテロ事件に衆目が奪われている間に、ロシアでもこうしたテロによる悲劇が続出していたのである。しかし、一部の専門家を除いて、ロシア対チェチェン両国の武力衝突や、その歴史的背景を詳しく調べようとしなかった。たしかにインドとパキスタン関係、アフガニスタン問題、イラクと米、露、英、仏、独などの諸国については調べもしたし、宗教、アルカイダなどまで深く知ろうと努力した。
 ところが、チェチェン共和国、オセチア国などについては「ああ、旧ソ連の出来事か」ぐらいの思いしかなく、より一層、調査してやろうという気には、あまりならなかったことは確かである。ロシア共和国南部の北カフカス地方に一人のアパール人シヤミーリーの名が残っている。"解放闘争の英雄"として18世紀末から19世紀にかけて大国ロシアと闘った男である。
 そして20世紀になって"第二のシヤミーリー"が現われた。チェチェン・イングーシ自治共和国(当時)の実権を握ったドウダエフ大統領である。
 チェチェン自治共和国は1936年に人口130万人の山岳小国家として誕生した。旧ソ連はチェチェン国の完全独立を認めず、大軍を侵攻させてチェチェン国の首都グロズヌイを占領、軍政下に置いた。自治共和国としたが、自治は名ばかりで、人民は苦しい生活を強いられた。あまりの弾圧にチェチェン武装勢力が立ちあがり、遂にはソ連軍を追い返してしまった。
 91年、旧ソ連が崩壊、ロシアが誕生した。それをきっかけにドウダエフ大統領は、「チェチェン共和国の完全独立」を宣言した。ロシアはチェチェン共和国に対して「ロシア連邦条約」の調印を迫った。ドウダエフ大統領は92年3月、旧ソ連傘下に入るのと同じ」と条約の調印を拒否した。
 94年末、ロシアは再び軍をチェチェン国に侵攻させ、首都グロズヌイや山岳地帯の重要拠点を占領し、2002年6月、チェチェン共和国を直轄国(準属国)の形とした。大統領は戦死したが、抵抗は続いた。チェチェン共和国は、ことし大統領選挙が行われたが、ロシア寄りといわれる人物が選出されたことに"独立派"が再び猛反発。「ロシアの指導者がチェチェンを悪化させている」と反ロシア闘争を激化させているのである。
 チェチェン共和国武装集団の闘争は独立に加えてロシア産石油のパイプラインや宗教もからみ日を追うごとに激しさを加えている。集団そのものの数は千数百人程度と見られているが、このところの闘いで"シンパ(志願兵)"が急激に増えているのと、特に夫をロシア軍に殺された婦人たちの"黒い未亡人"の存在が目立ってきている。航空機テロ、モスクワの地下鉄駅前広場爆破事件、そして、こんどの学校占拠でも"黒い未亡人"の姿が見える。また、チェチェン武装集団とイスラム原理主義者集団アルカイダとの連帯も明らかになってきている。世界中のテロがつながってきていることに注目しなければならない。

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