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スペーサー
自衛隊ニュース   1106号 (2023年9月1日発行)
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海自八戸システム通信分遺隊が初めて自主広報
宇宙、サイバー、電磁波への取組みも紹介
 八戸システム通信分遣隊(分遣隊長・鬼塚主税3海佐)は、青森地方協力本部(本部長・渡邉雄一1海佐)主催による6月4日(青森港「はまぎり」)及び6月24日(八戸港「おおよど」)の艦艇公開に併せ、また、7月15日及び16日の第2航空群(群司令・石川一郎海将補)主催の八戸航空基地サマーフェスタにおいても自主的広報活動を実施し、会場において延べ1652名が同分遣隊広報ブースに来場した。
 鬼塚3佐は「当分遣隊は平成14年に設立されたが、このような形での自主的広報活動は初めての取組みであり、来場者に通信部隊を理解してもらえるように周到な準備を心掛けた」と述べ、「モールス通信体験」、「磁石式電話通話体験」、「衛星通信電話体験」、「LTE回線を利用したTV電話体験」等を企画して来場者に実際の通信を体験してもらうとともに、海自の「宇宙」「サイバー」「電磁波」の新領域への取組み紹介、隊員との触れ合い等も実施した。
 来場者からは「新領域や情報戦への取組みが理解できた」、「艦艇や航空機の作戦を通信部隊が支えていることは知らなかった」等の感想が寄せられるなど、周到な準備が功を奏し、海自通信部隊で勤務する通信職域及び電子整備職域の認知度向上をはじめ高い成果が得られた。また、来場者から日頃の自衛隊の活動に対する感謝や労いの言葉が多数寄せられたことにより、広報活動にあたった隊員は今後の勤務に対するモチベーションの向上に繋げることができた様子であり、採用広報の苦労についても体感したことで、まもなく教育隊を修業して分遣隊に着任する新隊員をより一層大切に育てていきたいと気持ちを新たにしていた。
 なお、青森港に移動する機会を生かし、基地から離れた場所での通信所要に対応するための移動通信訓練を実施したが、鬼塚3佐は「非常に厳しい募集環境に少しでも貢献することで将来の人的基盤強化に繋げたいとの思いと、隊員に新たな負担をかけずに部隊練度の維持向上を図れないかとの思いを両立させることができた」と述べ、効率的な部隊運用を実施することができたことも今回の成果となった。
 「宇宙」、「サイバー」、「電磁波」に関する新領域分野の能力向上には、良質な隊員の確保、増勢が喫緊の課題であり、同分遣隊は今後も通信部隊の強みを活かすことで青森地方協力本部及び第2航空群と連携し、積極的に採用・広報活動に貢献していきたいとしている。

募集講話でリクルーター活動の意義を普及!
<海幕募集推進室>
 隊員自主募集強化期間を前に、海幕募集推進室は7月12日、「隊員自主募集のお願い!〜リクルート経験は "宝の山" !?〜」と題して、海上自衛隊幹部学校(学校長・江川宏海将)で勤務する職員に対して募集講話を行った。
 本講話は、海上自衛隊幹部学校の依頼により計画され、幹部学校で勤務する職員約50名に対し、約1時間にわたって実施した。講話者の海幕募集推進室長・目賀田1佐は、冒頭に、「現在の募集状況は "採用有事" といっても過言ではありません!」と参加者に募集状況の厳しさについて強調し、その上で現状を打開するため、隊員1人1人が募集対象者に自衛隊の魅力を伝える「隊員自主募集」の重要性について述べた。特に「リクルーター活動に関与することは、隊員自身が海上自衛隊の福利厚生や働き方等の紹介したいポイントを改めて考えることやPRにおけるコミュニケーション能力について見直す機会が得られる等、隊員にとっても "一石二鳥" 以上の学習効果がある」として、隊員自主募集活動の副次的な効果について強調した。講話の最後には、隊員自主募集に関し、一番大事なのは隊員が知人・友人を誘いたくなるような組織であることが根本であることを踏まえ、昨今、民間企業におけるチーム・組織論でも注目されている「心理的安全性」(チームメイトなど周囲の評価に怯えることなく、自分の意見や想いを発信するために必要な要素)の重要性について紹介した。
 参加した職員は、「募集の現状が非常に厳しい状況であることがひしひしと伝わってきた」や「他の人に勧めたくなるような職場環境を構築するのが非常に大事だと感じた」と感想を語った。海幕募集推進室は「一人でも多くの隊員にリクルーター活動の重要性を認識してもらい、募集対象者へ海洋立国の重要性や海上自衛隊の福利厚生をはじめとした多くの魅力などを伝えていくため、引き続きあらゆる機会を利用し、積極的に情報発信に努めたい」としている。

読史随感
<第132回>
神田淳

なお生きる武士道の道徳感覚

 日本は平安時代末期(12世紀中頃)から明治の始め(19世紀後半)までの約7百年間、武士の支配する国だった。その間生まれた武士の道徳規範が武士道である。武士道は平安時代「弓矢取る身の習い」として発生した。勇敢に戦う強い武士のあり方を基本とし、命よりも名を惜しむ武士の生き方が生まれた。強さと同時に情けを知る武士が理想とされた。
 武士道は江戸時代に武士階級の道徳規範として完成した。その要点は、義に生きる(利益は軽んじる)、恥を知り名誉を重んじる、戦場で勇敢に戦う、主君に忠義を尽くす、嘘を言わない、約諾は命にかけて守る、卑怯なことをしない、惻隠の情をもつ、切腹して責任をとる、などである。
 明治維新(1868年)後武士階級は消滅したが、武士道の精神は残ってむしろ国民全体に広がった。昭和の敗戦(1945年)後武士道の精神はほとんどなくなったが、完全に失われることなく、なお日本人の心に残っていると私は思っている。新渡戸稲造は1899年(明治32)著わした名著『武士道』に武士道の将来について述べる。武士道は一つの独立した道徳の掟として消滅するかもしれない。その武勇と文徳の教訓は解体されるかもしれない。しかしその力はこの地上から消え去ることはなく、その光と栄光はその廃墟を超えて蘇生するに違いない、と。
 新渡戸が武士道の道徳項目の最初に「義」を挙げるように、義に生きるのが武士道の基本である。義は不正をしないこと、不正な手段で利益を得ないこと、卑怯なやりかたをしないこと、義理を重んじ道理に従うこと、約諾は死守すること、人の苦境を見捨てないこと、などである。そして武士道の義の顕著な特色に利(利益)を軽く見ることがある。特に私利を否定するのが武士道の義であった。武士は義と利に葛藤するとき、自分が利益を得ないことの方に義があると考えた。この武士道の感覚は、現代日本から完全には消えていないように私には思われる。損得勘定に重きを置かず、金持ちをあまり尊敬せず、利益を得た側よりも利益を得なかった側に義があると思う感覚が、現代日本にまだ残っているのではなかろうか。
 次に、日本人は現代なお一生懸命に生きるのをよしとし、組織内で自分の使命を懸命に果たそうとする。これも武士道の生き方である。一生懸命はもともと一所懸命であり、一所懸命は所領を命懸けで守った武士の生き方に他ならない。
 また武士道は、世間的にも、内面的にも恥ずかしくない生き方を旨とする。これも現代日本人に生きているように思われる。また、卑怯を嫌い、正直で嘘をつかず、約諾は守らなければならないと考える武士道の道徳規範も生きているのではないだろうか。嘘やうろんなことを嫌い、事実本位で実際的、現実的に処するのが武士道の特色であるが、これも、現実的で、観念論・抽象論をあまり好まない日本人の傾向としてなお生きているように思われる。
 武士道は封建時代に武士階級が培った道徳規範であり、民主的な現代社会において通用しない道徳を多く含むことは確かである。しかし武士道は時代と社会体制を越えた、人間の大切な道徳を含んでいるように思われる。戦いの世界に生き、戦いに勝つために何でもありの環境を生きた武士のつくり上げてきた武士道が、一見平凡な、嘘をつかないこと、正直であること、約諾を守ることなどを最重要視する道徳になっていることに、私は深い意味を見いだしたい。
(令和5年9月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』)などがある。


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