防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
スペーサー
自衛隊ニュース   1028号 (2020年6月1日発行)
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1面 2面 3面 7面

ノーサイド
北原巖男
忘れません

 新型コロナウイルス感染拡大防止の為、我慢や忍耐を強いられ続けて来た日々。気が付けば、早や6月です。
 この間、自衛隊員の皆さんは、全国各地で感染対策等の災害派遣活動に取り組んで来ました。また自衛隊中央病院や全国の自衛隊病院では、院内感染を生起すること無く患者の皆さんに対する治療行為を実施して来ています。
 マスコミは、こうした活動を一様に高い評価をもって報じていますが、自衛隊員には常日頃からの厳しい訓練の積み重ねがあるからこそ、新型コロナウイルスという全く未知・未経験の事態に臨んでも、国民の負託にしっかりと応えて行くことが出来るのだと思います。
 基本・基礎の修得、地道な訓練が、いかに力となり任務完遂の鍵となるか。これまで国の内外で行って来た自衛隊の諸活動でも実証済みですが、今回もそのことが証明されています。改めて肝に銘じておくべき訓練の重要性です。
 更に、マスコミや国民から高い評価や感謝を受けているときにこそ、自衛隊員として忘れてはならないこと。そうです、謙虚さです。常に国民と共にある国民の自衛隊員としての「誇りと謙虚さの同時堅持」です。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、日本を含む多くの国が出入国制限措置等を継続しています。このため帰国を希望しても帰国出来ない海外在留邦人がいます。
 こうした中、アジアで一番新しい国東ティモールの在留邦人で帰国を希望していた人たちが、ようやく5月末に東ティモールを出国、無事帰国することが出来ました。これを可能にしたのは、ひとえに外務省・日本大使館の懸命な外交努力とフィリピン政府のご厚意によります。フィリピン政府は、東ティモール在住の自国民を帰国させるためのチャーター便を用意、その飛行機に日本人もマニラまで同乗することが許されたのです。日本自らのチャ-ター便派遣が無い中で、フィリピン政府の温かい決断を忘れることは出来ません。
 他方、東ティモール残留を続けている日本の保健NGOの現地代表を務める女性がいます。新型コロナウイルスの感染拡大防止に全力を注いでいる東ティモール政府保健省や県保健局が助けや支援を求めて来ているとき、保健NGOとして現地に踏み留まり要請に全力で応えて行くのは当然だ、としてNGO本部を説得。あたかも厳しい衛生・医療環境さえをも自分の友達にして、今日も東ティモール保健当局の皆さんと懸命に、しかしとても軽やかに汗を流しています。
 そんな最前線で戦う彼女の心の支えは最愛の夫。彼は、東ティモール自衛隊PKO活動の経験者でもあります。彼女の姿が当時の自分と重なる彼。日本から常に彼女のことを誰よりも心配し、労り、力づけ、熱い後方支援を続けています。5000キロ離れた地に在って、お互いに励まし合いながら、それぞれの任務に全力投球されている若き夫婦がここにいます。
 連日新型コロナウイルス問題が報じられる中で、イージスアショア-を巡る気になる報道等がありました。防衛省・自衛隊の皆さんには、皆さんと住民の皆さん、そして関係自治体の皆さんとの三者よる「信頼のトライアングル」を早期に構築出来ますよう、心から祈っております。ご苦労が多いことと思いますが、頑張ってください。
 かつて筆者が広島防衛施設局(現在の中国四国防衛局)にて基地問題に従事していたとき、鳥取県境港市の安田貞栄市長(当時)からズバリ言われた言葉があります。
 「自分だけがどうしてこんなに苦労するんだろうと思ってはいけません。大変な仕事であればあるほど、相手も同じなのですよ」
 「私を支えていてくれるのは境港市民です。私は市民と一体です。「自分は市長として出来る限りのことはした」と、信念を持って言えるのでなければなりません。あなたから、いい人だと言われるだけでは困る」
 「やるべきことは、断固としてやるのは当然です。大切なことは、それをいつまでにやるかということです。全力を尽くすということは、そういうことではないでしょうか」
 「人間は、正直でありたいものです」
 「真剣勝負で事に臨み、誠心誠意懸命に努力するとき、立場や年齢、性別などを超越した「気迫」を感じるものです。人生意気に感ずです」
 「山陰には、長い歴史があります。私たちの故郷を良く知ってください…」
  
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現(一社)日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

読史随感
神田淳
<第54回>

日本語の良さ

 自国に自信を失うとき、日本語否定論が現れる。明治の始め、文部大臣森有礼が英語を国語にすべきと唱え、終戦後、憲政の神様といわれた尾崎行雄が同様の主張をしている。戦後はまた、小説の神様といわれた志賀直哉が、フランス語を国語にしたらよいなどと発言している。
 私自身は学校で日本語が優れた、良い言葉であるなどとは教えられなかったと思う。社会に出てからも、日本語は論理的でない、主語がなかったりしてあいまい、といった否定的な日本語論を散見した。
 かつて、「日本語は悪魔の言語だ」といった欧米人によるひどい評価があった。これは戦国時代日本に来たカトリックの宣教師が、日本語を習得できず、かんしゃくを起こしてローマに報告したことに発している。日本語とヨーロッパの言葉は、言語の構造にかけ離れた違いがあるため、お互いに習得するのが難しい。
 私はある程度年をとって、日本語が優れた、良い言葉だと強く思うようになった。
 日本語が論理的でないという欧米人や、それを真に受ける日本人もいるが、そんなことはない。言語は人間のコミュニケーションの手段であって、論理のないコミュニケーションなど成立しない。日本語は完全な論理をもち、完全なコミュニケーションが可能な言語である。日本語は論理的記述に適した言語のトップ集団に分類されるという、外国人言語学者の研究もある。
 日本語があいまいで明晰でないといった評価もあるが、明晰に表現しようとすればいくらでもできるところを、微妙で繊細な情感を伝えるために、わざわざあいまいにしているのである。日本語は繊細な感情を含む豊かな思想を、よく伝達できる成熟した言葉である。
 平安時代初期に起こった「仮名」の発明こそ、日本文化史上最大の出来事だったと私は思う。我々の祖先は、表意文字の漢字から表音文字の仮名をつくり、さらに漢字の訓読みを生み出した。漢字仮名混じり文は、日本語によくフィットした非常に良い表記法だと思う。日本語を仮名だけで表記することもでき、同じ表音文字のアルファベットで記述することも可能だろうが、漢字仮名混じり文の読みやすさと伝達力に及ばないだろう。
 漢字は日本語になかった抽象的な概念を多くもたらし、高度な概念を簡潔に表現することを可能にした。漢字はもともと外国語であるが、今は完全な日本語の一部である。日本語はやや堅い感じのする漢字と、やわらかい和語とのハイブリッドな構造になっており、この点、英語に似ている。英語は和語に相当するアングロサクソン系の言葉に、外来語であるフランス(ラテン)系の言葉が大量に入った混成語である。
 日本語は語彙が豊富というのも大きな特色である。ヨーロッパの言葉は5,000語も覚えれば文学作品が読めるが、日本語では10、000語必要だという調査研究がある。語彙が豊富ということは、表現が豊かな言語であることを意味する。
 日本語は、人が感じ、思い、考えるための豊富な語彙としっかりした論理性をもち、繊細に表現できる良い言語であるが、戦後の日本語は劣化してきているかもしれない。国民が国語を粗末にすれば、国の独立を失う。我々は日本語の良さをよく知り、日本語を大切にして世界の中で生きていきたい。(令和2年6月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


熊本地震がきっかけで再入隊決心した候補生も
祝 入隊式

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第1特科隊
 4月8日、第1特科隊(隊長・林佐光1陸佐=北富士)は、北富士駐屯地にて、3月29日に着隊した総勢55名の自衛官候補生入隊式を挙行した。
 例年では部内外から多数の来賓並びに家族の臨席があるが、今年は新型コロナウイルスの影響により第1特科隊隊員以外では駐屯各部隊長及び山梨地方協力本部長のみを招待し、自衛官候補生や参列の自衛官も全員マスクを着用し、間隔を広くとった隊形で式は始まった。
 そんな異例な状況による緊張の中でも、自衛官候補生は式中、代表の山本候補生が第1特科隊長より辞令書の交付を受け、全員で力強く「服務の宣誓」を実施した。
 隊長は式辞のなかで、自衛官候補生として自衛官に必要な資質、特に自律心・公徳心・強靭な体力・気力を修得することを要望し、「この出会いを大切にし、同期との絆を深め、3カ月後にはここにいる同期55名がそろって本教育を修了することを期待しています」と結んだ。
 最後に北富士駐屯地が誇る「北富士天王太鼓」による激励演奏が行われ、力強く響く音色に自衛官候補生たちは目を輝かせていた。
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西部方面混成団
 西部方面混成団(団長・古庄信二1陸佐=久留米)は、3月30日から6月30日までの間、第15期一般陸曹候補生課程前期男子521名及び自衛官候補生課程女子209名に対して新入隊員教育を行っている。
 着隊した初々しい新隊員達は、教官の指導の下、敬礼や行進などの基本教練等を体得し本入隊式に臨んだ。入隊式では、新型コロナウイルス感染防止のため、隊員の家族及び部外関係者を招待せず自衛官のみで行い、参加者全員がマスクを着用し隊員同士の間隔を大きく空け、全ての窓を全開にして、感染対策に万全を講じた。宣誓においては、同期一丸となり声高らかに元気よく宣誓し、陸上自衛官としての第一歩を踏み出した。
 入隊した第113教育大隊の一般陸曹候補生・大曲瞭介(おおまがりりょうすけ)2陸士は「同期ときつい訓練を乗り越え、日々自己鍛錬し、人間性も磨き、国民から信頼されるような強く優しい自衛官になりたいです。また、憧れであるレンジャー隊員を目指し、まずは新隊員教育の修了までには、体力検定で1級に合格したいです」と述べ、第118教育大隊の自衛官候補生・尾方志帆(おがたしほ)候補生は、「私は、6年の任期を満了し、一度自衛隊を退職しました。再入隊のきっかけは、平成28年熊本地震の災害派遣で人命救助にあたっている自衛官をテレビで見て、大変感銘を受けたことです。自衛官として国民のために力を尽くせる仕事がしたいと思い直し、2度目の入隊を決心しました。同期と協力し、強い責任感と勇気を持って、国民のために貢献できる自衛官になれるよう精進していきたいです」と述べた。
 教育は、第113教育大隊(国分)、コア連隊である第19普通科連隊(福岡)及び第24普通科連隊(えびの)が一般陸曹候補生を担当し、西部方面隊唯一の女子の自衛官候補生を第118教育大隊(久留米)が担当している。増援の教官及び助教等は、混成団以外の一般部隊から118名の支援を受け万全の教育態勢を整えており、これからの基本教育が、新入隊員にとって「自衛官人生で1回しかない唯一のものであり、やり直しのきかない実戦である」という認識の下、真に戦える(部隊で真に役立つ)陸士を教育していく。緊急事態宣言が全国に発令されていた時期は、ゴールデンウィークを返上して訓練に臨んだ。6月末には、約3カ月間の教育により陸上自衛官としての基礎を習得し、全国それぞれの部隊に配置され、各部隊において更に3カ月の特技教育を受け、初任地部隊の新たな戦力となる。
 教育の状況については、各駐屯地及び部隊のSNSにおいて情報発信していきたい。ぜひそちらもご覧頂きたい。

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