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自衛隊ニュース   2011年12月1日号
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震災から254日目の音楽まつり
陸、海、空の個性光る演奏

 東日本大震災の被災地における自衛隊の音楽隊による慰問演奏は3月末から始まり、7月まで継続的に行われた。今回の音楽まつりに参加した陸・海・空自衛隊音楽隊、北方・東北・東部方面音楽隊、自衛太鼓チーム、ゲストバンドの在日米陸軍軍楽隊、在沖縄米海兵隊音楽隊、宮城三女OG合唱団などはいずれも被災地で慰問演奏を行っている。東北方音楽隊や船岡さくら太鼓、八戸陣太鼓などは、発災直後に災害派遣活動の最前線で活躍するとともに、隊員自らも被災地の住民だった。第1章『愛』の冒頭で北部方面音楽隊の演奏に合わせ力強い踊りを披露したよさこいソーランのチームは、道内各地の部隊から選ばれた一般隊員で構成され、音楽まつりのために結成、この日に向けて練習を重ねた。メンバーの多くは、震災の災害派遣を経験した隊員である。
 開演前に場内で流されたVTR内で、陸自中音武田晃隊長は、「(慰問演奏を行った際に被災者が)本当に喜んでくれて、『(演奏中は)平常な心に戻ることができた』、『人間らしい心を取り戻せた』、『慰められた、勇気づけられた』という感想があった。本当に演奏をやって良かった」と、感慨を込めて振り返っていた。同様の経験を、被災地で慰問演奏を行った際に各部隊が味わい、隊員それぞれが改めて、「音楽の持つ無形の力」を痛感した。
 本年度の音楽まつりは、東日本大震災の追悼と復興を念頭に、「愛、希望、勇気 今を越えて、その先へ」というテーマを掲げた。出演部隊の演奏前後・演奏中には、自衛隊の本来任務である国防について、訓練や装備品を紹介するVTRとともに、震災の災害派遣活動の様子もビジョンに映し出されていた。第1章『愛』に出演した在日米陸軍音楽隊、在沖縄米海兵隊音楽隊の紹介に際しては、「トモダチ作戦」についても触れられた。同章に出演した北方・東北・東部の3つの方面音楽隊と在日米軍2つの音楽隊による演奏に合わせゲストの宮城三女OG合唱団が歌う光景は、発災直後の被災地において、互いを想う愛情を心の支えに、未曽有の災害に立ち向かった8ヵ月前の縮図と映った。
 防大儀じょう隊と陸・海・空自衛隊音楽隊の単独ドリル演奏、自衛太鼓12個チームの演奏などが行われた第2章『希望』。公演2日目の午後に行われた特別公演には被災者など「東日本大震災関係者」が招待された。その中に、宮城県の中学・高校の吹奏楽部の生徒たちがいた。公演終了後に女生徒に感想を聞くと、「演奏が素晴らしくて、鳥肌が立ちました。しかもあんなに奇麗にドリルをしながら。凄い! 皆さんに憧れます。私たちはマーチングをしているので、宮城に戻ったらすぐに楽器を持って歩きたくなりました」と興奮が冷めやらない様子だった。悲しみを乗り越え、明日へ、未来へ。明るい希望の光が、彼女の瞳に輝いていた。
 第3章『勇気』の演奏に入る前には、場内が暗転し、行方不明者の捜索に携わっていた被災地出身の陸自隊員2名の捜索当時のインタビュー映像が流れた。自身の家族の安否が未だ不明でありながら、「自分の家族を捜すのと変わりない気持ちで活動しなくては」と、溢れる涙を必死に堪えながら答える女性隊員。VTRが終わると、震災関係者席から拍手が起こり、やがて武道館全体に広がった。岩手県からの招待者は、「自衛隊の皆さんには本当にお世話になりました。あの場面では手が真っ赤になるくらい拍手をしました。自らを顧みず私たちのために一生懸命に活動して下さった。この感謝はずっと忘れません」と語っていた。3章のラストパートで演奏された曲のひとつ、『七彩の奥羽国』は、楽器演奏の最中に大砲、機関銃などの効果音が挿入され、自衛隊の持つ力強さを表現した曲である。美しき郷土に平和をもたらし、保つため、いかなる相手にも怯まない。困難に立ち向かう勇気を持って、一歩を踏み出し、力強い歩みを止めない。2日間に観覧した約39000人は、自衛隊の揺るぎない決意を、音楽の感動とともに胸に焼き付けた。


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