砕氷艦「しらせ」(艦長・中藤琢雄1海佐)の第53次南極地域観測協力の出国行事(執行者=横須賀地方総監・河村克則海将)が11月11日、東京港晴海埠頭で行われた。白瀬南極探検隊から100年、悪天候にもかかわらず約1000人の家族、関係者が乗組員175名の海自隊員たちを見送った。総行動日数151日、南極圏行動日数98日、総航程は約2万マイル。来年4月9日に帰国予定。
当日はあいにくの雨。気温も低く寒かったが、朝早くから多くの家族、関係者が見送りに集まった。
10ヵ月の双子の赤ちゃんをおんぶとベビーカーで連れ千葉から来た37歳の女性は「主人は今度で連続3回、合計5回の乗船。無事に帰ってくれれば」。
静岡から来た71歳の男性は「妻と娘と3人で見送り。娘婿が3度目の乗船です。仕事ですから全うしてもらいたい。孫のことは任せてください」。お孫さんは4歳と1歳半とのこと。
午前10時、「しらせ」に杉本正彦海上幕僚長が乗艦。観測デッキで乗組員から栄誉礼を受け、続いて士官室で中藤艦長から折木良一統合幕僚長(代理で副長)への出港報告に河村総監と陪席。雨のため格納庫で統幕長訓示(副長代読)のあと、壮行の辞を述べた。
杉本海幕長は「白瀬中尉が率いる南極探検隊が開南丸でシドニーを出港した年から百年目。天候と装備の制約から、引き返すという苦汁の決断をしたが、隊員の命を失うことなく無事に帰還した。最善を尽くしてもらいたい」と話した。
その後、船上で隊員たちは家族と最後のひととき。あちらこちらで子供を抱き上げるなどして家族と記念撮影。中には母親からたくさんのスルメイカの干物を人前で渡され、恥ずかしがる隊員もいた。
出港見送りでは東京音楽隊の演奏の中、「しらせ」は多くの人々に見守られながら、ゆっくりと岸壁を離れていった。「ヤバいよ…」と言いながら涙ぐむ若い男性。旅客ターミナルのデッキ端で傘をさしたままいつまでも離れずにいる女性の姿も見られた。
「しらせ」の"往路"は、11月25日にオーストラリアのフリーマントルに到着後、第53次南極地域観測隊等73名を乗せ、12月中旬に氷海へ進入。来年1月上旬に南極の昭和基地沖に到着の予定。
"復路"は、2月中旬に第52次越冬隊員等72名を乗せ南極を出発し3月上旬に氷海を離脱。同18日にフリーマントルに寄港して南極地域観測隊を降ろしたあと、4月9日に東京港晴海埠頭へ帰国する予定。
南極観測実施の中枢となる国立極地研究所によると「今回は国の6ヵ年計画の中で2回目の観測隊派遣。前回に引き続き地球温暖化について観測・研究を行うことが重点」という。 |