東日本大震災では部隊運用の効率化を図るため、3月14日に君塚栄治東北方面総監を指揮官とする災統合任務部隊(Joint-Task-Force=JTF)を編成、2006年に統合運用体制へと移行してから初めて大規模な統合運用が行われた。被災地では陸海空の3自衛隊が一丸となって救助・捜索、生活支援、物資輸送の各活動に全力を挙げている。(数字は5月9日現在)
被災地で活動する自衛隊は、3月20日に10万人態勢を確立し現在も救援活動を続けている。救助者数は1万9286人に上り、行方不明者の捜索活動も毎日懸命に行っている。米軍、海上保安庁、警察と共同による集中捜索も4月1〜3日、同10日、同25〜26日の3度にわたって実施された。地上部分では陸自と空自が担当し、沿岸部を含む洋上は海自が艦艇や小型ボートなどを投入、空自も航空機を使用して空からの捜索に当たった。
生活支援では、入浴、給水、給食、医療の各活動で被災者を支えるとともに、瓦礫の除去作業で被災地の復旧に貢献している。4月4日には陸空自衛隊員が松島基地で瓦礫の除去を行うとともに、翌5日には泥の除去作業と入浴支援を協同で行うなど、JTFは一丸となって被災地の復旧活動や被災者の支援に当たっている。
また、地震と津波により道路の寸断など車両の通行が困難になり、艦艇やヘリを持つ自衛隊は物資輸送で重要な役割を果たした。これまで食糧や水などの物資約8980トン、医療チーム約1万3800人をそれぞれ輸送した。空自松島基地などの拠点に空輸された物資を陸自部隊が車両で避難所に運んだり、海自がヘリや輸送艦で港などに陸揚げした物資を陸自車両が引き継ぐなど、各自衛隊の能力を活かした活動を行った。
3自衛隊を一体的に運用
統合運用とは、陸海空の各自衛隊が単独ではなく、一体となって活動することで、2006年に統幕の発足によりその体制が整えられた。科学技術の進展により作戦進行速度が増したことや活動の多様化などの環境の変化といった体制移行の必要性から、3自衛隊を一体的に運用するとともに、以前は複数存在した防衛大臣(当時は防衛庁長官)に対する軍事専門的見地からの補佐を統幕長に一元化することで、より迅速で効果的な対処が可能となった。
その他、「日米安全保障体制の実効性の向上」という一面もあり、今回の東日本大震災において「トモダチ作戦」を展開する米軍との円滑な連携を図ることへと繋がった。陸海空の各自衛隊が分かれて米軍と連携を確保するのではなく、JTFを組織するとともに日米調整所を設置して相互調整を行うことで緊密な共同活動が実現した。
活動形態としては、統合任務部隊によるものと協同によるものの2種類がある。今回の東日本大震災のように、単独の指揮官の下に統合任務部隊を組織した例は、ソマリア沖・アデン湾で活動中の海賊対処行動部隊が挙げられる。 |