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1096号 (2023年4月1日発行) |
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雪月花 |
こんなにも日本列島を揺るがすほど興奮させたことが過去にあっただろうか。3月に行われたWBC侍ジャパンの快挙である。東京ドームからアウェイのマイアミに舞台を移してからの準決勝・決勝は感動の連続だった。メキシコとの準決勝、9回裏4-5と諦めムードが漂う中、大谷の2塁打が日本中の人をテレビの前に座り直させた。大谷はセカンドベース上で言葉にならない声を上げてチームを鼓舞している。続く吉田も出塁し、ここで不振にあえいでいた村上がフェンス直撃の適時二塁打を放ち逆転サヨナラ勝ち。一人テレビ観戦の筆者も思わず拍手、胸が熱くなる。全国各地のパブリックビューイング(PV)やスポーツパブでも大興奮だ。翌日のアメリカとの決勝。3-2と日本リードで迎えた9回表、マウンドに立つのは大谷、そして最後の打者はエンジェルスのチームメートであり世界一の打者と言われるM・トラウト。現野球界で考え得る最高の舞台が整った。2アウトフルカウントで投じた6球目、トラウトのバットが空を切る。世界一だ、大谷がグラブを投げ帽子を投げ咆哮する、駆け寄るナイン。筆者も若い人と一緒に万歳を何度も何度も続ける。59年前、東京オリンピックのバレーボールで「東洋の魔女」と言われた日本チームが優勝した時も日本中を揺るがしたが、筆者にとってはそれ以来の感動をもらった。とにかく最後の舞台設定が出来すぎていた。両雄の対決、そして三振で仕留めたことに値打ちがあった。この結末は小説か漫画の世界だと評判になったがプロの作家ならこんなストレートな幕切れは恥ずかしくて書けないのではないか、それではあまりにも読者に媚びるような気がするから。だがここではさらにその裏を行く展開になった。「事実は小説よりも奇なり」。最後のシーンは何回見ても胸に迫ってくる。 |
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