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スペーサー
自衛隊ニュース   1110号 (2023年11月1日発行)
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機略縦横(64)
潜水艦隊先任伍長 海曹長 佐々木健
伝えるために
 私の現在の配置においては多くの若い隊員と直に接する機会が少なくなっていますが、それでも隷下部隊等での懇談や面接などの際に気づかされることがあります。
 ある若年隊員から、「自分の職域の仕事への理解は他の職域との関係を知らないと深まらないと思うので、他の職域の先輩からその仕事内容について御指導いただいています」という話を聞きました。私が何年も同じことを感じて勤務していながらその考えを整理できていなかったことを簡潔な言葉で表現してくれたので非常に驚きました。
 ある一部を見てすべての若年隊員を判断するわけではありませんが、最近は自己表現に長けている若年隊員をよく見かけます。
 昨今、若年隊員に対する指導者側の悩みとして「コミュニケーションがうまく取れない」ということをよく聞きます。これに対し私は、指導者側が話をよく聞くということばかりに心を砕いているように感じます。
 さすがに現在は「聞いて来るまで教えない」という指導法は実施していないようですが、最初から伝えたいことが多すぎたり、あまりにも正論過ぎたりすることなくまずは自己分析をして本当は何を伝えたいかを整理してみてください。
 「ちゃんと聞く」ことも勿論大事ですが「しっかり伝える」ことも同じように大事です。相手に理解し易く話すことを心がけましょう。

令和5年度遠洋練習航海部隊が帰国
北中南米8カ国・11寄港地巡る
 10月20日、「令和5年度遠洋練習航海部隊(司令官・今野泰樹海将補/派遣艦艇・「かしま」「はたかぜ」/人員・実習幹部約160名含む約560名)が午前8時ごろ、順次東京晴海ふ頭H-Jバースに接岸して無事の帰国を果たした。10時30分からは同場所で、伊藤弘横須賀地方総監を執行者とした帰国行事が盛大に行われた。宮澤博行防衛副大臣、酒井良海上幕僚長、辻清人外務副大臣をはじめとした部内外からの来賓や、この日を待ちわびた家族や知人、関係者らが大勢駆け付けた。
 清々しい秋空のもと、精悍な顔つきで整列する実習幹部。北中南米を巡る149日間もの航海が海上自衛隊幹部自衛官としての誇りと自信を身に着けさせたようだった。
 酒井海幕長は労いの言葉を掛けると共に、今後それぞれの部隊で活躍が期待される実習幹部に対し「この遠洋練習航海で諸官らが身をもって学んだように、海上自衛隊の全ての基本が海の上であることを忘れず、溌らつと失敗を恐れず勤務してもらいたい」と訓示した。
 行事後、実習幹部は一旦「かしま」に乗艦、一人ひとり今野司令官や乗員に別れを告げながら、約5カ月間過ごした「学び舎」を後にした。この日は強風だったせいもあるが、帽子を目深に被る実習幹部の中には涙をこらえて唇を噛みしめる者もいた。
 67回目の今回は、5月25日から約149日間、今年外交関係樹立150周年を迎えたペルーを含む北中南米の8カ国・11寄港地を巡った。その間、米軍との共同訓練を2回、その他の国との親善訓練を7回実施した。また、2回目となるマゼラン海峡は初めて太平洋側から東に向かって通峡。氷点下の中、約2日間をかけて難所を抜けた。

日豪防衛相会談
防衛協力を一層深化
 10月19日、木原稔防衛大臣は防衛省で、オーストラリアのリチャード・ドナルド・マールズ副首相兼国防大臣と会談を行った。
 冒頭、木原大臣はオーストラリアは価値観と戦略目標が完全に一致する国であると強調。防衛協力が拡大していることを歓迎し、「今後は地域の緊急事態でも日豪がしっかりと連携できるよう防衛協力の実効性を高めることが必要だ。 "リチャード" と共に力強く取り組み、防衛協力を一層深化させたい」と述べた。マールズ大臣は「世界を見渡しても日本ほど戦略的に協調できる国はない」と同調し、「両国関係が発展強化していく中で、オーストラリアとしては将来の域内および世界の安全保障において、日本との関係を重視し大切に育てていきたい」と述べた。
 日豪は今年8月に日豪円滑化協定を発効し、両国の戦闘機F35Aによる相互展開訓練において適用されたことをはじめ、11月末から日米で行う「ヤマサクラ」、来年2月の「キーンエッジ」に豪軍が初参加することが表明された。
 また防衛装備・技術協力においては、同日に豪国防省と三菱電機オーストラリアとの間でレーザー技術を活用した技術開発に係る契約締結が公表された。

「我が国の誇り」「御遣志を受け継ぐ」
令和5年度自衛隊殉職隊員追悼式
 10月21日、防衛省慰霊碑地区(メモリアルゾーン)において、任務遂行中に不幸にして職に殉じた隊員を追悼する「令和5年度自衛隊殉職隊員追悼式」がしめやかに執り行われた。今年度は新たに、陸自20柱、海自5柱、空自1柱の計26柱の名簿が慰霊碑に奉納され、警察予備隊時代の昭和32年から始まった本式での顕彰者総数は2080柱となった。
 式には来賓として岸田文雄内閣総理大臣を迎え、新御遺族、殉職後10年目・20年目の御遺族、木原稔防衛大臣をはじめとした防衛省関係者ら約300名が参列し御霊に思いを馳せた。
 岸田総理は弔辞で「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜く。その強い覚悟をもって、職務の遂行に全身全霊を捧げた殉職隊員は、我が国の誇りです」、「その尊い犠牲を無にすることなく、御遺志を受け継ぎ、国民の命と暮らしを断固として守り抜いていく、そして、地域と世界の平和と安定に貢献するため全力を尽くすことを、改めて誓います」と述べた。

WPNS STEP
次世代を担う士官らが交流
<海上自衛隊幹部学校>

 10月18日から25日の間、海上自衛隊幹部学校(学校長・江川宏海将=目黒)は、「第11回西太平洋海軍シンポジウム次世代海軍士官短期交流プログラム(以下「WPNS STEP」)を開催した。本事業は海自幹部学校が主催する次世代海軍士官の人的交流の場として平成23年から行われているもので、今回はアジア・太平洋諸国26カ国から海軍大学の少佐や大尉相当の士官等29名と、海上自衛隊幹部学校第71期幕僚課程学生34名が参加。研究会、講義、部隊研修等を通じて我が国の安全保障、防衛政策及び防衛力整備、および歴史・文化等への理解を深めつつ、多国間協力の礎を築いた。
 江川学校長は18日の開会式で分断と対立が顕在化している現代の国際社会において「本セミナーの目的は参加者同士の意見交換を通じた相互理解の促進にある。相互理解は、我々が直面している様々な課題に対し、協調して努力を継続するための第一歩である」と本事業の意義を強調するとともに、「今回のセミナーによる参加者相互の交流が、自由で開かれたインド太平洋の維持に資する海軍間協力を進展させ、ひいては共存共栄の国際社会の形成の一助となることを祈念する」と参加者たちに呼びかけた。
 参加者らは横須賀基地で艦艇見学を行ったり富士吉田市で日本文化にも触れた。研究会では「海洋秩序維持・強化のための海軍間の取組」をメインテーマとして、「意図しないエスカレーション防止のための信頼醸成に向けた取組」、「人道支援・災害救助(HA/DR)における多国間協力の推進等」、「安定した海洋利用のための海軍間協力」をサブテーマに各グループによる研究成果発表を行い、各国海軍の協力の重要性について理解を深めた。

 参加国は以下のとおり
 オーストラリア、バーレーン、ブルネイ、カンボジア、カナダ、チリ、中国、エクアドル、フィジー、フランス、インド、インドネシア、イタリア、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、オマーン、パプアニューギニア、フィリピン、韓国、サウジアラビア、シンガポール、タイ、英国、米国、ベトナム ※フィジーは初参加


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