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スペーサー
自衛隊ニュース   1102号 (2023年7月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第128回>

ロシアの世界認識について

 ロシア下院は6月20日の本会議で、9月3日を「軍国主義日本に対する勝利と第二次世界大戦終結の日」とする法案を可決した。プーチン大統領の署名で成立する。ソ連時代はこの日を「対日戦勝記念日」としていた。ソ連を継いだロシアはこの日を「第二次大戦終結の日」としており、「軍国主義日本に対する勝利と」という文言は入っていなかった。下院での可決は、ウクライナ戦争における日本のウクライナ支援に対する報復措置とみられている。
 ロシアは第二次世界大戦の勝利を強調し、誇る。ロシアはナチス・ドイツとの戦争を「大祖国戦争」と呼ぶ(19世紀初めナポレオンのロシア侵攻に打ち勝った戦争を「祖国戦争」と呼んでいる)。一般には第二次世界大戦の「独ソ戦」または「東部戦線」と呼ばれるナチス・ドイツとの死闘で、ソ連は2千7百万人という膨大な犠牲者を出しながら、勝利することができた。
 第二次世界大戦で連合国の勝利に大きく貢献したソ連は、アメリカと並ぶ世界の強国となり、大戦後東側世界を支配した。米ソは冷戦状態となったが、1989年ソ連の支配下にあった東欧の共産党政権が次々に倒れ(東欧革命)、冷戦が終わった。また1991年に
はソ連も崩壊してしまった。
 ソ連の消滅後、大統領エリツィンによるロシアの急激な市場経済への移行はうまくいかなかった。社会は混乱し、失業者は増え、インフレで収入・資産は減り、貧富の格差は広がった。エリツィンを継いで2000年大統領となったプーチンは「強力なロシア」の再建を目標に掲げ、中央政府の統治権限を強化し、財政健全化、インフレ抑制などを進め、原油価格高騰の追い風もあって、ロシア経済は好転した。
 ロシアは強国でなければならないと固く信じるプーチンは、18世紀、領土を拡張しロシアを強国にしたピョートル大帝とエカテリーナ2世を深く尊敬する。プーチンはウクライナ侵攻を、領土は奪い返す責務があるなどと言ってピョートル大帝の北欧侵攻になぞらえた。エストニア外務省は、プーチンが3百年前のピョートル大帝によるエストニアの首都ナバルへの侵攻を「ロシアによる領土の奪還」などと述べたことに抗議した。「ロシアの安全を確保するためには領土拡張こそが最重要である」との考えがロシアのDNAのようになっており、プーチンも歴代のロシア皇帝のようにこれを堅持している。
 プーチンはソ連崩壊とその後のロシアの混乱、東欧諸国のソ連勢力圏からの離脱、及びNATOの拡大も西側にやられたと思っている。彼は西側を全く信用していない。国の指導者がナショナリストで、世界を自国本意に認識するのは普通のことであるが、プーチンは極端である。東欧革命は、西のような自由主義国になりたいと思う人々の欲求がもたらした自然な流れであり、NATOの拡大も、東欧諸国が自国の安全のために加盟を欲した自然な動きだと私は思うが、プーチンはこれもロシアを弱体化させる西側の意図と見る。
 ロシアの歴史を知ると、ロシアは相当無理をしてつくられたてきた大国であることがわかる。弱者意識をもつロシアのDNAともなっている防衛的領土拡張主義が、他国との共存を難しくしてきた。日本はロシアよりも良識的な世界認識をもつ。日露関係の歴史はロシアより日本の方に名誉がある。日本は決して侵略されることのない防衛力を堅持し、堂々とロシアとつきあえばよい。
(令和5年7月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii-nihon.themedia.jp/)などがある。


池邉准尉から谷出准尉へ
北空准曹士先任交代式
 北部航空方面隊(司令官・安藤忠司空将)は、6月16日、北空准曹士先任交代式を三沢基地において挙行した。当日は、米空軍第35戦闘航空団のブランバーグ先任下士官、米海軍三沢航空基地隊のジョンソン先任伍長、陸上自衛隊東北方面隊 綿引最先任上級曹長及び海上自衛隊大湊地方隊の吉田先任伍長を来賓として迎え、北空直轄部隊長及び准曹士先任の立会のもと、多数の隷下部隊隊員が参列した。
 式は、准曹士先任紹介、下番者に対する賞詞授与、准曹士先任識別章の返還及び授与、准曹士先任挨拶の後に司令官が訓示し、下番する池邉准尉の功績に謝辞を述べるとともに、上番する谷出准尉に対し池邉准尉の築いた准曹士の絆を更に強固なものとし、准曹士の先頭に立ち困難に立ち向かっていくこと要望し、閉式した。

E2早機警戒機運用開始から40年
<飛行警戒監視群・第1整備群>
 3月28日、三沢基地において早期警戒機であるE2C及びE2Dの運用、整備にあたる警戒航空団所属の飛行警戒監視群及び第1整備群が合同で記念撮影を行った。
 今年、E2Cは1983年の運用開始から40年の節目を迎える。
 各級指揮官を先頭に、両群の隊員が航空機を前に「40」の人文字を作った。
 E2型機は主に空中からの警戒監視任務にあたり、我が国の安全確保に貢献している。
 現在、新型のE2Dへの機種更新が進められている。また、防衛力整備計画においては更なる増勢計画が示されており、その重要性は益々高まっている。更に、E2は、これまで事故により1機の航空機も失っていない。
 全隊員が「安全はわれわれのブランド」との誇りを持ちつつ、奢ることなくこれからも国民の皆様の負託に応えるよう練成に励み、次の10年へ歴史をつなぐ決意を新たにした。

雨の中、開隊58周年記念日行事
<小松島航空基地>
 4月15日、海上自衛隊第24航空隊(司令・和田和起1海佐)は小松島航空基地開隊58周年記念日行事を行った。式典で司令は、「いついかなる時でも、常に不測の事態に即応できる態勢を整え、あらゆる事態に適切に対応できる精強な部隊を目指し、これからも日々の業務や訓練に臨む」と、決意を述べた。あいにくの雨だったが、SH60Kを使用した救難訓練展示や、地上救難員による消火訓練展示を清々と行い、隊員一同「全力で責務を果たす」という誓いを新たにした。

T-5型練習機の定期検査
33年間で2500機に達する
<小月教育航空群>
 5月17日、小月教育航空群(群司令・富田一成1海佐)の保有するT5型練習機の定期検査が、49号機の試験飛行完了をもって2500機に達した。定期検査は富士航空機整備株式会社が実施しており、防衛改革の一環として練習機整備のため昭和63年に創立、翌年小月事業所が開設され、平成2年からKM2及びT5型練習機の委託整備を開始した。KM2型練習機は277機、T5型練習機はこの度、2500機の定期検査を完了した。
 従業員のほとんどが自衛隊OBからなる同社では、「信頼性の高い整備及び教育を提供する」をモットーに、自衛隊で培った体力、気力を活かし、厳寒、酷暑に負けることなく、整備作業に取り組んでいる。
 小月教育航空群司令は、定期検査を完了したT5型練習機の前で、富士航空整備株式会社の社員へ感謝の意を伝え、代表取締役社長・塙氏と固い握手を交わし、航空学生の安全な飛行を支えるために、今後も双方が協力していくことを誓った。

情報戦き章の着用を開始
海自で最も新しい「き章」<対潜資料隊>
 4月3日、対潜資料隊(司令・原利光1海佐)は、情報戦き章の着用開始セレモニーを行った。
 情報戦き章とは、情報戦を遂行する情報、通信、気象海洋等に関する経歴や技能を有する隊員のうち、規定された要件を満たす者が着用することができる、海上自衛隊では最も新しく制定された「き章」だ。
 対潜資料隊では、気象海洋の特技を有する隊員が数多く勤務しており、そのうち着用資格を有する隊員に対して、このほど情報戦き章が配布された。セレモニーはこれを記念して行われたものであり、司令は「き章とは、単に経歴や技能を示すだけでなく、誇りと責任を象徴するものである。情報戦き章を開始するにあたり気象海洋のプロとして情報戦を支えるとともに、我が国の防衛に寄与する先駆けとなるよう決意を新たにしてもらいたい」と訓示した。そして、隊員の代表2名が司令から胸にき章を装着された。このたびき章を付与された小川卓巳3海佐は、「気象海洋幹部として、情報戦き章を着用でき、大変誇らしい気持ちです。今後は、き章に恥じないよう術科技能の向上に一層励み、職務にまい進します」と語った。
 当日は雲一つなく、横須賀から富士山がはっきりと見えるほど清々しい晴天で、東京湾の海面も波穏やかに光輝いており、気象海洋の新たな節目を祝福しているかのようだった。

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