私は、平成21年4月に定年退職し、援護担当者にお世話を頂き再就職、令和元年9月に再々就職して、現在、第3の人生を歩んでいるが、現職とは全く違う世界であるとつくづく思う。
退職後の新たな職に就いて間もない頃、部長職として忙しく勤務していた。隣席の部下に「ちょっとこれコピーを」と言ったところ、意外と冷めた目で見られた。また、部の業務として計画されている説明会の分厚い資料の袋詰めを「ちょっと頼む」と言う前に、「説明するのは部長ですよね」という言葉が飛んできた。「なに?」の言葉を飲み込んだことを今でも覚えている。
今考えれば当り前のことなのだが、いくら上司とは言え、職場の同僚や部下達は、年齢は若くてもその道の先達者であり、私より遥かに知識もあり古株である。職場はどこも忙しく、自分が忙しい時には恐らく部下はもっと忙しい。
現職時もそうだったが、退職が間近になる頃には、部下が仕上げた仕事の上で仕事をし、部下に任せることが普通となっていた。そこから一般社会に出たのである。たとえ部長職ではあっても、そこでは当然一年生だった。
自衛隊だった時の肩書や階級などは、通常の場合、一切関係ない。「俺は元・・・だ」に対し、「だから?」で終わりである。コピーだろうが何だろうが「自分がやるべきことは自分でやる」のが原則なのだ。
中には、現職時の肩書をいつまでも意識し、それをあらわにする人もいたが、無視され、そのうちいなくなった。
これまでとは違う世界なのである。
早めに意思を固めて技量を磨く
この世界にうまく飛び込むためには、その準備は早いほど良い。私の場合、「退職後に何をしようなどと考えるのは邪道だ」と軽く考えていたが、退職間近になって戸惑った。何も準備していなかったのである。
これまでの自衛隊勤務で培ったものが "一生の宝物" になることは間違いないが、「人生100年時代」の残りの長さを考えるとこれだけでは足りないのも事実なのだ。
「退職後に何をやるか」を早めに固めれば、それに向けて資格の取得、職業訓練、自学研鑽など、出来る範囲で自分の技量を磨くことができる。そのことが再就職ばかりか、その後の人生にも役に立つのである。
職業訓練の有効活用を
私が勤務している専門学校では職業訓練生を受け入れている。
この職業訓練は、求職者のため、厚生労働省が都道府県を通じて学校や企業に委託しているもので、資格や免許取得に有利である。授業料は原則無料、条件に適合すれば生活に必要な手当も受けられる。卒業に当たり就職支援もあって再就職には有利である。
様々な職域の訓練が準備されており、ネット検索やハローワークで確認し、大いに活用したらよいと考える。
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最後に。「茹でガエル」という言葉がある。熱いお湯の中に蛙を投げ込むと蛙は必至にそこから抜け出ようとするが、浸かっている水を徐々に温めると、熱くなっても抜け出ようとはせず、ついには茹であがってしまう。
退職を目の前にする自衛官達に対してこの例えはあまりに失礼だが、「まだまだ先のこと」とは思わずに早く気付くよう強くお勧めしたい。(K)
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