陸自第9師団第5普通科連隊は2月13日、伝統行事の「八甲田演習」を実施した。これは、明治35年、旧陸軍歩兵第5聯隊が八甲田雪中行軍中に遭難したことに対して、その軍人の霊を追悼し遺徳を広く内外に顕彰することを目的に昭和40年以来行われているもので、今年で39回目。極寒の猛吹雪の中、約650隊員が凍傷や雪崩などに注意を払いながら防寒服姿の完全武装でアキオを曳行、八甲田温泉付近から増沢までの約22キロをスキー行進した。また、防衛記者一行も訓練のほんのごく一部を自ら体験するとともに演習中の隊員の姿を各ポイントで取材した。
青森駐屯地、第5普通科連隊(連隊長・田草川茂人1佐)は2月13日、酷寒の八甲田山系で、積雪寒冷地における部隊としての基本的行動を目的とした訓練を実施した。
演習に先立ち、青森市幸畑にある八甲田雪中行軍遭難軍人の英霊が眠る旧陸軍墓地において、連隊長以下200名が参拝行事を行い、連隊長が「今は去る106年前、不幸にして護国の礎となられた山口少佐以下210柱の勇士を偲びつつ諸先輩の遺訓を学び、ご遺志を全うすべく、明日ここに第5普通科連隊長田草川茂人以下650名は、八甲田演習に挑みます。本演習が事故もなく無事にかつ多くの成果を得て、終了することができますよう、英霊の御加護を賜らんことを願い、演習出発の辞とします」と墓前に報告するとともに追悼の意を捧げた。その後、青森駐屯地東グランドで、隊容検査を実施し、隊員の背のう入り組品や、アキオなどの点検を行った後、連隊長が訓示で「周到な準備とその徹底、機動能力の向上、安全管理」の3点を強調するとともに「演習に初めて参加する隊員は、連隊で77名いるが、各級指揮官はもとより、隊員一人ひとりが安全管理に細心の注意を払い事故の未然防止に万全を期すよう」要望した。
翌13日早朝、スキー行進開始地点(八甲田温泉付近)に車両移動。当日の気温氷点下12度、体感温度は氷点下28度と、風が強く吹雪く中、隊員らは防寒服に身を固め約30キロ余りの背のうを背負い、スキーを装着し、先遣の情報小隊が出発後、第1中隊は当初、大中台まで雪上車でジョーリング。じ後、増沢まで進路啓開をしながらスキー機動した。その15分後、連隊主力も八甲田温泉付近から増沢に向けスキー行進を開始、高低差のある約22キロのコースを行進した。
積雪寒冷地における部隊行動能力の高い連隊は、予定より約1時間早く目的地の増沢に到着し、引き続き車両移動により駐屯地に帰隊した。
今回の演習に初めて参加した隊員は、悪天候の八甲田山の厳しさを知るとともにその中を「スキーで完歩した事が自信につながり、また、誇りに思います」と口を揃えて話していた。
「八甲田連隊」と異名を持つ5連隊は、今年もまた伝統を継承し、1件の事故もなく平成19年度の八甲田演習を無事終了した。 |