遺族代表挨拶 遺族を代表して、一言ご挨拶いたします。 本日は、お忙しい中、内閣総理大臣を始め、多数の来賓の皆様ご臨席のもと、防衛庁長官主催による殉職隊員追悼式を厳粛かつ盛大に執りに行って頂き、ありがとうございました。 私の父は今年2月23日、操縦教官として伊勢志摩の山中で対戦車ヘリコプターの操縦教育を行っていた時、思いもしなかった航空事故で、帰らぬ人となりました。 今、在りし日の父のことを振り返ると、いつどんな状況に陥っても冷静で自分のスタイルを貫き通し、大空に憧れ、操縦教官の仕事に誇りをもち、毎朝制服をしっかりと着て、愛用の緑のカバンを手にし、母と会話を交わし、元気に仕事に出て行ったあの後ろ姿が、つい昨日のように思い出されます。 仕事から帰り、夕食の時には疲れた顔、嫌な顔もせず、いつも母や姉そして僕の話を優しい笑顔で聞いてくれ、父の温かさを身にしみて感じていました。 土曜、日曜には、母とともに買い物に出かけたり、姉の陸上競技の大会を見に出かけたり、また僕の野球にも一緒につきあってくれました。何度か父とゴルフの打ちっ放しに出かけた時、「ボールがよく飛ぶ」と自慢げに僕の方を見ていた顔は、数ヶ月たった今もはっきりと思い出されます。 無理なことだとは思いますが、一度だけでもいいから、父さんと話がしたい。そして父さんの優しい声で名前を呼んでもらいたいと思います。 父が亡くなってからというものは、僕たち家族3人は、まるで灯りが消えてしまったかのような日々を送っていましたが、皆様の暖かいご配慮、ご支援のお陰で今日を迎えることができました。 こうして追悼式に参列し、皆様が職務に励んでおられる姿に、父の姿と重なるものを感じ、勇気づけられました。 後に残された私たちは、明るく逞しく生きることが、父の遺志に応える道であると、改めて感じているところです。 最後になりましたが、地震や台風などの災害派遣や、イラクの復興支援活動など、毎日のように自衛隊の活躍を見ています。自衛隊への期待が高まってきていると思います。 どうか自衛隊の皆様、お体には気をつけて、仕事、訓練に、ますますご活躍されることを願っています。 簡単ですが、遺族を代表してご挨拶とさせて頂きます。本日はありがとうございました。 平成16年11月6日 遺族代表・中田貴士