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1105号 (2023年8月15日発行) |
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機略縦横(59)
富士学校最先任上級曹長 准陸尉 齋藤高行
「謙虚さ」と「誇り」 |
「伝統の継承」、我々下士官が担うべき永遠のテーマではないでしょうか。伝統を考える時、単にその時・その場にあった物事等をそのまま受け継ぐことではなく、それを「謙虚」にかつ「誇り」をもって受け、己らの努力を積み重ねることで、より一層輝かせなければならないと考えています。
特に最先任上級曹長は何事にも奢らず謙虚に取り組むことは勿論のこと、誇りある威厳のもと愛情に溢れる存在でありたいと考えているのは私だけではないと思います。決して楽ではない辛く厳しい道を(時代に)流されるのではなく、自らの力(足で動く)で進むことについて、(今の時代だからこそ)今一度本気で考え、行動に移す時ではないでしょうか。
己らの努力を積み重ね、愛すべき下士官に継承してゆくため我々最先任上級曹長は常に現場と隊員に寄り添いながらその礎を成すために挑戦し続けなければなりません。
「盛年重ねてきたらず」「赤心を推して人の腹中に置く」 |
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雪月花 |
高知に同年代の友人Hさんがいる。Hさんは10年ほど前に脳梗塞で倒れ左半身が不自由になっているが特別仕様の乗用車で走り回っている。若い頃から草花に親しみ名前を覚えるのが得意だったが今でも四国の山々に分け入り写真に収めている。その花をコピーした葉書をリハビリを一緒に続ける仲間たち30人に送り届けている。実物の花を見ることのできない重度療養の仲間たちに写真でもと思いつき9年が過ぎその数は1万通を超えたとのこと。筆者にも毎月2枚のペースで送って頂く、あまりにも綺麗で解説も面白いのですべて保存している。空き地や公園で見かけた花がHさんの葉書と同じだった時は無性に嬉しい。今、高知県は植物学者の牧野富太郎博士をモデルにしたと言われる朝ドラ「らんまん」が人気になっておりHさんがヒーローの万太郎にオーバーラップする、と葉書を受け取っている女性は言う。最近届いた1枚に翁草(おきなくさ)があった。高知市の牧野植物園で撮影したもので暗赤褐色の鐘形の花はとても粋で山野草愛好家に人気もあり環境省の絶滅危惧種2類に分類される希少種と言うことだ。名前の由来は花後にできる種子を老人の白髪に見立てたことから来ているとか。花言葉は「何も求めない」。このような解説付きだから楽しい知識になる、そして名もない野草と見過ごしていた「路傍の花」も宝石のように輝いて見えてくる。スマホを花のアプリにかざせば名前や来歴も出てくるがHさんの手作りからは優しい人間の気持ちが伝わってくる。Hさんのことは先ごろ地元の高知新聞に取り上げられ大きな反響があったようだ。 |
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