本シリーズは、今回と次回、退職後様々な人生を歩んでいる先輩の体験談をお送りする。参考にして頂きたい。
8年かけて教養学士の学位を取得
私は、平成22年に自衛隊生活を終え、防衛産業の顧問として第2の人生を始めた。退職後は色々なことにチャレンジしたいと決意し、手始めに「メシの種」に繋がるとは限らない分野を勉強することを思い立ち、放送大学の教養学部(教育と心理コース)を選択した。
割と余裕がある顧問職とはいえ、週末は記念行事などに出席することも多く、卒業に必要な124単位(60数課目)を習得するために、結局8年かけて教養学士の学位を取得し「心理士」の認定を受けた。
その中で学んだことは「生涯学習(リカレント教育)」の大切さである。放送大学は老若男女多様な学生を対象としているが、正直、学生の学習意欲の高さや様々な分野の経験知に驚いた。久しぶりに受けた定期考査なども結構緊張感があり、気分をリフレッシュさせる上でも役立った。その上、自分の知識や常識を客観的に知ることになって、如何に無知な分野が多いかにも思い知らされた。
資質と経験と資格の3本柱で
世の中の動きが進化する中、ごく一部のOBを除き、「元自衛官」という肩書だけではいずれ "賞味期限" が切れる。そのため、「資格」を保有することも大事なことだ。私も現役時代は「資格」の必要性はそれほど感じなかったが、一般社会では自衛隊で培った識能だけでは通用しないことが多い。また、資格取得のための講座を受講することにより、最新の社会情勢なども学べる。自衛官としての「資質」と「経験」に加えて「資格」の3本柱があれば鬼に金棒なのである。
近年、自衛隊でも隊員の「資格」取得の便宜を図っていると聞いているが、取得は早ければ早いほど有利であり、現役時代に何らかの「資格」を取っておきたいものである。「資格」の種類は山ほどあるので、将来就きたい仕事にある程度の目標を定めて、有用な「資格」を選択することが大事であろう。
「リスキリング」も増加
加えて、最近の技術革新やビジネスモデルに対応した知識やスキルを習得する「リスキリング」は時代の趨勢である。これは、保有している識能を高める「スキルアップ」とは異なり、急速に進むデジタル化などの分野への社内異動や転職を前提にスキルを身につけることである。世代を問わず、「終身雇用制度」の終焉に対する備えの一つとも言われている。
このような世の中の動きに対応するためにも「生涯学習」に対する関心と実行が益々必要になってくるだろう。
最後に、「退職後の人生を充実させるためにはやはり現役時代が大事である」ということを付け加えておこう。任務を全うしようとする使命感やチームワークを大事にする精神などは一朝一夕に育つものではなく、退職後の人生の土台であり、元自衛官としての強みであることは間違いないのである。
「人生100年時代」、私個人は「生涯一書生」を貫き、貪欲に知識を吸収したいと思いつつ、最近、キャリアコンサルタント資格も取得した。ただ、吸収する速度より忘れる速度の方が早く、もっと早く気がついておれば、と後悔もしている。(Y)
「退職自衛官の再就職を応援する会」の詳細と問い合わせ、本シリーズのバックナンバーはこちら。https://www.saishushoku-ouen.com/ |