雨の日が好きだと言う人は結構多い。水害に遭われた方がいたら申し訳ないが筆者もその組だ。特に夏場は天然のクーラーになるので老骨にはありがたい、夜もなんとなく落ち着いて寝られる。子どもの頃に買ってもらったばかりの蛇の目傘でチャンバラをして破ってしまい親に叱られたことも懐かしい。今のようにビニ傘の溢れ返っている時代とは違い蛇の目傘は貴重品だった。祖父も長持ちするようにと渋柿から作ったシブを塗ってくれた。母親は傘の開き方やたたみ方まで教えてくれた、そばに人のいる時、すれ違う時には特に気を付けるように言われた。今になって気が付いたが母親が言いたかったのは「傘かしげ」かもしれない。狭い道で行き交うときには相手に滴が掛からないように自分の方に傾ける。古くからの日本人のたしなみだったようだ。越川禮子さんのエッセー集「江戸しぐさ」にも「肩引き」(人混みや狭い道で人とすれ違う時にお互いに肩を後ろへ引きぶつからないようにする)などと共に紹介されている。現代の「傘かしげ」はまったく反対、自分に滴が掛からないように相手の方に傾ける、向けられるこちらには滝のように流れてくる。若いきれいな女性に平気でやられるので悲しくなる。肩引きもしなくなったらから怖いお兄さんのけんかのようにもなる。昔からのしぐさはいつまでも残しておきたい。(所谷) |