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自衛隊ニュース   第901号 (2015年2月15日発行)
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防衛医学セミナー開催

 2月5日、防衛省A棟講堂において、「平成26年度防衛医学セミナー」が開催された。「国際貢献と自衛隊衛生」をメインテーマに講演やパネルでディスカッション等が行われ、雪が降る悪天候の中800人近くが参加、熱心に耳を傾けた。
 セミナーは、左藤章防衛副大臣、本セミナー長を務める自衛隊横須賀病院長・柳田茂樹海将補の挨拶に続き、国際協力機構(JICA)理事長・田中明彦氏が「国際社会における日本」という題目で特別講演を行った。田中氏は戦後70年を3期に分け、変化する国際情勢と日本が果たしてきたODA(政府開発援助)等の国際協力について豊富な例を提示しながら解りやすく解説。21世紀のグローバル化や多様性等から生じる多くの課題について「ひとつの組織だけではなく、防衛省・自衛隊と協力を進めて取り組んで行きたい」と述べた。
 午後から行われたパネルディスカッションでは前統合幕僚監部主席後方補給官付後方補給室・山崎俊宏2陸佐、自衛隊中央病院診療科・中岸義典1陸佐、同・吉井秀彦2海佐、航空機動衛生隊隊長・辻本哲也1空佐の4人のパネラーと、特別発言として統合幕僚監部防衛計画部防衛課防衛交流班長・西田勝利1海佐が「国際貢献と自衛隊衛生—何が求められているか?—」をテーマに、過去の実任務と訓練における経験を基に発表を行った。
 平成25年に台風30号(ハイヤン)で壊滅的被害を受けたフィリピンに、国際緊急援助隊の先遣調査チームとして派遣された山崎2陸佐は、災害直後の混乱の中での情報収集と現地ニーズの把握に困難を極めた事に触れ、「一方的な支援ではなく、地元からの協力が得られるような調整が必要」と教訓を語った。
 また、衛生を主体として発展途上地域を周る多国間訓練「パシフィックパートナーシップ」で平成24年、25年に医療チーム長として活動した吉井2海佐は「活動を通した自衛隊のプレゼンスの増大」「地域ニーズに即した医療チーム構成への体制整備」を成果として挙げると共に「統合運用の重要性」「事前視察の強化による的確なニーズアセスメントの把握」等を今後の課題とした。その後の総合討論での聴講者から鋭い質問と活発な議論を受けて西田1海佐が「自衛隊が行う医療活動は日本人が得意とする分野の国際貢献なので、この道を究めてほしい」と会場の衛生隊員にエールを送った。
 最後のパートとして直前に教育講演を行った学習院大学経済学部長・遠藤久夫氏に人事教育局・中野惠衛生官、自衛隊中央病院副院長・上部泰秀陸将、同福岡病院院長・大鹿芳郎陸将補、同仙台病院院長・城谷寿樹陸将補、同横須賀病院副院長・徳永徹二1海佐、座長の同中央病院副院長・平田文彦海将が加わり「地域医療のビジョンと自衛隊病院のあり方」をテーマにした座談会が行われた。各地域における4病院の現状と課題を取上げて議論した結果、「各自衛隊病院が一般急性後期医療の提供を目指す」「中核病院の一部の病棟では高度急性期に該当する体制整備も視野に入れる」等が今後の自衛隊病院のあり方として示された。


比豪越要人と会談
中谷大臣

 1月29日から2月4日の間、各国の要人が防衛省を訪れ、中谷元防衛大臣と会談を行った。
◆フィリピン国防相
 1月29日、フィリピン共和国のボルタイレ・ガズミン国防大臣と日比防衛相会談を行った。中谷大臣は会談で「両国は海洋国家であり、共通の戦略・利益を有している戦略的パートナーシップだ」と述べ、これに対しガズミン大臣は「共通の安全保障上の懸念を有している」と応じ、南シナ海及び東シナ海の諸問題は、国際法に則り平和的に解決すべきであり、公海における航行及び上空飛行の自由の重要性について改めて確認した。また、ガズミン大臣は、一昨年にフィリピンで壊滅的被害をもたらした台風ハイヤン発生時の国際緊急援助活動への自衛隊の参加に対して感謝の意を述べた。
 両大臣は今後、ハイレベル・次官級による交流の継続、人道支援・災害救援分野や海洋安全保障における能力構築支援、訓練を通じた協力・交流の強化、防衛装備・技術能力における可能性の模索等、両国防衛当局間の協力及び交流を新たな段階へと発展させる事で一致し、「防衛省とフィリピン国防省との間の防衛協力・交流に関する覚書」に署名した。
◆豪特命全権大使
 2月2日は、ブルース・ジェームズ・ロス・ミラー駐日オーストラリア特命全権大使の表敬を受けた。ミラー大使はオーストラリア外務貿易省きっての知日派で、シドニー大学で日本語を学び、一等書記官、政務担当公使、大使(2011〜)として計10数年の在日経験を有し日本語も堪能。打ち解けた雰囲気のなか互いの地域情勢分析について意見交換するなどした。
 また、当日はイスラム過激派組織ISILの手で日本人ジャーナリスト後藤健二氏が殺害され一夜明けたタイミングであり、ミラー大使はこの悲劇に哀悼の意を表し、中谷大臣は「ISILについてのオーストラリア政府からの情報提供に感謝します」と述べ、「貴国との連携を強化したい」と対テロで今後も一層協力を深めていくことを要望した。
◆ベトナム国防次官
 2月4日、ベトナム国防次官兼人民海軍司令官グエン・ヴァン・ヒエン海軍上将の表敬を受けた中谷大臣は「貴国の海域であり我が国のシーレーンに当たる東シナ海の安定は日本とASEAN諸国にとって大事だ」とし「昨年3月に締結した「広範な戦略的パートナーシップ」に基づき、2国間訓練、艦艇の寄港を通じた海軍主管の交流やキャパビルで海洋安全保障の分野における関係を強化している」と両国の友好関係を強調した。それに対しヒエン次官は「防衛省・海上自衛隊から温かい歓迎と効率的な協議を行って頂き感謝でいっぱいです」と応じた。


岩崎政策参与が講話
〈航安隊〉

 空自航空安全管理隊(司令・橋本進空将補=立川)は2月4日、前統合幕僚長の岩崎茂防衛大臣政策参与を講師として招き「我が国の安全保障の将来と課題」をテーマにした部外講話を実施した。
 講話には、航安隊員を中心として入校中の第150期飛行安全幹部課程の学生11人を含む立川分屯基地所在部隊の約150人が参加し「講師の前統合幕僚長を始めとする豊富な経験と知見を基にした、我が国の安全保障に係る全般情勢、近年の安全保障上の課題など」に関する講演を熱心に聴講した。講演後の質疑応答も活発に行われ、また後輩隊員に望むこととして激励もされ、参加隊員からは「近年における安全保障上の課題について理解できた」、「わかりやすい講話で興味深く聞けた」などの所感が寄せられ、航安隊も「隊員の防衛教養に係る知識の向上、自学研鑽の一助となった」としている。


27年度秋以降に新設の「防衛装備庁」とは?

 防衛装備庁(仮称、以下・装備庁)は、防衛省改革の一環として防衛省内の装備品取得部門を集約し、今秋以降に新設される。
 装備庁は、既存組織である、装備品等の調達実務を担う装備施設本部・装備品等の研究開発実務を担う技術研究本部・内局の経理装備局・陸海空各幕(装備部と技術部(陸幕は開発官))の6機関から計13の装備品取得部門を集約して、1780人(事務官・技官1373人、自衛官407人)の人員で今秋以降平成27年度中の新設を予定している(※1)。
4つの機能
 装備庁の機能は主に、プロジェクト管理機能(※2)、装備協力・装備技術管理機能、研究開発機能、装備品等の調達機能の4つである。
 そのうちプロジェクト.管理機能は、装備庁設置の最大の目玉であり、莫大な予算を要し厳格かつ柔軟なコスト管理が求められる主要装備品について、統合的見地を踏まえたプロジェクト管理を行う体制を強化するものである。プロジェクト管理は、現在でも次期多用途ヘリ(UH—X)などに取り入れられているが、現状のプロジェクト管理チームは常設ではなく、各機関から人員を一時的に集めているにすぎず、組織的基盤がしっかりしていなかった。装備庁にはプロジェクト管理部(仮称)が置かれ、単一かつ常設の部署がプロジェクト管理を行うことから、より効率的に業務を行うことが可能となる。プロジェクト管理は、ライフサイクルコストの高いものや、国際共同開発を行う案件などを中心に行うことを想定している。
 装備庁には装備政策部(仮称)の下に国際装備課(仮称)が置かれ、防衛装備移転三原則に基づき今後ますます活発化する装備取得分野の国際化に対応する。国際共同開発・生産に係る、諸外国との覚書や価格、教育プログラム、維持整備に関する交渉・協議・調整等を行うほか、海外拠点の整備、海外へ移転する装備品の移転案件増加に伴う厳格な技術管理を行う。
 研究開発機能としては、部隊の運用ニーズを適切に反映した研究開発、国内外先進技術分野を含む技術動向の分析や、先端技術研究を行う機関へのファンディング(資金援助)等を通じた大学・研究機関等との連携強化、先進技術の発掘、さらには、これまでの技術成果である知的資産の管理運営を行う。装備品等の調達機能としては、より現状に適した契約制度の検討等による調達業務の効率化、調達改革へのより効果的な対応を実現しつつ防衛生産・技術基盤の維持・育成を両立する。
教育、監察・監査機能強化
 装備庁にはプロジェクト管理要員や国際共同開発・生産等、新たな分野に精通したプロフェッショナルな人材を育成する教育部門を新設し、大きな予算を扱う装備庁の職員に対し法令遵守に係る教育等も行う。また、庁内業務の更なる透明性、公平性を期するため、庁内に新設する監察監査・評価官(仮称)による内からのチェック、増員される防衛監察本部、部外有識者による防衛調達審議会といった既存組織による外からのチェック等重層的な体勢で臨む。
※1 装備庁へ集約される6機関のうち装備施設本部(定員607人)は施設関連を除く部門が装備庁に移行。技術研究本部(定員1093人)は各地の研究所・センター・試験場も含め全てが装備庁に移行する。内局の経理装備局は装備政策課、システム装備課、艦船武器課、航空機課及び技術計画官の4課1官が装備庁に移行し、残る課と官、装備施設本部の施設部門は再編され、大臣官房及び平成27年度新設の整備計画局(仮称)に移行する。各幕の装備部・技術部のうち装備庁に移行するのは装備品取得に関わる部門で、残る部門はそれぞれ各幕の後方計画部(仮称)に再編される。
※2 従来は装備品のライフサイクル(構想→研究開発→量産取得→運用・維持・整備→破棄)の各段階で担当部署が異なっていたが、単一の部署であるプロジェクト管理部が全段階をコスト管理等の観点から担当することにより、一貫性のあるコスト管理が可能となる。プロジェクト管理チームは一定の基準を超えるコスト上昇が認められた場合に、その原因分析、事業継続に関する検討、対処方策の検討を実施する。


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