2月5日、防衛省A棟講堂において、「平成26年度防衛医学セミナー」が開催された。「国際貢献と自衛隊衛生」をメインテーマに講演やパネルでディスカッション等が行われ、雪が降る悪天候の中800人近くが参加、熱心に耳を傾けた。
セミナーは、左藤章防衛副大臣、本セミナー長を務める自衛隊横須賀病院長・柳田茂樹海将補の挨拶に続き、国際協力機構(JICA)理事長・田中明彦氏が「国際社会における日本」という題目で特別講演を行った。田中氏は戦後70年を3期に分け、変化する国際情勢と日本が果たしてきたODA(政府開発援助)等の国際協力について豊富な例を提示しながら解りやすく解説。21世紀のグローバル化や多様性等から生じる多くの課題について「ひとつの組織だけではなく、防衛省・自衛隊と協力を進めて取り組んで行きたい」と述べた。
午後から行われたパネルディスカッションでは前統合幕僚監部主席後方補給官付後方補給室・山崎俊宏2陸佐、自衛隊中央病院診療科・中岸義典1陸佐、同・吉井秀彦2海佐、航空機動衛生隊隊長・辻本哲也1空佐の4人のパネラーと、特別発言として統合幕僚監部防衛計画部防衛課防衛交流班長・西田勝利1海佐が「国際貢献と自衛隊衛生—何が求められているか?—」をテーマに、過去の実任務と訓練における経験を基に発表を行った。
平成25年に台風30号(ハイヤン)で壊滅的被害を受けたフィリピンに、国際緊急援助隊の先遣調査チームとして派遣された山崎2陸佐は、災害直後の混乱の中での情報収集と現地ニーズの把握に困難を極めた事に触れ、「一方的な支援ではなく、地元からの協力が得られるような調整が必要」と教訓を語った。
また、衛生を主体として発展途上地域を周る多国間訓練「パシフィックパートナーシップ」で平成24年、25年に医療チーム長として活動した吉井2海佐は「活動を通した自衛隊のプレゼンスの増大」「地域ニーズに即した医療チーム構成への体制整備」を成果として挙げると共に「統合運用の重要性」「事前視察の強化による的確なニーズアセスメントの把握」等を今後の課題とした。その後の総合討論での聴講者から鋭い質問と活発な議論を受けて西田1海佐が「自衛隊が行う医療活動は日本人が得意とする分野の国際貢献なので、この道を究めてほしい」と会場の衛生隊員にエールを送った。
最後のパートとして直前に教育講演を行った学習院大学経済学部長・遠藤久夫氏に人事教育局・中野惠衛生官、自衛隊中央病院副院長・上部泰秀陸将、同福岡病院院長・大鹿芳郎陸将補、同仙台病院院長・城谷寿樹陸将補、同横須賀病院副院長・徳永徹二1海佐、座長の同中央病院副院長・平田文彦海将が加わり「地域医療のビジョンと自衛隊病院のあり方」をテーマにした座談会が行われた。各地域における4病院の現状と課題を取上げて議論した結果、「各自衛隊病院が一般急性後期医療の提供を目指す」「中核病院の一部の病棟では高度急性期に該当する体制整備も視野に入れる」等が今後の自衛隊病院のあり方として示された。 |