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第901号 (2015年2月15日発行) |
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雪月花 |
1月もお終いのころ年始回りの途中たまたま港区の愛宕神社の前に出た。23区内で唯一の自然のトンネル・愛宕トンネルを抜けたところだ。徳川家康が江戸防火のために祀ったと言われるが、筆者はそのことよりも子どものころ講談で聞いた愛宕神社に馬で駆け上がる出世の石段に興味をもっていた。家光一行が通りかかった時、山頂の境内に咲く梅の枝を馬に乗って手折って来いと家光公が誰にともなく命じた。段数こそ86段と短いが傾斜度数40度、下から見上げると覆い被さる壁のようになっている。現在でも上から見下ろすと覗き込むようになりまるで断崖だ、吸い込まれそうになる。足を踏み外したら間違いなく下まで止まらないだろう。誰もが躊躇する中、丸亀藩の曲垣(まがき)平九郎が馬に鞭を入れて飛び出していった。子どもの頃聞いた講談ではここがヤマ場、ラジオに引き込まれたことだった。手折った梅の枝を家光公に献上した平九郎はその後順調に出世を進めていく。以来この階段を出世の石段と呼ばれ、山頂の(と言っても海抜26メーターだが自然の山では23区トップ)愛宕神社やJOAK NHKがラジオの第一声を発した記念館などに上る人が絶えない。昨年秋来日されたオランダのウイレム・アレキサンダー国王王妃両陛下も登頂され、馬術の盛んな国の国王らしく平九郎のことを熱心に聞いていたらしい。四国の小藩出身の曲垣平九郎も国際人になった…? ことしも境内では平九郎が手折った梅の花が四方に爽やかな香りを届けている。 |
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