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2008年10月1日号
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追悼9.11「テロとの闘い」継続の決意新たに
TV電話で 補給支援部隊を激励
テレビ電話で会談する林大臣(左)と北村副大臣。スクリーンには中村指揮官の姿が映し出されている(防衛省・海幕会議室で)
アメリカに対する同時多発テロから7年を迎える9月11日、防衛省では「テロとの闘い」への取組みの一環として大臣訓示やインド洋部隊指揮官とのテレビ電話会談などが行われた。大臣訓示では9・11テロ以降の国際社会における安全保障環境について触れるとともに、インド洋の補給支援活動をはじめとするテロに対しての防衛省・自衛隊の取組みを述べ、「テロとの闘い」を継続するという強い決意を改めて表明した。また林大臣は同日、インド洋派遣部隊指揮官とのテレビ電話会談を行ったほか、海上自衛隊東京音楽隊の演奏会にゲストとして出演し、バンド演奏した。
林大臣の訓示は防衛省A棟講堂で行われ、初めに9.11テロ犠牲者とその遺族に対して哀悼の意を表したあと、国際社会のテロに対する取り組みなどについて述べた。日本が行っているインド洋における給油活動については、各国から高い評価を受けているとした上で、「洋上での補給は過酷な環境の下、高い集中力と忍耐を要する活動。我が国はこうした活動を安定的に継続できる数少ない国の一つ。だからこそ、自衛隊がそこから離脱することはあってはならない」とテロに対する姿勢を示した。また、訓示は全国の基地・駐屯地でも同時に放送され、林大臣は「我々は強い決意の下でテロとの闘いを自らの問題として、不断の努力を続けていかなければならない。隊員諸官の一層の精励と研鑽に期待する」と隊員らを激励した。
午後6時、林大臣は北村副大臣とともにインド洋派遣部隊指揮官の中村雅樹1海佐とテレビ電話で会談した。中村指揮官は現在の活動状況について「作戦海域に入って約1カ月経ったが、総員は元気にやっている」と報告。林大臣は「(補給支援)活動が我が国の誇り、評価の対象になっている。引き続き任務にまい進していただきたい」と述べた。
続いて、現地の温度は午前中から40度近くまで上がるという厳しい環境の中で頑張れるエネルギーの源は?との質問を受けた中村指揮官は、「使命感と船乗りとしての誇り。私たちの任務はインド洋上で海上阻止活動に従事している各国の艦艇に対し、補給支援をしているが、さまざまな艦艇が『はまな』を頼りに寄ってくる。それらの国に対して、いつでもどこでも補給活動を行うことをモットーとして支援活動をしている。それらを通じて、テロとの闘いに一丸となって取り組んでいるということの誇り・使命感をひしひしとを感じている」と答えた。
最後に林大臣から「活動の意義、重要性を国民に説明するのが皆さんを送り出している我々の責任」との言葉が聞かれると、中村指揮官は「隊員一同大きな励みになる。9.11テロの悲劇を二度と繰り返さないということをしっかりと受け止めたい。海上補給支援部隊が一丸となって気持ちを新たに補給支援活動に取り組んでいく」と気持ちを新たにした。
また、この日の一連の行事の一つとして、海自東京音楽隊(隊長・熊崎博幸2海佐)による演奏会がA棟講堂で開かれた。演奏会前半は、9.11テロに関連する「エターナル・ファーザー」、映画「バックドラフト」からのメドレー曲、「千の風になって」が選曲され、スクリーンに岸政務官がトリビュートセンターで献花する姿などが映されるなか演奏された。続いて林大臣が参加しているバンド「Gi!nz(ギインズ)」がゲスト出演した。メンバーは林大臣のほか、浜田靖一衆院議員、小此木八郎衆院議員、松山政司参院議員で、平和を願う歌や日本の美しさが表現された3曲を演奏した。
その後は東音が再登場し5曲を演奏、会場に訪れた隊員・職員ら約400人を楽しませた。
岸信夫政務官は9月10日、ワールド・トレード・センター跡地(いわゆる「グラウンド・ゼロ」)を視察するとともに、トリビュート・センター(Tribute WTC Visitor Center)において「9.11」犠牲者に対し献花し、追悼の意を表した。同センターにおいて、日本人を含めた犠牲者遺族と対面し、7年を経ても癒えない遺族の悲しみを痛感。遺族に対し、岸政務官から「9.11」は国際社会全体に対する卑劣なテロ行為であり、このような悲劇が繰り返されぬよう、我が国も国際社会と一体となって『テロとの闘い』に取り組んでいく決意である旨が述べられた。岸政務官によるグラウンド・ゼロの視察及び献花に対し、遺族からは謝意が表された。また岸政務官は9月11日、米国防省において実施された追悼式典に参加した。政務官による本式典への参加については、米国防省及び統合参謀本部より謝意が表された。
9月11日、林大臣訓示
2001年9月11日は、21世紀の世界において文明社会の安全保障を担う全ての者にとって、決して忘れることのできない日であります。煙を上げて崩れ落ちる世界貿易センターと逃げ惑う人々の映像を、あれから私たちは、何度、目にしたことでしょう。
あの日から7年が経過しました。私は今日この日に、あのテロの悲惨さを思い起こし、隊員諸官とともに、日本が21世紀における安全のために「テロとの闘い」を継続するという強い決意を改めて共有すべく、訓示を行います。
テロは、我々が培ってきた文化、価値観、人権、そして大事な人々との生活を破壊するものです。9.11テロの被害者は、3000人にのぼります。アメリカの人々だけではなく、ヨーロッパ、アジア、中東、中南米など、実に60カ国以上の国の人々の貴重な命が失われました。我々日本人同胞も、24人が犠牲となりました。これは、アメリカ、イギリスに次ぐ大きな犠牲です。犠牲となられた全ての方々の御冥福と、御遺族への深い哀悼の意をここに表明したいと思います。
9.11テロの惨禍を眼にしたとき、21世紀は、このようなテロが頻発する凄惨な世界になるのではないかと危惧を抱いた方も少なくないでしょう。その後の7年間をみれば、各国が自国の警備を強化し、テロとの闘いに力を合わせることにより、かなりの程度でテロ活動を抑えることに成功しているといえましょう。しかし、依然として、世界中でテロ事件は後を絶ちません。ウサマ・ビン・ラーディンなどのアルカイダの指導者や残党は、今もアフガニスタンとパキスタンの国境地域に潜伏していると言われています。テロリストは、抑止の効かない相手であり、国家が軍事力のみならず、様々な手段を組み合わせて、地に足の着いた努力を粘り強く行う必要があり、決して妥協は許されないということを、隊員諸官におかれては、改めて認識して頂きたいと思います。
9.11テロの翌12日、国連安全保障理事会は、決議第1368号を全会一致で採択し、国際社会に対して、テロ行為を防止・抑止するための努力を呼びかけました。当時、アフガニスタンは、アルカイダの本拠地となっていました。その拠点に対し、多国籍軍による「不朽の自由」作戦が敢行され、続いて、国際治安支援部隊(ISAF)による治安の維持や復興支援が実施されてきました。こうした国際社会の取組みは、今この時点においても休むことなく続けられています。国際社会は、アフガニスタンにおいて900名を超える犠牲者を出しながらも、むしろ、派遣兵士を増派しております。イラク戦争に反対したドイツ・フランスもその例外ではありません。アフガニスタンは、「テロとの闘い」の中核であり、アフガニスタンを二度とテロの温床としないためにも、今、国際社会が連帯してその努力を結集させているのです。
では、こうした国際社会における努力の中で、我が国は何をなすべきでしょうか。これまで我が国は、アフガニスタン復興のため、既に14億ドルを超える支援を実施しています。しかし、我が国の協力の在り方として、お金を出すだけでよいとは、私は思いません。かつて湾岸戦争に際して、130億ドルもの資金を拠出していながら、国際社会の共感を得ることができなかったことを忘れるべきではありません。ともに汗をかくことによって初めて、国際社会の連帯を示すことができるのです。その連帯に空白ができれば、テロはそこに付け入ってくるでしょう。
「テロとの闘い」は、インド洋上においても行われています。インド洋で行われている海上阻止活動は、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダやイスラム国であるパキスタンなどが参加し、テロリストが海をわたって世界各国に活動の場を広げるのを防いでいます。そして、世界のアヘンの9割以上を生産するアフガニスタンから麻薬が輸出され、それが資金源となって、不法に武器がアフガニスタンへと流入するのも阻止しているのです。各国の艦船は、日本全土が全て収まるほどの広域な海域で活動しています。このため、洋上で燃料を補給しなければ、作戦効率が下がってしまいます。海上自衛隊の給油活動が、各国から高く評価され、感謝される所以です。洋上での補給は、過酷な環境の下、高い集中力と忍耐を要する活動です。我が国は、こうした活動を安定的に継続できる数少ない国の一つです。だからこそ、自衛隊がそこから離脱することは、あってはならないのです。
一方で、もしも、海上阻止活動が行われなくなり、インド洋がテロリストの海になったらどうなるでしょうか。我が国は、その石油輸入の約9割を中東に依存しています。1日往復約90隻ものタンカーがインド洋を渡り、中東と日本の間を航行しています。更に、今年に入り、インド洋において海賊事案が増加しています。4月には、日本船籍の船もアデン湾で海賊に襲われました。この時、救援に駆けつけたのは、日本が給油したことのあるドイツの船でした。このように、海上阻止活動は、中東と我が国を結ぶ海域の平和と安全に大きく貢献すると同時に、国際的な連携を培って日本の国益に資するものとなっています。このグローバル化した時代に、日本の安全は、日本一国で確保できるものではなく、世界の安定のための国際的な取組の中でこそ実現されるものです。
国際テロに立ち向かうには、国家が、その持てるあらゆる手段を用いて粘り強く地道に努力する必要があることは、先ほど述べたとおりです。防衛省・自衛隊においても、海上自衛隊による補給支援活動だけがこの「テロとの闘い」を支えているのではありません。陸海空各自衛隊が平素から行っている情報収集や警戒監視のための活動に加え、いざというときに備えた日々の訓練にも、遺漏なく取り組まねばなりません。テロは、いつどこで発生するか予測できないものであるからこそ、陸海空自衛隊全体で、常日頃から、テロへの備えに万全を期す必要があります。
今日、9月11日は、国際社会にとって「テロとの闘い」の原点とも言うべき日です。我が国は、国際社会の責任ある一員として、引き続きテロと闘っていかなければなりません。これは、我々の忍耐力が試される苦しい闘いです。だからこそ、我々は、強い決意の下で、テロとの闘いを自らの問題として、不断の努力を続けていかなければなりません。隊員諸官の一層の精励と研鑽に期待し、私の訓示といたします。
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