南海トラフ巨大地震を想定した内閣府による平成25年度広域医療搬送訓練の医療モジュール搭載船実証訓練が8月31日、三重県尾鷲港沖の海上に展開する海上自衛隊輸送艦「しもきた」(排水量8,900トン)を拠点に実施された。
訓練は洋上に展開した医療拠点の医療機能の有効性を確認するとともに、将来に向けた課題や問題点を検証することを目的とし、広島県の災害派遣医療チーム(DMAT)隊員、陸上自衛隊中部方面衛生隊隊員など約90人が参加した。この訓練は、平成23年の東北大震災の教訓から、大震災などの緊急時に陸上の医療施設が無力化され、患者輸送も困難な状況での緊急医療態勢を確保するために、海上の船舶を洋上医療拠点として患者輸送、応急措置・安定化を図るなどの訓練を実践に即して行なわれた。
8月30日午前1時頃、マグニチュード9級の南海トラフ巨大地震が発生したとの想定で、その後36時間が経過した31日午後1時に今回の訓練が開始された。
愛知、三重、和歌山などで甚大な被害がでたとの想定のもと、被災地から傷病者(模擬患者17人)を乗せたドクター・ヘリなどが尾鷲港沖に停泊する「しもきた」の甲板に次々と着艦。傷病者はエレベーターで艦内の格納庫(第4甲板)に搬送され、待機していたDMATの医師や看護師、衛生隊の医官や看護官らによる応急措置が施されていく。
「重症、中等症、外傷、慢性疾患」などに区分された傷病者のうち、重症で緊急手術が必要と判定された患者は、第4甲板内に設置された陸上自衛隊野外手術システム(医療モジュール)の手術車のなかで緊急手術を受ける、などの訓練場面が次々と繰り広げられた。
第4甲板には病床50床(内7床は手術前・手術後の集中治療・ICU用)に加えて、滅菌車、手術車、補給車、?線設備などの医療モジュールがところ狭しと搭載、展開されており、その間をDMAT関係者や陸自衛生隊関係者、「しもきた」乗員たちがあわただしく動き回っていた。
午後3時、陸自の野外手術システムを海上船舶の中に展開、設置して行った初めての洋上訓練は無事に終了。DMATと連携を確認、問題点を把握した。 |