2月16〜20日まで海上自衛隊幹部学校(学校長・山下万喜海将=目黒 以下、海幹校)は、第18回アジア太平洋諸国海軍大学セミナーを開催した。同セミナーは平成10年から、アジア太平洋諸国海軍の大佐クラスの教官・研究者や公的機関の研究員などを招き、研究発表・討議や市ヶ谷、横須賀での部隊等研修を通じ、相互理解を深め防衛交流を促進する事などを目的に毎年行われている。
海幹校における主要行事の一つである同セミナーの開催意義は大きく、海幹校創立60周年記念式典に兼ねた開会式における挨拶では、山下学校長が「知学一致が私の方針です。(教育・研究機関たる海幹校のような組織には)知識の集積と知恵の発信の両輪が無くてはならない。大いに議論し、相互理解を深めてもらいたい」などと要望した。
また、開会式に続く基調講演では、米海軍大学校長・ハウ少将が「各国海軍がアジア太平洋、世界各地でどのような役割を果たすことができるのか、海洋におけるパートナーシップをどのように強化できるのかについて話し合いたい」と期待の言葉を寄せた。
今年は14カ国(※1)と海洋政策研究財団(OPRF)、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)からパネリストが参加し、海幹校のパネリストである防衛戦略教育研究部課程管理室長・寺田博之1海佐と共に、メインテーマ「『開かれ安定した海洋』の追及」に即した4つのサブテーマ(※2)から一つを選択して研究発表・質疑応答が行われた。
同セミナーは当初、各国海軍大学等の教育機関の取り組みについて、互いに紹介することからスタートしたが、ここ数年はHA/DR(人道支援・災害救難)など各国海軍共通の最新課題を随時研究テーマに採用し活発な議論が行われている。今回掲げられた、領海などを巡る諸問題も近年たびたびテーマに取り上げられている重要課題だけに、各国海軍の最新事情や方針を知り得る貴重な機会となった。
※1 豪、ブルネイ、カナダ、フランス、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、英、アメリカ。英国海軍は初参加
※2 サブテーマ「世界の海洋安全保障環境に影響を与える要因への対処」(1)法とルールが支配する海洋秩序の実現策(2)排他的経済水域(EEZ)における衝突及び不測事態への発展を回避するための軍事活動のあり方(3)MDA(Maritime Domain Awareness=海洋領域認識。安全保障、安全、経済などに影響を及ぼす地球規模の海洋環境に関する様々な構成要素の効果的な理解)における海軍の役割及び国際協力のあり方(4)海洋安全保障に必要な防衛技術協力 |