昭和38年に隊員間の助け合いの組織として、自衛隊員自らが立ち上げた防衛省職員生活協同組合(以降「防衛省生協」)が今月で創立60周年を迎えた。なぜ比較的小さな組織でありながら隊員間で定着し60年もの長い間愛され続けているのか。その理由を理事長の武藤義哉氏に伺った。(聞き手・本紙 吉田佳子)
「防衛省生協」は隊員自らが立ち上げた組織
ー まずは、「防衛省生協」設立のきっかけを教えて下さい。
理事長 昭和38年3月に「防衛庁生協」(当時)は産声をあげました。60年前というと、自衛隊を巡る社会的環境が大変厳しかったことに加え、当時は未だ木造住宅も多く火災により年間で相当数の被害を自衛隊員も受けていました。
また、保険の種類も今ほどありませんでしたので自衛隊員にとっては保険に入りづらい、種類や値段で選びにくい状況でした。それならば「自分たちで立ち上げよう。事務的経費を抑えつつ営利を追求しなければ、比較的安い形で提供できる。そんな組織を作ろう」というのがきっかけです。
「防衛庁職員生活協同組合設立趣意書」には設立発起人として、防衛庁(当時)の内局・各幕等の職員等21名の名前が記されています。
大きくなくても良いサービスを
ー 保険について、60年前と一番変わったことは何ですか。
理事長 自衛隊を巡る環境は大きく改善され、防衛省職員・自衛隊員にとって保険の選択肢が随分増えてきました。「防衛省生協」としても火災共済事業からスタートしましたが、生命・医療共済や退職者生命・医療共済を追加する等大きく成長していきました。大きな保険会社に飲み込まれることなく60周年を迎えられたのは、小さい組織ながらも良いサービスを提供できてきたからではないかと思います。
ー 以前は、退職自衛隊員は共済に加入できませんでしたよね。
理事長 はい。そこで平成2年に退職火災・災害共済の取扱いを、同5年には退職者生命・医療共済事業を始め、退職自衛隊員の方にも入って頂けるように拡大していきました。その退職者生命・医療共済ですが、最近では令和2年の改定で満期の85歳への引き上げや、満期までの保障期間が長くなったことにより結果として1か月あたりの掛金が割安になる等、退職自衛隊員にとってより魅力的な内容に進化しています。
ー 前回のインタビュー(2022年3月15日)の際、事務官の方にももっと加入してもらいたい、ということが大きなテーマでしたね。
理事長 実際、事務官の方の加入が劇的に増えたわけではありませんが、各地区責任者や地域担当者の努力で、いろいろな所で説明させて頂く機会が増えています。地道に「防衛省生協」の良さを知ってもらって、徐々に成果を挙げていきたいと思います。
「コスパに自信あり!」
ー ポスターなどで見かける「コスパに自信あり」とはどのようなことですか?
理事長 例えば、「生命・医療共済」では病気も怪我も両方カバーしているにもかかわらず、掛金は割安なんです。このようなコスパのよさは「防衛省生協」の事業全体に言えることです。では、なぜそのようなものが提供できるのか。それは事務的経費を安く抑えているからです。私たちは、他の保険会社のように多額の広告宣伝費や多くの外交員を導入して、加入者を際限なく増やして行く必要がありません。すでに多くの自衛隊員の方に組合員になってもらっていますし、「防衛省生協」は「加入者相互の助け合いの組織」として利益を追求する必要がないからなのです。組織の規模としては決して大きくはありませんが、このような努力でコストパフォーマンスの良い共済を提供できているのです。ぜひ皆さま自身で内容を確かめて頂きたいと思います。
ー そういえば、各駐屯地や基地では、地域担当者の皆さんは楽しそうに仕事していますね。
理事長 おかげさまで、組合員の方には「防衛省生協」を評価してもらっています。地域担当者は実際に組合員の方と接する中で、その評価を実感し自身のモチベーションアップに繋がっているのではないでしょうか。
ー 一昨年、小手指に開設したコールセンターの評判はいかがですか?
理事長 人件費等を最小限に抑えるため、残念ながら全ての駐屯地・基地等に地域担当者を配置できていませんが、そのような地域の組合員の方々にはコールセンターを大変よく活用してもらっています。地域担当者が常駐していないところからはもちろん、常駐していても日によっては不在になるといったところからもご利用頂いています。対応スタッフは設立時は4名で今は6名になりましたが、今後もさらに拡充し発展させる予定です。
60周年は「信頼の証」
ー 創立60周年を機に「防衛省生協」のブランド化を推進すると伺いました。
理事長 ひとつの例として、現在、新しいロゴデザインを検討中です。入隊時等に加入いただいても、その後防衛省生協のことを忘れてしまう方も以外に多いのではないかと思います。しかし結婚、出産、マイホームの購入等、人生の節目で保険を検討する際、増口や家族の加入を含めた選択肢として「防衛省生協」をぜひ思い出してもらいたい。印象に残るロゴを作ることで、皆さんの記憶の中で「防衛省生協」の存在感を高められたらと思っています。どのようなロゴになるのかご期待下さい。
ー 最後に60周年を迎えるにあたって一言お願いします。
理事長 比較的小さな組織である「防衛省生協」が拡大しながら60年もの長い間続いてきたということは、我々のコスパの良い共済が組合員の方の信頼を得てきた、まさに「信頼の証」が60年続いてきたことに他ならないのではないでしょうか。ぜひこれからも皆様のご理解とご協力をよろしくお願いしたいとともに、さらに我々の良さを知って頂きたいと思います。
ー 本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。
創立して60年間ずっと「組合員により良い保障を届けたい」という思いのもと、自衛隊員やその関係者のためだけの保障制度に真摯に向き合ってきた「防衛省生協」。その努力の結果、コスパに優れた共済は多くの隊員等に評価され続けていることが今回のインタビューで再確認できた。今後も「防衛省生協」の良さが多くの人に浸透していくことを期待したい。(吉田) |