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スペーサー
自衛隊ニュース   1095号 (2023年3月15日発行)
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雪月花
 「君たち、中国に勝てるのか」(産経新聞出版)。すごい題名の新刊が評判を呼んでいる。元陸幕長の岩田清文さん、元海幕長の武居智久さん、元空自補給本部長の尾上定正さん、元国家安全保障局次長の兼原信克さんの4氏による対談をまとめたものだが発刊2カ月で3版を重ねる反響と聞いた。4氏が討論を行ったのは昨年の秋からの2回。ロシアによるウクライナ侵攻で世界中が安全保障に対する関心が高まっていた時だけに、斯界の権威者による発言には誰もが傾注しているようだ。昨今の中国の動きから見ても台湾有事が4氏の対談でトップテーマになるのは当然だが、地政学的にも連鎖して起きるだろう日本有事にも米国との同盟をからめて限りない懸念を示している。ーーもし台湾戦争が始まれば先島諸島の西端にある与那国島は台湾から110キロしか離れていない、東京-熱海間の距離では直接戦闘区域に巻き込まれてしまう(兼原氏)。昨年8月4日に中国は与那国島から80キロの地点に1発、日本のEEZ(排他的経済水域)内に5発の弾道ミサイルを撃ち込んだがEEZ内だから国際法上は問題ないとする外交姿勢に問題がある。(岩田氏)。ペロシ米下院議長の訪台を好機と考えた中国は、かねてから計画していた台湾海峡周辺の現状変更にいよいよ乗り出した可能性がある(武居氏)。米軍は中国との本格的な核戦争を避けるため、ミサイル脅威の外から限定した作戦で戦うことを前提に計画を作っている(尾上氏)。そして本書では万一の時、日本は中国とどう戦うのかとの議論になっているが4氏の共通の認識は、日本人は自衛官はもちろん政官民誰もが本気で日本国を守る気概を対外的に示しておくことだとしている。本書の表題「君たち、中国に勝てるのか」は防衛省・自衛隊幹部が総理官邸において当時の安倍総理から質問されたものを引用しているという。その安倍総理への回答が本書なのだろう。

令和4年度人事援護研究会
<防衛懇話会>
 2月22日、東京駅丸の内北口前にある日本工業倶楽部会館において防衛懇話会(昭和40年設立)が主催する「令和4年度人事援護研究会」が行われた。この研究会は、企業に対する退職予定自衛官の再就職支援の理解促進を目的に昭和54年度から毎年実施されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で4年ぶりの開催となった。
 研究会には、防衛省・自衛隊の退職予定自衛官の再就職支援を主管する防衛省人事教育局人材育成課長、人材育成課援護企画室長をはじめ陸海空各幕僚監部の援護担当課長等と(一財)自衛隊援護協会事務局長が出席し、企業の社長及び人事担当役員・部課長等、防衛懇話会の法人会員約60社が出席した。
 研究会では、荒 人材育成課長の挨拶に続き航空幕僚監部人事教育部募集・援護課援護班長の林1空佐が航空自衛隊の再就職支援について説明し、(一財)自衛隊援護協会の小谷事務局長により最近の退職予定自衛官の雇用状況について説明が行われた。また、出席した法人会員からは、退職自衛官の活躍状況や有用性を紹介するとともに、退職予定自衛官の採用に係る様々な課題等について防衛省の出席者と意見交換がなされた。
 これからは、昨年末に策定された新たな安保三文書を踏まえ自衛隊の任務遂行を支えるため、人的基盤の強化の一環として退職予定自衛官の再就職支援が益々充実・強化されていく。このため、企業側の退職予定自衛官の再就職支援に対するより一層の理解の促進と雇用態勢の充実が望まれる。

第18次DGPE警衛隊長らが
陸幕長に対して帰国報告
 3月3日、ソマリア沖アデン湾での派遣海賊対処行動におけるジブチの活動拠点で、昨年7月から警備等の任務にあたった第18次派遣海賊対処行動支援隊(DGPE)の警衛隊長・土屋良平3陸佐(中央即応連隊=宇都宮)と先任上級曹長・我彦勇樹准陸尉(同)の2名が、吉田圭秀陸上幕僚長に対して帰国報告を行った。
 土屋3佐は「海上自衛官はもとより現地の方や駐留各国軍の方と良い関係を築き、やりがいを持って任務を遂行することができました」、我彦准尉は「団結・規律・士気においても良好な状態で任務できました」と二人とも充実感を滲ませながら報告した。吉田陸幕長は「長期間にわたるジブチ拠点での警備に敬意と感謝を表したい」と語りかけ、「さらに信頼関係を現地ジブチの人、海上自衛隊、各国軍とも築けた。その信頼が最大の成果だ」と労いの言葉をかけた。

令和4年度衛生科幹部等集合訓練
(防衛医学セミナー・防衛衛生集合訓練)
 自衛隊中央病院(病院長・福島功二防衛技官)は2月2日〜同年2月3日にかけて衛生科幹部等集合訓練を開催した。近年は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためWeb開催であったが、3年ぶりに参集での開催に至った。
 本年度は、「防衛衛生の実効性向上にむけて」をテーマに2日間にわたり、防衛省内部部局、陸・海・空自衛隊及び部外医療機関関係者も含め、約700名が本訓練に参加した。
 2月2日の防衛医学セミナーでは、防衛省市ヶ谷において当初、井野俊郎防衛副大臣が開催にあたって挨拶を行った。特別講演は、国境なき医師団の吉野美幸先生が、世界各国での貴重な紛争地医療の経験に基づいた講演を、3MEF医務官のLin大佐が、洋上の制約下での米国海兵隊の治療・後送の現状と課題についての講演を行った。教育講演は、弘前大学大学院医学研究科の袴田健一教授が、手術ロボットを駆使した遠隔操作による手術支援の可能性について講演を行った。また、統合衛生の実効性向上をテーマにシンポジウムを開催し、陸・海・空自衛隊の衛生科部隊等が相互に連携し、遺憾なく能力を発揮するために、その現状と課題について発表・討議を行った。
 2月3日の防衛衛生集合訓練では、三宿地区において基礎医学、臨床医学、歯学、衛生資材、看護、部隊衛生、及びメンタルヘルスの幅広い分野から合計159演題の発表・討議が行われた。
 自衛隊中央病院は、自衛隊衛生の中核及び最終後送病院として、全国の衛生科隊員へ、現在の情勢下において、自衛隊衛生の将来を考えてもらうきっかけを与える使命を果たすとともに、今後も教育訓練の質的向上、連携の強化を率先して実施していく。

第33期自衛隊高級課程卒業式
〜強い使命感と執念をもって〜
 3月3日、目黒地区に所在する統合幕僚学校(学校長・二川達也海将)、陸上自衛隊教育訓練研究本部(本部長・廣惠次郎陸将)、海上自衛隊幹部学校(学校長・江川宏海将)、航空自衛隊幹部学校(学校長・影浦誠樹空将)は、合同で第33期自衛隊高級課程卒業式を行った。
 式には井野防衛副大臣、鈴木統幕副長、吉田陸幕長、酒井海幕長、倉本空幕人教部長が倍列。来賓として町田人事教育局長、川崎防衛研究所長、有澤艦艇装備研究所長、留学生のホストファミリーや家族、在京武官らが参列した。
 今期の卒業生は1佐〜2佐の47名(陸17名、海12名、空14名、留学生は韓陸1名、韓海1名、豪海1名、パキスタン空1名)。約1年間で各軍種の専門知識・技能や、統合運用に関する広範な知識・技能を学んだ。2月12日から18日の国外研修では、グループに分かれてイタリア・オーストラリア・マレーシア・シンガポールを訪れ、国際的視野を広め、知見を深めた。またグループ研究では「令和4年度自衛隊統合演習」に参加。検証活動では積極的な提案を行う等して二川学校長からも高い評価を得た。
 執行者代表の二川統幕学校長は昨年末に閣議決定された「戦略3文書」やウクライナ情勢を踏まえ「柔軟かつ創造的な思考をもって既成概念に囚われることなく、問題の本質を自らが考え、切り開き、深化させ、各種事態等の対応に当たっては強い使命感と執念をもって各部隊等における任務遂行の原動力となるとともに、統合運用体制の更なる強化の牽引者となってもらいたい」と要望。かつてない重要な時期に卒業する学生たちへ期待を込めて送り出した。

国家の威容を体現

(1面からの続き)
 特別儀じようは、訪日した各国要人に対して最高の敬意を表しながら、その練度の高さを示すことが、そのまま国家の威容を体現することとなる。まさに国民の代表として失敗が許されない重責を担う任務だ。当時の安倍元首相は、第302保安警務中隊の儀じようについて「世界一の儀じようである」と至上の賛辞を送り、吉田陸幕長も「各国を訪れているが、諸官たち以上の儀じようにいまだかつて出会ったことがない」と絶賛している。
 「百人一致」という理念のバトンを昨年8月に受け継ぎ、特別儀じよう隊を率いる第302保安警務中隊隊長の清和(せいわ)達哉3陸佐は「昭和32年から65年かけて達成したもので、今まで引き継いできた努力の積み重ねです」と感慨深げに話す。
全員が満足する
ことはない
 忘れられないのが、着任後初めての儀じようで、岸信夫前防衛大臣の離任に際するものだった。強風と押しつぶされそうな重圧の中で終えた後、「今日の儀じようも最高でした。これからもがんばってください」と声をかけられたことが励みとなった。そんな清和隊長は「私が最高の号令をかけ、皆が最高の出来だ、と全員が満足することはほとんど無い」と言いきる。これは、筆者のような素人には判別がつかない世界の話だが、「百人一致」の理念を追求するため、「むしろさらなる高みを目指す、という向上心の方が強い」のだ。
 儀じようの見どころのひとつを聞くと、「最初の号令『筒』がかかった時に、全員が挙げる銃の音がひとつになる瞬間。そこは相当な集中力を要します」と教えてくれた。最も難度の高い動作のひとつに注目だ。
 今後について、「一回一回を丁寧に。儀じよう隊の隊員は入れ替わっていくが、動作だけではなく『百人一致』精神を次の世代に引き継いでいきたい」と、まっすぐな目で語ってくれた。
※「百人一致」 特別儀じよう隊は、第302保安警務中隊隊員100名で編成されることからくる(号令をかける中隊長を含めると101名)

【儀じよう3,000回までの道のり】
昭和32年 警務隊隷下の保安中隊(現第302保安警務中隊)に特別儀じよう任務が付与
      第1回特別儀じよう 岸信介総理大臣
      初の国賓 インド ネルー首相
昭和42年 故吉田茂国葬儀
昭和59年 儀じよう通算1,000回
平成元年  昭和天皇大喪の礼
平成2年  即位の礼
平成12年 九州・沖縄サミット
平成17年 儀じよう通算2,000回
平成27年 内閣総理大臣特別賞状受賞(儀じよう通算2,500回に対して)
平成28年 伊勢志摩サミット
令和元年  即位の礼
令和4年  儀じよう通算3,000回
令和4年  故安倍晋三国葬儀
【受賞歴】
特別賞状1回、第1級賞状4回、第2級賞状5回


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