(1面からの続き)
特別儀じようは、訪日した各国要人に対して最高の敬意を表しながら、その練度の高さを示すことが、そのまま国家の威容を体現することとなる。まさに国民の代表として失敗が許されない重責を担う任務だ。当時の安倍元首相は、第302保安警務中隊の儀じようについて「世界一の儀じようである」と至上の賛辞を送り、吉田陸幕長も「各国を訪れているが、諸官たち以上の儀じようにいまだかつて出会ったことがない」と絶賛している。
「百人一致」という理念のバトンを昨年8月に受け継ぎ、特別儀じよう隊を率いる第302保安警務中隊隊長の清和(せいわ)達哉3陸佐は「昭和32年から65年かけて達成したもので、今まで引き継いできた努力の積み重ねです」と感慨深げに話す。
全員が満足する
ことはない
忘れられないのが、着任後初めての儀じようで、岸信夫前防衛大臣の離任に際するものだった。強風と押しつぶされそうな重圧の中で終えた後、「今日の儀じようも最高でした。これからもがんばってください」と声をかけられたことが励みとなった。そんな清和隊長は「私が最高の号令をかけ、皆が最高の出来だ、と全員が満足することはほとんど無い」と言いきる。これは、筆者のような素人には判別がつかない世界の話だが、「百人一致」の理念を追求するため、「むしろさらなる高みを目指す、という向上心の方が強い」のだ。
儀じようの見どころのひとつを聞くと、「最初の号令『筒』がかかった時に、全員が挙げる銃の音がひとつになる瞬間。そこは相当な集中力を要します」と教えてくれた。最も難度の高い動作のひとつに注目だ。
今後について、「一回一回を丁寧に。儀じよう隊の隊員は入れ替わっていくが、動作だけではなく『百人一致』精神を次の世代に引き継いでいきたい」と、まっすぐな目で語ってくれた。
※「百人一致」 特別儀じよう隊は、第302保安警務中隊隊員100名で編成されることからくる(号令をかける中隊長を含めると101名)
【儀じよう3,000回までの道のり】
昭和32年 警務隊隷下の保安中隊(現第302保安警務中隊)に特別儀じよう任務が付与
第1回特別儀じよう 岸信介総理大臣
初の国賓 インド ネルー首相
昭和42年 故吉田茂国葬儀
昭和59年 儀じよう通算1,000回
平成元年 昭和天皇大喪の礼
平成2年 即位の礼
平成12年 九州・沖縄サミット
平成17年 儀じよう通算2,000回
平成27年 内閣総理大臣特別賞状受賞(儀じよう通算2,500回に対して)
平成28年 伊勢志摩サミット
令和元年 即位の礼
令和4年 儀じよう通算3,000回
令和4年 故安倍晋三国葬儀
【受賞歴】
特別賞状1回、第1級賞状4回、第2級賞状5回 |