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922号 (2016年1月1日発行) |
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雪月花 |
30年間愛用した電気こたつを買い換えた。だいぶ前から脚がグラグラしていたが機嫌を取りながら使っていたものの回線部分の故障ではさすがに危険になった。冬の夜、外から帰って一番先に向かうのはこのこたつ、何十年も前からの習性になっている。我が家にも一応エアコンを付けてはいるが足の先から手の先まで暖かく包み込んでくれるコタツの安堵感には及ばない。それに便利なことは老夫婦だけの食卓にもピッタリ、ちょっとした書き物や囲碁の石並べにも使える。晩酌の後そのままごろっと横になって眠るのがなんとも心地よい、こんな至福の生活を失うわけにはいかない。しかし、最近の住宅では一戸建てでもマンションでもフローリングが多くなり、こたつより「ソファにエアコン」の方が都会的イメージで好まれるらしい。こたつの生産量も平成2年には約178万台だったものが平成15年には24万台にまで落ち込んだという、今はデーターも無いようだ。誰にもこたつには小さい時の思い出と郷愁があるのではないだろうか。田舎での炭火を使う掘りごたつでは暖まるより潜り込んで遊んでいたものだ。親に何度となく叱られたが今は自分の子どもや孫が同じことを繰り返している。日本の冬の風物詩はこたつでみかんと言われたものだ。昭和50年には国民ひとりあたり327個もたべていたとか、そのみかんも急激に消費が落ち込んでいる。こたつが少なくなったのが原因とされているが、風が吹けば桶屋が儲かる話に似ている。庶民の民俗はいつまでも残しておきたい。 |
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