自衛隊ニュース

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安全・安心のため 各地で災害派遣

不発弾回収要請で緊急出動

北海道で「十三年式有孔代用弾」

 美幌駐屯地に所在する第5後方支援隊第2普通科直接支援小隊(小隊長・保科龍也2陸尉)は、10月31日、北見市川東の住宅で発見された不発弾らしきものを回収するため急遽出動した。

 31日午前8時頃、住宅の納屋を解体中の業者から「砲弾らしきもの」があるという情報が警察に寄せられ、警察から第5旅団に同不発弾の回収要請があり、命令により美幌駐屯地に所在する第5後方支援隊の同小隊の保科小隊長以下2名が回収のため現地に午前11時頃に到着した。

 現地で砲弾を確認後、調査の結果、爆発の恐れはないことが確認できたため、砲弾を回収し、美幌駐屯地に帰隊した。砲弾は、長さ約30センチ、直径約7・5センチの旧軍の高射砲の「十三年式有孔代用弾」であり、爆発の危険性はないと判断できた。

 納屋の所有者の話として「父が90年前、旭川の第7師団の演習後に空包と思い息子さんへ渡したもの」ではないかとの話であった。

 同小隊は今後も地域の安全・安心の為、昼夜を問わず、任務を遂行していく。


山林火災に係る災害派遣

栃木県でヘリから約285トン放水

 11月17日、栃木県日光市で山林火災が発生、同日午後8時30分、陸自第12特科隊長(藤本倫徳1陸佐=宇都宮)が栃木県知事から、空中消火活動に係る災害派遣要請を受理した。翌18日午前6時23分以降、陸自第12ヘリコプター隊(隊長・松浦高裕2陸佐=相馬原)のCH47×2機と第1ヘリコプター団(団長・更谷光二陸将補=木更津)のCH47×1機が消火活動を実施し、翌19日も12ヘリ隊と第1ヘリ団のCH47各1機が消火活動にあたった。同日15時15分、鎮圧が確認されたことから、12特科隊長に対して栃木県知事より撤収要請があり活動を終えた。延べ57回にわたる消火活動では約285トンを放水した。また、12特科隊から日光市役所に2名、日光市消防本部に2名、12ヘリ隊から現地指揮本部に2名の連絡員を派遣した。


鳥インフルエンザ災派

宮崎県で6万羽を処分

 11月19日、宮崎県新富町の養鶏場(約16万羽)で鳥インフルエンザ疑いが発生、翌20日午前4時に陽性が確定した。同日午前7時に陸自第43普通科連隊長(谷雅和1陸佐=都城)が、宮崎県知事から鶏の殺処分の支援に係る災害派遣要請を受理後、空自第5航空団等と共に速やかに活動を開始した。約200名態勢で活動にあたり、同日22時45分、自衛隊実施分の6万羽について処分が完了し、じ後の防疫措置は自治体で可能となったため、県知事からの撤収要請を受け活動を終了した。

ノーサイド

北原巖男

金環皆既日食


 11月8日の夜、あなたはどこで誰と赤い月を見上げましたか?

 天気にも恵まれた皆既月食。今回は、皆既食中の月が惑星の一つである天王星を隠す天王星食が同時に起きるとのことで、大変注目を集めました。

 全国の自衛隊員&家族の皆さん・本紙読者の皆さんはじめ多くの国民の皆さんが、一刻一刻変化する月に興奮しながら、スマホやカメラに素敵な天体ショーを収めたことと思います。

 月食と惑星食が同時に起きるのは大変珍しく、前回、日本で皆既食中の惑星食が観測できたのは、なんと1580年(天正8年)7月の土星食以来、442年振りとのこと。ときは戦国の世、織田信長の安土桃山時代です。信長は、どこで誰とどんな思いで見上げていたでしょう。(ちなみに本能寺の変は、それから2年後の天正10年6月2日)

 ここで気になる質問。

Q.次に日本で見られる月食中の月による惑星食はいつですか?

A.国立天文台によりますと、「322年後の2344年7月26日に起きる皆既食中の土星食までありません!」

 思わず笑い出したくなるほどに想像もつかない超々未来の話し。その頃の日本人は、2022年(令和4年)をどんな年として捉えるでしょうか。

 実は、今を生きる僕たちが見ることが出来る極めて珍しい天体ショーが、来年2023年4月20日にあります。金環皆既日食です。

 日本でも南西諸島等で部分食は見られるとのことですが、中心食は見ることが出来ません。しかし、アジアで一番新しい国・宮古島の南5000km・岩手県ほどの全国土面積・日本と時差の無い東ティモールまで少し足を延ばせば、中心食を見ることが出来るのです!

 東ティモールと言えば、かつて、PKO活動として同国に派遣された防衛省・自衛隊の諸先輩は、劣悪な道路や橋を整備したり、独立回復式典(2002年5月20日)会場の整備等を行う中で、東ティモール国民の皆さんと親しく交流し、信頼関係を築き挙げて来ました。心の壁を作ることはありませんでした。その後も、同国軍の能力構築支援や人材育成等に積極的に取り組んで来ており、相互の緊密な関係は進展を続けています。

 国づくり真っ只中にある東ティモールは、本年独立回復20年を迎え、更なる20年に向けて歩き出しています。

 そんなとき、先日(11月11日)、カンボジアのプノンペンで開催されたASEAN首脳会議が、東ティモールのASEAN加盟を認めることで基本的に合意しました。具体的な加盟時期は未定です。

 「東ティモールには近年、中国の経済進出が目立っていた。大国同士の綱引きに対して中立の立場を取るASEANの一員に加わることは、地域秩序の安定にもつながる。今回の合意を歓迎したい。・・・ASEANがこのタイミングで加盟に同意したのは、米中対立を背景に地政学情勢が緊迫するなかで、加盟国の拡大によって存在感を高め、大国の影響を受けにくい状況をつくる狙いがある。インフラ支援を進める中国の影響力突出を食い止めたい思惑も透ける」(11月15日付、日本経済新聞社説)

 東ティモールは、インドネシアがASEAN議長国を務めていた2011年3月に正式に加盟申請しました。東ティモールはインドネシアとの間で、24年間にわたり約20万人が犠牲になる激しい独立回復闘争を続けて来た歴史があります。しかし、インドネシアがASEAN議長国の時に正式加盟申請をしたことは、今や両国が未来志向の良好な関係にあることを内外に如実に示すものでもありました。

 今後、正式加盟に向けたロードマップが策定されますが、来年は、再びインドネシアがASEAN議長国となります。議長を務めるのは、ジョコ・ウィドド大統領。正式加盟実現が期待されます。

 ジョコ大統領といえば、先日(11月15日~16日)、ASEAN加盟国で唯一のG20メンバー国として、ロシアのウクライナ侵略後初のG20首脳会議をバリにて対面で開催し、初めて議長を務めました。特記すべきは、今回首脳宣言をまとめるのは困難ではないかとの大方の事前の見方を覆して、見事に「G20バリ首脳宣言」採択にこぎつけたことではないでしょうか。ジョコ大統領は、バイデン大統領と習近平国家主席の落ち着いた振る舞いが、白熱した議論を収束に向かわせた旨述べています。(11月18日付け、日本経済新聞)

 首脳宣言の中には、インドのナレンドラ・モディ首相がプーチン大統領に対面で語ったと伝えられる「今の時代は戦争の時代であってはならない。(Today's era must not be of war.)」が、そのまま生かされています。ちなみに、次回G20の議長国はインド。

 日本に居る僕が思っている以上に、今や大きな力と影響力・存在感を増しているインドネシアとインドの凄みの一端に触れたような気がしました。何故か身が引き締まる思いを禁じ得ません。

 ところで、東ティモールのASEAN加盟に関して日本は、2009年3月にグスマン首相(当時)が来日され麻生首相(当時)と首脳会談をした際に、初めて東ティモールの「円滑なASEAN加盟支持」を表明しています。爾後、加盟に向けた各種支援を継続し、今日に至っていますが、この度、ASEAN首脳会議が基本的に加盟に合意したことは、即ち、「円滑」な加盟にほかなりません。

 正式加盟までに、東ティモールがなすべきことは多々あります。正式加盟前の、日本の時宜を得た有用な支援がもたらす外交成果は述べるまでもありません。

 岸田首相は、東南アジア訪問等についての内外記者会見(11月19日首相官邸HP)にて、「グローバル・サウスとの関係強化の必要性」に言及しつつ、「来年は日ASEAN友好協力50周年の節目の年であり、12月をめどに東京で日ASEAN特別首脳会議を開催します」と語っています。是非、東ティモールも招待していただきたいと思います。

 皆さんには、このような東ティモールを自らの目で見ていただき、東ティモールの人々に触れていただければと思います。そして、日本と同じ "SUN RISE" の国と呼ばれる東ティモールで見る金環皆既日食が待っています。

 僕は、国立天文台に電話して、日本で金環皆既日食が見えるのはいつか聞いてみました。「調べていかなければ分からない。少なくても100年くらいは無い。1000年、2000年先のことは地球の自転の関係もあり確定的なことは言えない」といった真に壮大な答えでした。

 とても待てません。

 「そうだ (京都ではなく)東ティモール 行こう!」です。


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

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