自衛隊ニュース

雪月花
筑波山のガマの油はあまりにも有名だが筆者の郷里高知県にもこれに似たような「たぬきの油」のある事を最近知らされた。打合せしていた人が筆者の荒れた手を見てバッグから油脂のようなものを取り出し塗り付けてくれた。なんと翌朝にはあのただれたような手の甲のかゆみがとれ、すっきりしていたのだ。今まで何十種の薬を塗ったことかわからない。高知市で50年以上タウン誌を発行する社長も体験を載せている。「口内炎で激痛が続く。病院へ行くと、歯の治療をした時の菌が症状を引き起こしたのだろうと言うことになり、たぬきの油をべっとり塗ったら一夜で痛みは引いていた」。久しぶりに会った次女の足首を見たら子どもの派手な靴下のように赤色青色で湿疹が固まっている。早速、自慢の「たぬきの油」の登場だ。翌朝にはすっきりと、あと2、3回塗ればOKという段階になっていた。その後、高知の山間部出身の女性にこの話をしたら「私の父が家で作っています」と一瓶届けてくれた。彼女が物心ついた頃から何十年も作っているそうだ。たぬきも近くの山で自ら捕獲し捌(さば)き、脂身をとろ火で調整しながら作るそうだ。筆者の小さい頃にはどこの家にも脂身を塩漬けにして保存されていた。万能薬として風邪のときや頭痛、発熱、腹痛の時などにも飲まされたことを思い出す。もちろん怪我や毒虫対策にもなる。医療機関に遠い昔からの生活者の知恵を今でも引き継いでいるのだ。薬事法の関係で表立っての宣伝は出来ないから高知県内では口コミで拡がっているようだ。たまに山間部の道の駅や街路市にも並んでいるが滅多に手に入らない。知る人ぞ知る秘伝中の秘伝薬だ。
自衛官にとっての「人生100年時代」(15)
「コミュニケーション能力」を高めよう!
「教養」をテーマとした前回の最後の方で「民間人と自衛隊以外の話題で話がはずむか」「民間人を惹きつける話題を持っているか」を問うたが、いくら話題を持っていても「コミュニケーション能力」が高くないと話が弾まないのは明らかだろう。
最近、ビジネス界でもメールやSNSの発達、テレワークの拡大など雇用環境の変化に加え、特に若い世代の人間関係の希薄化から、社内のコミュニケーション不足が業務の阻害になるケースが発生し、「コミュニケーション能力」の重要性に関心が集まっている。
「コミュニケーション能力」は
普段の隊務で高められる
「コミュニケーション」とは、「自分の意志や感情を言語などの手段を使って相手に伝え、相手からの良い反応や良い結果を期待する諸行動」と定義され、命令や指示などの一方通行と違って、伝達する側と受け取る側が互いに関心を持ち合い、理解力に大きな差がないことが求められている。
自衛隊においては、命令や指示で部下を動かす機会が多いが、普段から部下とのコミュニケーションを良くすることも重視されている。そのためには、上司は部下とひんぱんに接触し、風通しを良くし、お互いの親和的な人間関係を築くことなどに加え、リーダーとして部下から尊敬され、信頼されているかどうかも重要になってくる。
実は、「コミュニケーション能力」を高めるために普段の隊務において心がけて実践することと、退職後に民間人とコミュニケーションを深めるコツはほぼ同じである。人とのコミュニケーションがあまり得意でない自衛官諸氏もいるだろうが、「コミュニケーション能力は退職後も重要なスキルである」ことを再認識し、普段からそのスキルアップに努めてもらいたいものである。
「聞き上手」が信頼を広げる
そのコツをもう少し具体化すると、階級社会の自衛隊は、階級の上の者が多少尊大であっても部下が忖度する場合が多い。だが、民間人との交流はそうはいかず、「聞き上手」の方が「気さくな人」と受け止められ、信頼され、早く溶け込むことが出来る。
「聞き上手」のコツは、「相槌(あいづち)」を打つなど相手(部下)の言い分に耳を傾ける積極的傾聴法を身につけることである。例えば、「それで、それからどうした?」「それは面白い」「○○はどう思う、○○ならどうする?」「○○ならできるぞ」「何かわたしにできることはないかね」を多用し、部下の能力や関心を引き出すことを心がけ、実践することだ。
退職後は、それぞれの「相槌」を、「それは面白いですね」「何か私にできることはないですか」など「ですます調」に改めるだけ十分なのである。
あえて付け加えれば、「コミュニケーション能力」は、その人の「人柄」とか「人間性」がベースになっている。これらの定義自体も難しいが、「ユーモア」とか「柔らかな性格」などは「相手に好感をもたらす武器」にもなる。一方、この逆の「人間性」が瞬時に出てしまう場合もあるのが世の常だ。
本シリーズではすでに様々なことを取り上げたが、「人は、己の『人間性』を高めるために一生努力する存在」とも言えるのではあるまいか。普段から心がけて努力すべし!
「退職自衛官の再就職を応援する会」詳細と問い合わせ、本シリーズのバックナンバーはこちら。https://www.saishushoku-ouen.com/
ノーサイド
北原巖男
自衛隊員&家族と一緒に歩んで50年
Let's go 「防衛ホーム」!
沖縄が本土復帰50年を迎えた本年、「防衛ホーム」は会社創立50年を迎えました。
防衛庁(当時)・自衛隊に対する大変厳しい批判、中には否定的な対応を示す人たちも多かった当時の1972年、「防衛ホーム」は新橋の木造2階建て雑居ビルの一室で産声を上げました。若干33歳の所谷尚武さんは、奥さまも事務員兼記者として参加。社員総数5名でのスタートだったとのことです。(所谷さんは、現在同社会長・今月15日には83歳を迎えます・本紙看板コラム「雪月花」を長きにわたり執筆中 曰く「生涯一記者・物書き」)
そんな所谷さんは、「防衛ホーム」を立ち上げた当時の思いを語ってくださいました。
「一言で申せば、 "自衛隊の出来ないことで自衛隊を応援する" 。一貫した当社の理念です。日夜粛々と任務完遂に努めている自衛隊員に誇りと自信を持っていただき、いかなる事態が生起しても国民の負託に応え得る士気旺盛な自衛隊員を支援して行きたい。併せて、そんな自衛隊員の最も身近にあって日夜支え続ける家族の皆さんとの絆や理解・協力を感謝の気持ちを以て取り上げて行きたい。家族は最も大事な存在です」
所谷さんは、続けます。「今や防衛省・自衛隊を取り巻く国民感情は当時では考えられないほどに好転しました。しかし、これまで経験したことの無い厳しく困難な安全保障環境の中で頑張っている自衛隊員とご家族の皆さんです。しっかり応援し、国民の皆さんの理解と支持を得られるよう尽力して参りたい」
お話を伺っていると、本紙の根強い人気コーナーであるスワタケルさんの「防衛ホーム英語教室」で覚えた表現が浮かんで参りました。「Nothing can be done without motivation!やる気が無ければ何もできませんよ!」(2008年7月15日付け本紙)
ところで、隊員・家族の皆さん、OB、本紙読者の皆さんには、これまでも「防衛ホーム」らしいなぁと感じたり、記憶に残っている記事があるのではないでしょうか。
僕が本紙らしいと思う記事を一つ上げるとすれば、公務災害や通勤災害で障害を負った隊員の部隊勤務や社会復帰の促進に寄与するため自衛隊中央病院に開設されている「職能補導所」(現 職業能力開発センター)修了式の模様を、毎年温かく報じていることです。記事の行間から、幾多のハンディを乗り越えて新任務にスタートする修了生に対する記者の祈りにも似た声援が伝わって参ります。思わず「頑張れ!」と心の中で叫んでしまいます。
また、今でも忘れない記事は、僕が防衛施設庁長官として談合事件の真っ只中に在ったときに、所谷さんが書かれた「雪月花」(2006年3月1日付け号)。
「…これから防衛庁がどのような対応をするか国民は固唾をのんで見守っている。…2回3回と繰り返されることの無いような決着を待っている。…この難関を乗り越えてこそ国防を任せられる組織として国民から評価されるはずだ。今、防衛庁の真価が問われている。」
現在、「防衛ホーム」の社長は、所谷さんの背中を見て育った吉田佳子さん。
所谷さんの思い・同社の理念をしっかり受け継がれると共に、幹部・曹士の別なく、また男性隊員・女性隊員の別なく、等しく隊員・家族の皆さんを全力で応援されています。彼らにとって最もアットホームで安らぎを覚える新聞、全力で応援し続ける新聞、隊員相互の信頼・士気を高揚する新聞を目指して、精力的に全国を飛び回っています。かつての所谷さんをも凌駕する情熱を以て、更なる50年に向けて尽力されています。Let's go「防衛ホーム」!
「防衛ホーム」は一種の業界紙です。しかし通常の業界紙と一番異なるのは、何といっても読者に家族も含まれる点ではないでしょうか。自衛隊員・家族の皆さんには、一層興味を持って「防衛ホーム」を購読していただきたいと思います。そんな観点から、一愛読者として一案を提示してみたいと思います。既にこれまで実施されたり、類似の企画があったかもしれませんが…。
1,ナンバーワン自衛隊員の紹介
銃剣道日本一のような自衛隊ならではのナンバーワン自衛隊員の紹介です。簡単なエピソードも添えて楽しくする。
「防衛ホーム」は、その性質上、部隊等の組織単位で取り上げることがどうしても多くなりますので、個人に光を当てた紹介は有意義。
2,これが一番、うちの部隊
前述の1とは逆に部隊等の単位でそれぞれ自慢できるところを紹介。
3,警備犬の訓練やバイクの訓練などの紹介
中学生に人気の職種に動物の飼育員があります。また、バイクのようなカッコイイ乗り物は、いつの時代でも若者の憧れなんだと思います。そういった好奇心を刺激する記事は購読に益するのではないでしょうか。
4,サバイバルの仕方
世はキャンプブーム。キャンプのプロの陸自隊員が指導するキャンプの極意。例えばシャベル(円匙)の使い方など具体的にシリーズで指導。
5,非常用救命マニュアル
前項と同様、具体的にシリーズで実施。
6,突撃、豆記者がゆく
隊員の家族で中学生までの豆記者を募集してそれぞれ取材を行い、紙面に掲載。
自衛隊の出来ないことで自衛隊を応援し続ける「防衛ホーム」社の皆さんに、心から力いっぱいのエールを送ります。これからも頑張ってください!
(お詫び)
11月1日付け本欄「尽力」の文中、沖縄の本土復帰の日の表記を誤りました。深くお詫び申し上げ、5月15日に訂正させていただきます。
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事
機略縦横(46)
空自第3輸送航空隊 准曹士先任 准空尉 柴田秀樹
129カ国中128位
この数字を見て、ピンときた方はいらっしゃるでしょうか?これは2022年米調査会社ギャラップが実施した熱意あふれる(従業員エンゲージメントの強い)社員の割合を国別ランキングにした結果です。ブービー賞に「我が国日本」がランキングされたというわけです。
この結果が意味するところはいったい何なのでしょうか。日本人の美徳として「勤勉」さが挙げられますが、実は仕事の量や質を勤勉さというベールで覆い、何とか体裁を保っているのが実態なのではないでしょうか。少子高齢化がものすごい勢いで迫ってきている我が国において、企業や組織においては生産性を上げることが急務となっています。その上ワークライフバランスも実現していかなくてはなりません。正にこれからの我々にとっては従業員エンゲージメント(我が組織的には隊員エンゲージメント)の向上が至上命題であると言っても過言ではないと思います。「隊員エンゲージメント」はいろんな解釈があるとは思いますが、簡単に言うと「組織に対する貢献意欲が高く、そこからとられた行動が個人の幸福度にどれだけ繋がっているか」と言えると思います。
私はこのエンゲージメントを高める鍵となる考え方があると思っています。それは、「随所作主、立処皆真」(随所に主となれば、立つ処皆真なり)という臨済宗にある言葉です。これもいろんな解釈があると思いますが、私自身は、日常様々な場面(局面)において自分の心の立ち位置を、決して「他人任せ」にすることなく、全てを「我がこと」として捉え、全ての事にあたることであると解釈しています。定年を前にして、なかなか迷い惑いが尽きず恥ずかしい限りですが、私自身、自衛隊人生で事ある毎にこの言葉によって自らをモチベートし、この組織と自分の人生をエンゲージメントしてきました。どうか皆さんもエンゲージメントを高める秘訣を探り、自衛隊人生を充実したものにしていただきたいと思います。